第17話 琥珀色の魔石

 あれからおっさんとの距離感は近くなり、単純に同じ冒険者で宿屋が同じという接点で一緒にいることが増えた。


「今日も薬草採取か?」


「いや今日はメジストの錬金術店に行ってくる」

 おっさんは俺の存在が面白いのか朝に今日の予定を聞いてくるようになった。


 おっさんの拠点地が都市ガイアスと王都らしい。王都は俺も行ったことはないため一度は行ってみたいと思っている。


 毎回予定を聞くのも理由があり、あの後採取してきた薬草を冒険者ギルドで買い取ってもらおうとしたらリーチェに初めて渡した時の半分以下の値段になっていた。


 その時は一緒に帰ってきたおっさんが俺の後ろで気づき騙されずに済んだのだ。


 依頼を受けていたということもあり、依頼分の薬草のみ冒険者ギルドで買い取ってもらい、それからは街の中にあるおっさんに教えてもらった薬屋で買い取ってもらっている。


 きっとおっさんに出会ってなければ今頃お金に困っていただろう。それだけ自分自身の冒険者としての実力を上げないと今後もやってはいけないとわかった。


「おはよう……あれ? お店間違えたか?」

 俺はメジストの錬金術店の扉を開けるとそこには以前のお店の汚さはなく、綺麗に本が整えられていた。


「いやいや、合ってるぞ!」

 奥のカウンターから出てきたのは気持ち悪いほど笑顔になっているメジストだった。


「やっと来てくれたか」


「俺を待っていたんですか?」


「ああ、その通りだよ。 こっちに来るのじゃ」

 俺は言われた通り近づくとメジストはどこからかお金を取り出した。きっとスキル玉を使ったのだろう。


「うぇ、白金貨!?」


「そうじゃ、白金貨3枚を渡そうと思ってな」

 俺は急いで後ろに下がりメジストを警戒した。きっと何かをするつもりなんだと俺は咄嗟に感じ取った。


「そんなに警戒しなくてもいいではないか……」


「ああ、すみません。 それでこの白金貨はなんですか?」


「どうにかその場で納得してもらうためにアイテムを渡しが実際はもっと高かったんじゃ」

 俺は何を言っているのかわからなかったため、話を深く聞いていくとどうやら俺が渡した琥珀色の魔石の正式な売却値段が白金貨3枚だったらしい。


 実際はアイテムと多少のお金を担保に魔石を買い取ったという扱いだった。


「俺って騙されてたんですか!?」


「いや、そのつもりはな……モーリンもやめんかい!」

 メジストは空に向かい何かを話していたが俺の言葉に連動しているのかまた少しずつ空が暗くなり雷の音が聞こえてきた。


「迷惑料を少し追加しておくから許してくれないか?」

 俺はそんなつもりはなかったが、外の雷鳴が大きくなるたびにメジストは何かに怯えてお金をカウンターの上に置いていた。


 結果、俺は白金が3枚と大金貨5枚を貰うこととなった。


「そんなにあの魔石が高く売れたんですか?」

 俺の問いにメジストは大きく頷いていた。


「ああ、あれは魔石の中でも特に魔力が含まれているやつでスキル玉になる魔石だったんじゃ」

 どうやら普通の魔石は魔道具の燃料止まりだが、良質な魔石であれば魔法の補助具やスキル玉を作ることができる。


「ウォーが持ってきた魔法石は回数制限がない【防御魔法】のスキル玉に生まれ変わったのじゃ」

 スキル玉はランダムで魔石に付与されるため、当たり外れは完全に作る人の運にかかっているらしい。


「それでわしの頼みを聞いてくれぬか?」

 俺は少し嫌な予感がしたが、外で雷が鳴っていたため最後まで話を聞くことにした。


「また魔石を売ってはくれないか?」


「えっ!?」


「きっとあの魔石はウォーと関係があるのじゃろ?」

 確かに俺が倒したゴブリンジェネラルから得た魔石だが、またあいつと戦うとなれば俺にはそんな勇気はなかった。


 あの後から俺は命優先に活動すると決めているのだ。


「あれと同じものを求めているわけじゃないぞ! またウォーが魔石を拾う機会があれば買い取るというだけだ」

 俺が冒険者ギルドで魔石を売れないことに気づいてたのか、メジストの錬金術店で直接魔石を買い取ってもらえることになった。


 琥珀色の魔石を売って思ったことは、強くなりたいのであれば魔物を倒して魔石を売る必要があるということだ。そうすれば高く売ってお金をたくさん手に入れることができる。


「わかりました。 また魔石を探して持ってきます」

 むしろポーターとして舐められないようにするにはちょうどよかった。より装備を整えないとまたギルドで何をされるかわからないからな。


 俺はすぐに森に向かうためにメジストの錬金術店をあとにした。





「ロビンこれでいいか?」


「助かりました」

 中年の男は店の中で影を薄めて存在感を消していた。


「それにしてもお前もウォーレンと関わりがあったのか」


「俺は完全に偶然ですよ。 鈍臭いやつがいると思ってたら突然メジストの話が出たからね」


「ははは、モーリンといいロビンも関わるとは完全に何かの巡り合わせじゃな」


「そうですね。 あの時の記憶が少しずつ蘇ってきますよ」

 2人は話しながらどこか懐かしそうに笑っていた。


「モーリンもウォーレンを気にしているからな……変なことをするとあいつの得意魔法が落ちてくるのじゃ」

 

「それは災難ですね。 勇者パーティーの賢者の魔法なんて普通の人であれば即死ですもんね」


「ははは、受け止められるのは同じ勇者パーティーのメンバーぐらいじゃな」


「じゃあ、俺はウォーレンを観察してきますよ」


「ロビンも相当楽しいおもちゃを見つけたらしいな」


「ええ、彼は俺達の意思を受け継いでくれるポーター初の勇者になれることを信じていますよ」

 そう言って男は姿を消して店を出て行った。

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