王都騒乱2

 イルークの町の馬を借りて王都トーラディムへ急ぐ。キサの表情は焦りの色が濃い。


「第3王子のレオンはまだ10歳なんだ」


「キサは行方不明、第3王子は不運にも魔物に遭遇したということにするつもりだったのかしら?」


「そんな感じの筋書きなんだろうな。俺用のシナリオはうまくいかなかったが」


 馬を走らせながらなので、会話は長く続かない。日が暮れてきた。ゆっくりと闇が降りてくる。2日目が終わろうとしていた。暗くなっても杖に明かりを灯して馬を走らせる。


「ミラ、体調大丈夫なのか?だいぶ力を失っててる」


「すこしずつ戻ってきてるわ。ありがとう大丈夫よ」

 

 さすがに疲れていたが、ここで弱音は吐いていられない。まだやることがある。グッと手綱を握りしめる。

 メアにいろいろ聞きたいと思った。学院に来て初めてできた友人を信じたかった。なにがあったのかをその口から聞きたい。


 王都に入る門の所でアイリーンが待っていた。馬を止める。


「アイリーン!!」


 私の声に気づき、さらにキサの顔を見て安堵する。


「キサ様、ご無事でなによりですわ!ミラもお怪我は無いのですわね?」


「ええ。なんとか大丈夫だったわ」


「何があった?レオンがどこに行ったのか知らないか?」


「レオン様?どうかされましたの?それより!デュルク家がおかしな動きをしてますのよ!それをお伝えしたかったのですわ」


 メアの家だ。私とキサが顔を見合わせた。


「デュルク家の当主が今夜の集まりでおかしなことを言っていましたわ」 


 一旦、私とキサは馬を降りた。


「次期王はタイロン様と言いふらしてますの」


「それで?」


 キサの冷ややかな声音が暗闇に響く。


「キサ様もレオン様も次期王に相応しくない。陛陛下を今まで支えてきたタイロン様が良いと。二人の王子は王位継承権を剥奪すると、何の権限があって??と思いましたけれど、自信満々におっしゃいますのよ。周囲の貴族たちはなんとなく空気を読んで、その場を笑って流しましたけど……わたくし、キサ様に何かあったのではないかと心配してましたの。ミラが!と叫んで、顔色変え、飛び出して行かれましたものね…そして今夜のデュルク家の言動は無関係のことではないのでは?と思ったのですわ」


 思わず私はキサの方を見た。苦々しくアイリーンを見て言わないで欲しそうなキサだったが、アイリーンはやや恨みがましい感じで続ける。


「陛下の崩御は本当に限られた者しか知りませんわ。わたくしも公爵家の令嬢として挨拶に父母と参りましたところを王宮で出会いましたの。ミラは曲がりなりとも闘神官の見習いであるから大丈夫ではないかしらとキサ様を止めたのですけれども…そしてついていくと言いましたのに……」


「そこまでにしといてくれ。俺一人で来るようにというタイロンからの条件だったんだ。とりあえずそっちはどうにかした」 


「……わかりましたわ。タイロン様がいずれこのようなことをするのではないかと思ってましたわ。でもミラを心配するより自分の身を案じてほしいですわ。狙いはキサ様でしょう?いつもはもう少し冷静ですのに!」


 暗くてよく顔は見えないが、顔が赤い気がした。アイリーンはキサが心配で健気に待っていたのだろう。


「とにかく、細かいことは後だ。デュルク家へ行ってみる」


 そうキサが提案したとき、もう一頭の馬が暗闇から駆けてきた。聞き覚えのある声が馬上から慌てたように叫ぶ。


「ミラか!?」


「クラリス!?」


 黒髪が汗で濡れている。目には焦りの色が濃い。


「はやく!頼む!来てくれ。説明している暇は今はない。メアとダントンがっ!!」


 私はヒラリと再び、馬に乗る。アイリーンとキサも馬に乗った。


「メアは!?」


「わからない。なんでメアが魔物を呼びだしているのかわからない!!ダントンが襲われている子供を守っている……子供と一緒にいた闘神官がいて、持ちこたえていると良いんだが」  


