〜真白ちゃんエンディング〜


 中学生の頃。

 よく、真白ちゃんと一緒にお勉強したっけ。


 今でもよく思いだすのだ。


 夏の太陽がじりじりと家の庭を照っている。


 俺と真白ちゃんは縁側で涼みながら、学校の課題を解いていた。


 あの時、真白ちゃんはショートカットだった。


 もちろん、俺なんかよりずっと頭がよくて、ずっとずっと上の高校に通おうとしていた。


「わたしは普通のトコでいいんだけど親がうるさくて」


 と、彼女は口癖のように繰り返していた。


「橋本くんと同じ学校がよかった。小学生の頃から、うふふっ、幼稚園の頃からずっと同じクラスでさ? ねっ、先生たちもわざとだよね、ぜったい!」


 そうして、にっこり笑うのだ。

 その笑顔を見るたびにとても寂しくなった。


「ずっと、ずっと大きくなっても、橋本くんと同じところにいたかった、わたし……」


 いつからかな、俺も彼女のそばにいたくなったのだ。


 だから、必死に勉強した。


 真白ちゃんと同じ高校に進学したかった。


 そのことは真白ちゃんには内緒だった。


 どうせ、あとでバレるけど、バレた時に話そうって心に決めていた。


 結局、受験当日。


 高校で試験を受ける時になってバレちまった。


 志望校の玄関先で、真白ちゃんはすごく驚いた顔をしていたっけ?


 だから、彼女の細い手を取って、きっぱり宣言したのだ。


「俺、高校でも、真白ちゃんと同じクラスになると思うんだ!」


 あの時。


 真白ちゃんの見せた、涙目の「うんっ」は忘れられない。


 俺はつり革から手を離して、真白ちゃんのお隣に並んだ。


 栗田ちゃんはプリッツを10本くらいまとめて、奥歯でがじがじしている。


「やっぱり、俺は君のとなりが落ちつくや」


 真白ちゃんは、あの時のように明るく頷いて、そっと俺の手を握ってくれた。


 彼女の膝から麦わら帽子の匂いがした。


 窓の外の海は、君の瞳と同じくらい光っていた。


「ね、橋本くん」

「ん?」


 彼女のキレイな顔が近づいてきて、びっくりした。


 え、ここで……⁉︎


 チュッ。


 俺と彼女の唇が重なった。


 栗田ちゃんはニャー⁉︎ 子猫のように毛を逆立てている。


 そっと、真白ちゃんは唇を離して、瞳を潤ませて、告白してくれた。


「ずっと、ずっとずっとずっ〜〜〜と、好きでした」


 〜真白ちゃんエンディング〜 FIN

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