第17話 噂〜転校先は不良(ヤンキー)校!?

「おい、知ってるか?」

「何だよ?」

「南波 了の女、超可愛いらしいぜ?」

「へえー」


「噂によると以前は先公と付き合っていたらしいじゃん?」


「あー、そうそう。しかも美人だったとか?」


「何か妊娠させた話もあったらしいじゃん?」


「そうそう。つーか、アイツ、女に不自由してなくね?」


「だよなー?ちなみに、その現在(いま)彼女(カノ)。元男子校だった高校に通っているらしいぜ?」


「うっそ!超会ってみてー」


「つーかさ、男子校に行く位なんだしさ、やる事やってんじゃね?」


「あー、そうかも」


「偵察に行ってみるか?」

「良いな」




そして――――



「なあ、あの子じゃね?」


「いや、話によると、3人の男といつもつるんでるって話だぜ?」


「3人!?」


「単独じゃねーんだ」


「実はSFじゃねーの?」


「そうか?南波 了の彼女だぜ?そんな事したらヤバくね?南波 了が黙っておかねーだろ?あっ!来た来た。あの子」


「へえー。マジイケてんじゃん!」



私達の知らない中、そう言われる中





「なあ、お前ら、良い加減仲直りしたらどうだ?」



蒼介が言った。



「そうだよ〜」と、優人君。


「何の事?私達は別に…」


「そうやで?別に喧嘩してるわけやない!コイツが口訊かへんのや!」


「はあぁぁぁっ!?自分でしょう!?」



「はいはい。一生やってろー」


「夫婦喧嘩をね〜」



二人はやれやれと両手をあげる仕草をする。


私達はワアーワアー騒ぐ。



そんな中、優人君は、彼等に気付き



「見かけないね〜」

「えっ?」

「あそこにいる彼等」



「………………」



「もしかして…希美ちゃん狙いかな〜?」


「えっ?私!?」


「…例えば…南波さん」


「えっ!?いやいや、それは、ねーだろ?」


「…一応、気を付けておいた方が良いかもよ?」



「………………」




それから日替わりで彼等は来ていた。


不審に感じた優人君。



私は、少し話を聞いていたものの、注意すべき行動にすっかりと忘れてしまっていた。




「あれ…?今日、希美ちゃんは?」


優人は、二人に尋ねた。



「アイツ、用事あるからって先に帰ったけど?」


「一人?」


「そうやろ?俺達と、ほとんどつるんでんねん。前の学校の子とでも会うんちゃうん?」




「………………」




「…優人?…どないしたん?」


「いや…出来れば単独行動は控えた方が良かったんだけど…」


「えっ…?」


「あっ…!そうだったんだ!アイツ…」


「何やねん!二人して!深刻な顔して…」




「最近…妙に見慣れない輩が日替わりでいたから…」


「えっ…!?日替わりって…俺、聞いてねーぞ!」


「言うわけないよ。確定じゃないから…だけど…日替わりで俺達の事を見ている奴等がいたのは事実だよ!」




「………………」




「マジかよ…それって…俺達の事を含め、希美の事を見ていたって確率あるんだろ?」


「あると思う」




「………………」






そして――――




「彼女」

「はい?」



私の肩を馴れ馴れしく抱き寄せる。




「何ですか?」

「ねえ、南波 了って上手?」

「は?何の事ですか?」


「それから、いつもつるんでいる奴等の誰かの本彼女(カノ)?ただの友達だったりするのかな?」


「あの!本カノとか南波さんの事とか聞かれても良く分からないんですけど!ちなみに彼等はただのクラスメイトで友達ですが?」



「本当に?」


「はい」


「だけど男子校に通っているんだし、モテモテでしょう?」


「そうそう。君、可愛い系だし」




「……………」



「沢山男いそうだし、もちろん上手なんだろうね」

「あの…勘違いしてませんか?」

「どうして?」


「あなた達の中で、私の存在って…明らかに変な方向ですよね」


「変な方向って?」

「どういう事かな?」

「俺達良く分かんないんだけど?」



「………………」



私は抱き寄せられた手をつねる。



「いって!何すんだよ!」


「私の事、そういう目で見るの辞めてくんないかな?怒るよ?つーかさ…マジムカつく!」




ドスッ

お腹を殴る。



「…っ…」


「この女!」

「何しやがるんだ!?」


「私は、そういう女じゃないし!いやらしい目で見んなっ!」




走り去り逃げる。



「一体、何なの!?人生狂いっぱなしだよ…」




《勇真君とは平行線だし》


《最近、喧嘩ばっかだ…》


《あの女の人といるのを見掛けてから私…嫉妬してるのかな?》


《本当の事、何も聞かないままだから…うやむやなまま…》




グイッ


色々と考えていると気付けば捕まってしまった。




「きゃあっ!」



手首を引き上げられる。




「…っ…」


「さっきはどうも」




ドスッ

反対にお腹を殴られた。




「…っ…」


「ごめんねー。手加減したつもりなんだけどさーー」

「君、どうやら違う女の子みたいだからさーー」



「………………」



「さあ、付き合ってもらおうかな?」



「……………」




その時だ。



私の携帯に着信が入った。





「おいっ!女!出ろ!上手く対応しろ!」




「……………」



携帯の画面には



『勇真君』の名前が――――




ドキッ



《…勇真……君…》


《最近は喧嘩が絶えないのに……どうして…?》




「ほらっ!何してんだ!?早く出ろ!」



「………………」



「出たくない理由でもあるんじゃね?」

「彼氏とか?」

「でも、彼氏って南波だろ?」

「えっ?何言って……違うしっ!」

「じゃあ出ても良いんじゃねーの?」



「SFの奴とか?」

「喧嘩でもしたの?」

「別にしてないし!」




そして結局、電話に出る事もなく――――



「あーあ、切れちゃったよ」

「良かったの?」



「………………」




そして私は―――――




「あーーーーっ!」




大きい声で叫ぶと空を指差す。


それで騙される人は騙される。



もちろん目をやるのがほとんどだ。



私はそのスキを狙い逃げ去った。




「なっ!くそっ!」

「待ちやがれ!」



私は足を止める事なく、そのままひたすら走った。


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