第2話 本当に死んじゃったよ安行さん

頭に生えたアスパラをさすりながら病院の中を歩いてると大学病院のようで、かなり大きな病院らしく賑やかと言ったら可笑しいが多くの病院スタッフや患者等で雰囲気は違うが運転免許センターのような人の多さだった。歩いてるうちに取りあえず気が付いた事が有る、ドアや壁はすり抜けられるし意識すると上の階や下の階にもすり抜けて行き来出来る事、逆に歩くのは違和感無いがドアノブを握ってドアを開けるのが物凄く集中しないと開けられないし、試しに歩いてる病院の看護師らしき人に何人か話し掛けたが完全スルーでおれは認識されてないようだった。売店で売っていたパンとジュースを(どうせ死んでるから良いよねと)失敬したが味がしなくて身体も軽く気分良いが視覚と聴覚以外は機能していなさそうな事。あと時折同じ様にアスパラが生えてる人が居ておれとおれと同じ感じで人間の姿をしている者もいれば、俗に言う化け物みたいな者もチラホラ居て頭から生えてるアスパラも太かったり細かったりで色も緑でなく赤や青や黒いのもいた。そしてアスパラが生えてない人もたまに目が合う人も居るが絶対に目が合ったのに一瞬でスーッと逸らされスルーされたと思えば3歳位の子供にずーっと見られて指を指され困った。多分俗に言う視える人何だろうと思った。ソコで(あっ家族の所に戻るか……)と思うと何故か泣きながら自宅に戻る嫁さんが運転する車の後部座席に座っていた。家に戻ると自分の親や近い所に住む従兄弟が来ていて話しを聞いてると、どうやらおれは仕事中に倒れ1人で作業していたので半日近く発見されず死因は脳卒中だったらしい。葬儀の日取りや何かの手続きの話しをみんながセワシなく話してる中ぼーっとおれは改めて自分は死んだんだと頭のアスパラを触りながら考えた。死んだかおれ……アーッ!オレのスマホ見られたらマジーな!PCは…ダメだけどもう良いや。見ると嫁さんがオレのスマホのLINEやらアドレス帳開けておれの知り合いに連絡してる……まあいいや直接怒られないし。さて……死んでコレからどうなるの?でも体調絶好調だし気分も良い!残った嫁さんと子供には迷惑かけちゃうな……あっ!でも家のローンチャラだし保険も降りるっしょ?うん……財産と言える物は遺せないが当面は生活には困らんだろうし最近このまま変に長生きすると、よっぽどお金持ちでないと楽しくは暮らせないだろうしなー生きてても幸せな事も有ったけど嫌な事の方が多かったもんなー誰かが言ってたけど人生の9割が苦痛って本当何だね、おれはある意味苦しみもせず卒業って事で勝ち組か?でもな味覚もそうだけど欲求みたいのが無いのが不満なんだよな~と皆がバタバタしてる最中出前で届いた寿司とビールを苦労してコップに入れ無味無臭のソレらをモソモソと口に入れ溜め息をはいた。

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