 焦ってうまく説明できないクラリスは珍しい。


「場所は?魔物の数は?」


「西の森の入口付近で……数はどんどん増えてきていて把握できない」


「俺達がすぐ向かう!クラリスは学院長の所へ行って、応援を頼んでくれ。魔物討伐という名目なら動けるはずだ」


「わかりました!」


 キサがクラリスに指示を出し、私とアイリーンには行こう!と声をかけて、馬の腹を蹴る。西の森ならそう遠くはない。風をきって馬が駆けていく。

 なんでクラリスとダントンが関わっているのか気になったが……先にこっちを片付けないとだ。


「子どもと言うのは、レオン王子で間違いないわね」


「ああ……まさかデュルク家が動いているとはな」


 私とキサとの会話にアイリーンが察し、ショックを受けたように呟く。


「タイロン様は実弟のレオン様まで亡き者にする計画をしているなんて信じられませんわ」


 あの子はタイロンと違って可愛いですのよーとブツブツ言う正直者のアイリーン。

 西の森が見えた。キサが指差す。


「あそこだ!」


「……ヤバイわね。ダントン無事なのかしら」


 冷汗が頬を伝う。魔物が西の森の入口を塞ぐほど大量にいる。まるで魔物の巣だ。黒くウジャウジャと虫のような動きをしている。


「とりあえず道を開くわ」


 私は術を紡ぐ。馬が魔物に怯えているのをなだめつつ、手綱から片手を離して空中より自分の杖を取り出す。禁術を使うときは師匠と同じく自分の杖を持っている。出さなくても術を使えるがあったほうが威力は増す。白銀色に淡くポウッと光って出現し、私の手におさまる。くるっと回してみる。久しぶりの感触だが手に馴染む。


 加減無しの攻撃的な古代禁術を使えると思うと高揚感が沸き起こる。師匠のことを言えないなと苦笑する。私も相当好戦的だ。


 魔物たちがこちらに気づくほど接近した瞬間、杖を前に突き出して貯めた力を解き放った。ゴオッという轟音と共に魔物だけでなく木々までなぎ倒してデカい空洞ができる。


「なっ!?なんですの!?この力は!?こんな術見たことがないですわよ!」


 ついでに追ってこないようにもう一つ発動させておく。私達を中心に光の輪が生まれた。杖をくるりと回した瞬間に魔物が光の輪が無数に飛んでいき、円環に捕まり、切り刻まれ、一瞬で消えていく。


「今よ!」


 アイリーンへの説明は後回しだ。とりあえず森の中へこれで入れる!中にも獣の形をしたものや鳥の形の魔物達が木々の黒い影のように蠢いていたが、まだそこまで集まってきていない。しかし時間との勝負になるだろう。


「レオンー!!」


 キサが叫ぶ。呼ぶと返事をするかのように赤色の炎があがった。


「ここだー!」


 ダントンの声、魔法剣で魔物を撃退している。魔物が燃えている灯りに照らされたのは大きい木を背にしている幼い王子と護衛の闘神官、肩で息をしてしんどそうなダントン。大剣を持つ手が限界で地面に切っ先がついている……そして右端にメア。


「ミラ……無事だったのね」


「メア!なんでこんなことを?」


 私が問う声を遮ってレオンがキサに駆け寄る。


「キサ兄様ーっ!」


「良かった。無事で。護衛してくれて、レオンを守ってくれて感謝する」


 ダントンと護衛していた神官もホッとした表情を浮かべる。


「ミラ、来てくれたか。助かった」


 これはかわいい。私も納得した。金色の巻毛に青い瞳の少年。天使か。10歳と言うことだったが、童顔らしく、さらに幼く見えた。

 キサも綺麗な顔立ちをしているし、これはもう王家の血筋なのかしら。


「メア、もうやめろ。その魔法球をこちらへ寄越せ!」

 

 ダントンがそう言うが首を横に振るメア。


「ダメよ。わたしがしなければ皆が困るのよ」


「タイロンはもう大丈夫だから、そのへんにしておくんだ」

 

