第18話 初めての仕事

歓迎会も終わり事務所のビルの最上階の5階の部屋をおれは充てられた。ビルの割に汚く無く2DK位の広さで特に文句は無い。同じ5階に村上4階の1室に中水流が生活していて最初村上が「安行は2階でどう?」すると中水流が「いやいやアソコは倉庫だから駄目でしょ?」「んじゃ4階の角の部屋は?」「それなら5階も同じじゃん」と言い合いになりオレが各階3部屋有るからおれは何処でも良いから!と言うと結局5階の隅の部屋になった。朝8時半すぎに3階の事務所に集まり今日の仕事の説明と手順を打ち合わせするみたいだ。因みに俺達幽霊だが欲求も感覚も感じようとすれば有るし活動すると消費もするので普通に寝る。初めての仕事か~何するんだろう?闘うとかだったら面倒くせぇなーと思いながら立ってると中水流が「今日はラッキーな仕事だよ!そうだね~一応付いてくけど安行1人で充分だな」とはしゃいでる……おれが内容は?と聞くと「車の前に飛び出して轢かれて消えるだけ!しかも割当てでかい!!」とテンション高い。何それ?と聞くと今日の夕方に今居る事務所の前に有る駅のロータリーで通り魔事件が起きるって話しで犯人はこの場所に縁もゆかりも無いが只呼ばれる様にこの場所に来て事件を起こすらしい。呼ばれる原因は本当に一時的に偶々発生して自然に消滅する物でその犯人と相性が良いらしく原因を潰すより犯人の足止めをする方が手っ取り早いらしい。夕方の17時前おれは交差点に立って居た、夕方なので人通りは結構有る。ターゲットは北陸ナンバーの白いトヨタの何処でも走ってる商業用バン。迎えの車等結構混み合う時間なのだが車の流れが途切れた……見ると路上駐車の車も沢山居て自転車も走ってるのに有り得ないスピードで走って来るバンが見えたナンバーを確認してジャンプして意識して飛び出すおれ。ぶつかる瞬間運転手と目が合いそして凄い音がしておれは飛ばされながら消えた。バンはフロントガラスが割れて前の部分もひしゃげてる。誰かが事故だ!!と叫び運転手が動揺しながら降りてキョロキョロしてるが車の残骸が散らかってるだけで轢かれた人は見つからない。その内警察が来てかなり大掛かりに色んな場所を捜してたが何も見つからない。ソレを見てると「お疲れさん!飯食いに行こう!!」と2人に言われ歩き出すと高校生位の野次馬の1人が一部始終を視えてしまったみたいで興奮しながら『反復横跳びのオジサンだよ!』って言ってるのを横目にニヤニヤしながら歩きだした。お腹の球体を取り出し見ると少しだけ青い水が入っていてちょっと嬉しかった。因みにその夜何故部屋割りで彼等が揉めたのかが判った。どうやらちょくちょくデリバリーのサービスを呼んでるらしく古いビルでフロアー中行為の声がダダ漏れなのだ。迷惑なのはコッチなのに、妖怪と変わらない連中の癖に変な所は恥ずかしがるんだと感心した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る