第25話 ポーターパーティー

 その後メジストの錬金術店に入るとメジストの目はなぜか真っ赤だった。しかも、子供達にプレゼントとして大量にスキル玉をあげていた。俺も欲しかったのに子供を泣かすやつは自分で稼げと言われた。


 あの一件以来、ロンとニアはさらに俺にべったりするようになった。寝る時もお風呂に入る時も常に一緒だ。最近は排泄まで一緒に来ようとするため引き離すのが大変なぐらいだ。


「ねぇ、私も冒険者になりたい」


「にいちゃ僕も武器が欲しい」

 以前よりも活発的になった2人は自分から魔物と戦いたいと訴え自分達の意思で冒険者となった。


 生憎、ロンはスキル【収集】でニアに関して無スキルという結果となり2人はポーターとして冒険者ギルドに登録することとなったが流石に子供だからか獣人が関係するのかわからないが意地悪をする冒険者はいなかった。


 ただ、その日に限っては冒険者達は何かに怯えているような感じはしていた。


 そんなことがあって2人は冒険者になることができた。そして、俺と2人にとって今日は大事な日だった。


「じゃあ、初めての依頼を受けに行こうか」


「うん!」

 俺達はポーターだけのパーティーを組むこととなった。実際はポーターだがロンとニアの方が俺よりステータスは高いため頼りになるだろう。


 今日の依頼はマンドラゴラという錬金術に必要な魔物の討伐および回収だ。危険度も低いためポーターだけのパーティーでも依頼を受けることができた。


「あー、わしの可愛い孫達やー!」

 その依頼主はメジストの錬金術店の店主であるメジストだった。もうメジストにとってロンとニアは孫になっていた。


「じゃあ、これが依頼内容だからマンドラゴラを10体持ってきてくれよ」


「わかった! じいじ頑張ってくるよ!」


「今日はニアも活躍してくるからね」


「ああ、無理はしちゃんかんぞ」

 メジストはデレデレしながら2人を撫でていた。2人は初めての依頼だからか元気よく店から飛び出して行った。


「ああ、あの子達を頼むぞ。 もし怪我でもさせたらただじゃすまないぞ」

 2人を孫と言っているなら関係上だと俺も孫になるはずだが、なぜか俺には優しくないのだ。世の中理不尽だらけだ。


「じゃあ行ってきます」

 俺も店から出ると依頼に書いてあるマンドラゴラの生息地に向かうことにした。


「ロビンあいつらを頼むぞ」


「あいつにあんなこと言って1番の心配はウォーレンのくせに」


「うっさい! お前も早くいけ」





 マンドラゴラの生息地は森の中でも川の近くで自然豊かのところに生息しているらしい。そもそも川に行ったことない俺達はどこかウキウキとしていた。


「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ」

 ロンは何か訳の分からない歌を口ずさみながら歩いていた。


「お兄ちゃんしっかりしてよね!」

 逆にニアはどこかキビキビとしている。全く正反対の2人だが仲は相変わらず良い。


「マンドラゴラって確かうるさいやつだよな」

 事前の情報ではマンドラゴラは土の中におり、人の形をした植物で引っこ抜くと痛みなのか耳に響く声で叫ぶらしい。そのため抜いた瞬間に攻撃しないと鼓膜が破れるという地味に怖い魔物だ。


「おい、お前達川だぞ!」

 歩いていると川をみつけた。2人…….いや、俺のテンションは最高に上がっていた。


「お兄ちゃん少し落ち着いたら?」


「そうだよ。 にいちゃ危ないよ?」

 ウキウキしていたのは俺だけだったらしい。どうやら俺は2人に心配をかけたようだ。俺が住んでいた故郷にも森はあったけど草原近いため川は存在していなかったのだ。


「じゃあ、マンドラゴラを探すか」

 俺達は目を凝らしてマンドラゴラを探すことにした。


「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ」


「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ・マンドラ」


「ゴラ・ゴラ・マンドラ・マンマン」

 ロンがずっと変な歌を口ずさんでいたため、いつのまにか俺とニアも釣られて歌っていた。


 すると足元から声が聞こえていた。


「ウェーイ! マン・マン・マンドラ! 俺もお前もマンドラ! マンドラ!」

 俺達は突然地中から出てきた謎の生物に驚いた。


「にいちゃ、あれがマンドラゴラか?」

 まさかマンドラゴラが自分から出てくるとは思いもしなかった。ロンの歌の影響かスキルの影響かは分からないが何か惹きつけたのだろう。


 ちなみにマンドラゴラはスキル【音操作】を持っていた。以前鑑定を魔物にも使ってみたところ人間と同様にスキルを持っていることを知ったのだ。


「マン・マン・マンドラ・ゴラゴラ・マンドラ」

 ロンはさらに歌ってみるとマンドラゴラもノリに乗っていた。


「ウェーイ! 昨日も今日もマンドラ──」

 俺はマンドラゴラが歌っている最中に容赦なく短剣を刺した。どこかマンドラゴラの歌を聞くと無性にイライラするのだ。


 何が"ウェーイ"だ。こっちは初めて見た川にも入れずイライラしていた。ただの八つ当たりだって思われるかも知れないがそんなことは関係ない。


 その後もロンとニアが歌っているボコボコとマンドラゴラ達が出てくるのだ。


 俺はマンドラゴラをストレス発散するかのように倒すと気づけばマンドラゴラの山ができていた。


 一応マンドラゴラも魔物のため体からは鮮やかな黄緑色の魔石が出てきた。


「ねぇ、お兄ちゃん川に入ってもいい?」

 討伐が終わり帰ろうとすると突然ニアが川に入りたいと言い出したのだ。


「オラも川に入る!」

 それに乗ってロンも川に入りたいと言ってきたのだ。


「じゃあ、少し遊んでから帰るか!」

 俺は少し服とズボンを捲ると川の中へ入っていった。初めての感触と冷たさに俺は感動していた。


「ふふふ、なんかお兄ちゃんって私達より子供だよね?」


「それが良いところだな」


「いつも頑張っているからご褒美だね」


「おーい、ロンとニアもおいでー!」

 俺は何かを話している2人を呼んだ。ロンとニアは耳と尻尾を立たせて俺のところまで走ってきた。


 一言あるとすれば人生初の川は最高でした。

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