第24話 家族
昨日は散々子供達が泣いていたため、今日は家族で森の近くまで来ていた。子供達はピクニック気分だが俺の内心は勝手にどこかに行かないか、魔物が襲ってこないかヒヤヒヤしていた。
2人は俺の外套の中に隠れて顔だけ出して一緒に歩いている。
「にいちゃは今日なにするの?」
「んー、薬草の採取かな」
「私達は何を手伝えばいい?」
子供達はキラキラした顔でこっちを見ていた。
ステータスだけで言えば俺と同程度だが装備が強くないのが問題だ。念のためにポケットにはメジストからもらった風属性のスキル玉を忍ばせているがいざとなった時の防衛手段ぐらいだ。
「じゃあ、ここらへんで薬草を探そうか」
俺は事前に薬草の特徴を伝えると2人は頷いて薬草を探しに行った。
「あっ、にいちゃあったよ!」
俺が見える範囲内で2人には作業をしてもらっているが、ニアは全然見つけられないのに比べ、ロンはすぐに薬草を見つけられることがわかった。
これはロンのスキル【収集】が関与しているのだろう。
俺は子供達が見つけた薬草を匠の短剣で刈り取っては呼ばれたところに行ってを繰り返していた。
しかし、ロンのスキルが関与しているのは薬草の採取だけではなく魔物も同様だった。
森の外にいるはずなのにロンに向かって、森から魔物が出てくることが多かった。
「魔石が欲しいのか?」
宿屋から渡されたサンドイッチを食べながら休憩していると、ロンが魔物を倒したときに出てきた魔石を眺めていた。
「にいちゃもらっていいの?」
「ああ、何かに使う時が来るかもしれないしな。 ニアもいるか?」
俺はニアにも聞くとニアは首を横に振っていた。この辺も収集が関係しているのだろうか。
俺達はある程度仕事を終えると街に戻ることにした。来た時は喜んでいた2人だったがロンは魔石をもらって喜んでいたが、反対にどことなくニアは元気がなかった。
俺は気になりながらも魔石の買い取りをしてもらうためにメジストの錬金術店に向かった。
「お兄ちゃん……」
お店の扉を開けようと手を触れたときにニアは俺の服を掴んでいた。
ニアに話しかけたがどこか落ち着きがなく、チラチラとロンを見ていたためロンだけ先に店に入ってもらい話を聞くことにした。
「ニアどうしたんだ?」
「お兄ちゃんは私を捨てない?」
俺はニアの言っていることがわからなかった。どこでそんなことを思うようになったのか全く気づかなかったのだ。
「捨てるはずないだろ?」
「だってニアはロンと比べて薬草も探せないし、魔物も呼べない役立たずだよ」
きっとロンと比べて自分の存在価値がないと思ったのだろう。
「ニアはスキルも使えないから捨てられたんだ。 きっとニアなん──」
俺はそれ以上は聞けないし言わせてはいけないと思い手で口を閉じさせた。涙を堪えてるニアはどこか震えていた。
「別に俺は使えるとかどうかでニアといるわけじゃないぞ? 俺達はもう家族だ! だから使えないって言うなよ」
俺は優しくニアに抱きつくとニアは俺の胸元で涙を流していた。嗚咽が出るほど何回も何回も泣いていた。
「そんなに頑張らなくても大丈夫だ。 俺はどんな時でもニアの味方だ」
今までロンより年下で妹のはずなのにしっかりしていたのはずっと捨てられないように強がっていただけかもしれない。
「にいちゃ? ニア?」
俺らが入ってくるのを遅いと気づいたロンは扉を開けてこちらを見ていた。
「どうしたの? 誰かに痛いことされた? にいちゃもニアも泣かすやつはロンが守る!」
俺もいつのまにか泣いていたようだ。それを見たロンが心配していた。
舌足らずで猫舌なのにシチューをかき込んでいたロンはしっかりとした兄だった。
「ロンもずっと一緒だぞ」
俺はロンを近くに寄せて抱きしめた。2人の温かさがどこか冷たくなっていた俺の心が溶けていくような気がした。
どことなく自分と被るこの子達の存在がいつのまにか俺の中でも味方だと感じていたのだろう。ニアに言っていた言葉も心の奥底では自分に対して言っていたのかもしれない。
小さい時から家族がおらず独りぼっちの俺は家族を求めていたのかもしれない。
俺は心の底から守ってあげたい……いや、守らなければいけないと思う家族ができたのだった。
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