第12話 脱獄犯〜転校先は不良(ヤンキー)校!?

次の日の朝。


やっぱり蒼介の姿はなかった。



その日の夕方、相変わらず二人に送迎してもらう。


だけど、真っ直ぐ帰る事なく、街に蒼介と会う事を視野に入れながら遊びに寄るとかではなく、探索。


警察官も見廻り中だろう。


多分、私服姿の警察官もいるはず。





その途中。



「蒼介?」

「えっ?」



道路の脇道に人目につかないよう身を隠すように壁に寄り掛かり腰を降ろしている蒼介の姿。




「蒼ちゃん!?」



「………………」




振り向く蒼介。




「……………」



殴られたり蹴られたりと暴力を振るわれたと思われる傷痕が痛々しく物語っている。


見ているこっちが辛く泣きそうになり目をそらしたくなる。



「…何だよ…みんなして……つーか…お前らで良かったかも…」


「大丈夫?」



私は歩み寄り、抱きしめた。



「うわ…」

「蒼介ーー」

「…何だよ…気持ち悪いな…」



普段ならもっと力強く言える蒼介も、かなりの負傷のようだ。



「心配したんだからねっ!!」



「…仕方ねーだろ…つーか…逃げ出して来たから…追っ手が来る前に早く去りてーけど…体がいう事、効かねーんだよ…腹も減ったし…警察(さつ)はウロついてるし……」



「ここにいても仕方ないよ。とにかく移動しよう。アイツらの縄張りとかは避けたいけど……」



優人君が周囲を気にしながら言う。




「アイツらなら夜、警察(さつ)の目とか盗んで動いている。ゲーセンとかは出入りしている感じみてーだけど…」


「そうか…」



「ただ…仲間と思われるのが半端ねーみたいだ…俺も良く分かんねーけど……案外、南波さん率いる手下だけでなく、他の親玉の手下も動いているかもしんねー…だから、正直、お前ら以外みんなが敵に見える…」




「それは、ないとは言えないよ。南波さん、敵多いし、下手すれば…元仲間だった相手からも…なんてざらにあるだろうし…」



吉良君が当たり前のような言い草で言った。



「…とにかく…みんなが捕まる前に…特に希美は巻き込みたくねーからな…」


「そうだね…今の所は、まだ大丈夫だろうから…希美ちゃんは早目に、ここから退散した方が良さそうだね」


「せやけど、一人は危険なんちゃう?」


「二手に別れようか?勇真は、希美ちゃん送って。俺は様子見ながら移動するから」


「ああ」


「お互い気を付けて行動」




「そうだなー…早く送ってやった方がいいかもなー」



「えっ…?」


「まあ…その前に…既に遅いけど……」





振り返る視線の先には



「蒼介ちゃん、見〜っつけ!」



「………………」



「……嘘…やろ…?」


「…マジ…かよ…」



3人の顔が一気に変わった。



《…も、もしかして……コイツ…?》





「久しぶりだねーー?優人ちゃん、勇真ちゃん……それから…初めまして…だね?」



「……………」



「…女の子がいるなんて…珍しい…誰かの彼女?…もしくは…3人のお相手してるのかな?」




私は首を左右に振る。




「捕まえろ!」




取り巻きに指示し、私は捕まりそうになる。




「希美、逃げろ!」

「逃げるんや!」

「希美ちゃんっ!」




3人が叫ぶ。


私は捕まる寸前、取り巻きに廻し蹴りをし二人の取り巻きを一気に一撃で倒した。



「…な…に…!?」


驚いている様子の、南波 了。



「誰が捕まるかっ!」



「………………」



「フッ…おもしれーっ!あんな女、初めてみるぜ!気に入った!」




「…ヤベ…」


「逆に…気に入られやがった…」




「………………」



「蒼介ちゃん、優人ちゃん、勇真ちゃん。今日の所は見逃してやるよ。俺も下手に行動は出来ねーしな。じゃあ、またな!」



「………………」



「あっ!そうそう…さっきの彼女を傷付けられたくなかったら俺に従うんだな?でないと…彼女を傷つけちゃうよ」



「……………」



「蒼介、お前に連絡するから、その時、必ず優人と勇真を連れて来い。良いな!後、忠告しておくが、変な行動起こすのは辞めておけ!」



彼は去った。



「変な行動?」

「…警察に言うな…とか?もしくは…違う理由…?」

「…どっちにも取れる言い方やったな…」



「っ…」

「何だ…あの女…」

「あれ…?南波さん…?」



「帰ったで!」



「………………」



「…そ、そうか…おいっ!行くぞ!」



彼等は去り始める。





〜 勇真 Side 〜



「ねえ!」と、優ちゃんが、二人を呼び止めた。


「何だよ!」


「君達…南波さんの情報知ってるかな~?」


「情報?」


「警察だけじゃなく…何か他に理由あったりするのかな?脱獄した理由。出来れば共用しておきたくて〜」


「…それは…」


「…さあ…知らねーーな」



「………………」



「俺達、仲間に入るとか入らないとかより、南波さんの行動が気になるんだ。南波さんが出て来てから、もしかして…俺達の知らない不良とか…更にヤバイ人間…親玉動いてない?」



「知りたきゃ南波さんに聞いた方が良いと思うけど?」


「知らない訳じゃねーけど…あの南波さんだからじっとしてる輩はいねーだろ?」


「俺達も詳しくは知らねーし…悪いけど答えられねーな。悪いな」



彼等は去った。



「蒼ちゃん…勇ちゃん…様子見る為には、仲間入りした方が良いかもしれないね」


「えっ…!?」


「それ…マジで言って…」


「希美ちゃんを守る為でもあるんだよ?」


「せやけど…」


「確かに南波さんは脱獄犯だけど…何か理由があるかもしれない…探ってみるべきだと思わない?」






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