第37話 常識がない人 ※一部モーリン視点
俺とロビンはいつ王都に行くのか話し合うことにした。
「いつがいいとかあるか?」
「んー、しばらく後でも良いですか? スキルホルダーも欲しいですし」
俺はメジストを見ると彼はまだ落ち込んでいた。
「わかった。 それまでに準備するよう頼んでおくよ」
俺は何の準備がいるかよくわからなかったがロビンが用意してくれるなら問題ないと頷いた。
「ロビンよ……わしに純魔金を譲ってくれ」
まだ落ち込んでいるメジストが可哀想になった俺は鞄にある純魔金を取り出すことにした。
「そんなに欲しいなら一つずつあげますよ?」
「えっ?」
「はぁん?」
俺は鞄をひっくり返すと中からたくさんの純魔金が出てきた。それを見ていた3人は目がまん丸となり口が半開きになっていた。
3人とも唖然として動けないでいた。
「みんな驚いているよ」
「にいちゃ成功したね!」
「ああ」
ロンとニアも純魔金がたくさんあることを知っていたため、さっきからずっと笑いを堪えていたのだ。
「わしは幻術でも見ているのか? 誰か闇属性魔法でも使っているのか?」
どうやら闇属性魔法は幻術を見せることもできるらしい。ぜひとも闇属性のスキル玉が手に入ったら欲しい。
「にいちゃこれはどうする?」
「あー、せっかくだから見てもらった方がいいよな」
俺はもう一つの鞄とロンとニアが持っている鞄から他の金属を取り出した。価値がわからなければ持ってても仕方ないしな。
「なっ……なんてことじゃー!」
「これはミスリルにアダマンタイン……」
「おいおい、ヒヒイロカネもあるじゃないか」
俺達が次々と取り出す金属に3人は震え出していた。カウンターは珍しい金属で溢れかえっていたのだ。
「やっぱり珍しい金属なのかな?」
俺達は3人の反応を見て改めて珍しい金属だと知ることができた。このまま何も知らなければ安く売っていたかもしれないしな。
「こっ……これも買えるのか?」
メジストは珍しいものが好きなのか目を輝かせていた。
「こんなもの一生働いても買えないわよ!」
そんなメジストをモーリンは叩いていた。確かに3人が驚くほどだからよっぽど高い値段になるのだろう。
いや、高すぎるのも問題だった。買い取ってもらえないということは証券口座にお金として入れておけないのだ。
「安くしますよ?」
交渉の結果、今後良いスキル玉を手に入れたタイミングでお金とスキル玉も含めて交換することとなった。
俺は工房にあったスキル玉【アイテムボックス】だけ先にもらい、必要な純魔金以外の金属達を全て収納した。
「じゃあ、そろそろ帰りますね。 スキルホルダーができ次第取りに来ます」
俺達はお腹も空いてきたため宿屋に帰ることにした。
「すぐに作るから安くするのじゃぞ」
閉まる扉からメジストは張り切って工房へ純魔金を持っていく姿が見えていた。
♢
「私が言った通り常識がないでしょ? だから心配なのよ」
私はロビンにウォーレンの話をした。さっきは子供達が泣き叫ぶし、強い子だと思っていたウォーレンさえも泣いてしまいびっくりした。
「あんなに採取の才能と運があるとは思いませんでした。 それにやはり彼は複数のスキル持ちでしょうね」
ロビンはこの前も鑑定の話を持ち出したらスキルを使っているところを目撃したと言っていた。これで考えられるスキルは【幸運】【採取】【鑑定】の可能性があった。
パッとしないスキルでも複数持ちであれば組み合わせ次第で強くなるだろう。どれか1つでも攻撃スキルがあればもっと冒険者として名を上げていたのだろう。
「それで王都に何しにいくのじゃ?」
工房から出てきたメジストはロビンに王都に行く目的を聞いた。
王都はそれこそ実力主義の街で冒険者としては実力があれば生活しやすいが問題なのは貴族達がいることだ。
貴族は人間がヒエラルキーの1番上だと思っている人も多いため、獣人の子供達がいれば生活しにくいのは確かだ。現に目の前にいるロビンがその貴族の1人だ。
「ああ、彼らをそろそろ冒険者としても昇格させてもいいかなと思いましてね」
私はロビンの一言で冒険者の仕組みを思い出した。彼の目的はきっと"冒険者昇格試験"のことを言っているのだろう。
冒険者になっても攻撃スキルがない限りは冒険者としてのランクを上げることができないそれが冒険者のルールだ。
そのため、ポーターはポーターとしての活動しかできないし基本的に受けられても採取の依頼しか出来ない。
冒険者昇格試験は冒険者のランクを実力が合ったところまで上げるために行う試験なのだ。ポーターも受けることができるが、過去に一度でもポーターが受けた実績はない。
この先も彼らは茨の道になるだろうと思っていたがこんなに早く来るとは思いもしなかった。
「だからメジストさんもお願いしますね」
そう言ってロビンはお店を出て宿屋に帰って行った。
「それまでにスキル玉を用意しないといけないのか……」
メジストは口ではめんどくさそうに言っていたが、その後ろ姿はどこかウキウキとしていた。
あの人のあの姿は勇者パーティーを組んでいた時以来だった。あの姿に私は彼を好きになったのだ。
「さぁ、私も久しぶりにトカゲでも狩ってくるかね」
私もいつかあるその日のために自分の出来ることをすることにした。
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