 キサが低い声音で警戒しながら言った。


「キサ様、レオン様もごめんなさい。道連れにします」


 メアがそう言うと、黒い球体を上へ掲げる。さらに黒い墨のような光を帯びていく。夜の闇よりも黒く禍々しい。

 襲いかかってくる魔物を私は光の矢で撃退する。このままでは数が増えるばかりだ。止めようとメアの傍へすこしずつ寄っていく。それに気づいてバッと短剣を取り出す。


「近寄らないで!近寄ればわたしの血でここに魔物を生み出す地を作るわ!」

 

 魔物を操るだけでなく魔物寄せの術も使えるのか。すごい。勿体ない才能である。ごくりと緊張から唾を飲み込む。しかし魔物寄せはメアの命と引き換えになるだろう。魔物が術を使った相手を喰らうからだ。それを糧とし、魔物が湧いていく。


「誰のためだ?デュルク家だけのためだけじゃねーだろ!?オレはメアの優しさを知っているんだ!誰のためにしてる!?オレが救ってやる!」


 ダントンが怒鳴った。


「もう遅いわ!手遅れなのよ。殿下たちがここまでしてしまったことやお姉様が王妃になれないんですもの!」


 涙声だ。泣いている。


「ごめんなさい。ミラも危険な目に合わせてしまって。でもしかたなかったのよ。タイロン様にお姉様を王妃にしてやると言われて、父から願われてわたし……」


「メア!一緒に帰ろう!」


 私はもういいと思い、呼びかける。


 アイリーンとキサ、レオンの護衛官の神官も術を使って魔物達を蹴散らしている。これでは消耗戦だ。きりがない。いずれこちらの力が尽きるだろう。


「父に初めてわたしという存在を見て貰えた気がしたの。デュルク家の役に立ちたかった」


「メア!こっちへこい!」


 ダントンが必死で呼びかける。メアには私達の想いが届かない。そうしているうちにも、どんどん魔物は数を増やしていく。魔物の気配がどんどん強くなっていく。アイリーンがそろそろ限界ですわ!と言う。


「キサ達はレオン様を連れて、王都へ戻って!ここは……ダントンと私がなんとかするわ」


 まだ禁術を撃てるだけの余力は残っている。しかしそれほど多く使えるわけではない。体力が限界なのだ。飲まず食わずで昨日からずっと緊迫した状況でかなり私は疲弊している。

 今のうちに王子たちは逃しておきたい。


「ミラ、勝算はあるのか?」


「わからないとしか言えないわ。メア次第ね。キサが今、優先するのは自分の身とレオン様の身でしょう?そんなに逃げるチャンスはないわ。一度この一帯……更地にしちゃうけど、血路を開くわよ!そして逃げて!」


 キサはレオンを見てから私の方を向くと頷いた。


「俺は残りたいけどね」


 キサはそう言うが、自分達がいないほうが戦いやすいことを察している。


 私は杖を真っ直ぐに構える。ピリピリと周囲の空気が震える。膨大な力が場に満ちてくる。アイリーンやダントンが息をのむ。

 

「いくわよ!」


 私がそう言った瞬間、辺りは白い光に包まれて一層強い輝きを帯びたかと思うと、ドンッという衝撃波の音と共に周辺の木や魔物が消え失せる。綺麗な更地だ。魔物どころかチリ1つ残っていない。

 私の魔力は一気に失われて、呼吸がハァハァと肩で息をするしかなくなる。


「すげぇ」


 ダントンが目を見開く。キサは馬にレオンをのせ、アイリーンは闘神官と共にのり、駆け出そうとする。4人をとりあえず無事に王都へ!


「走って!」


「させないわよ!」


 メアが自分の腕を切った。したたる血が球体にかかる。


「なんですの?あれは……」


 ゾッとしたようにアイリーンが言う。魔物が球体から這い出すようにぞろぞろ出てくる。暗い空からも羽撃く無数の影。倒れ込むメア。魔物がその身体に喰い付こうとしたが、ダントンが庇う。


「ダントン!メア!」


 私が間髪入れずに術を放ってダントンの上に覆いかぶさるようにやってくる魔物を倒す。魔物は私達ではなく、メアの力と血を求めて集まってきている。ねっとりとした禍々しい気持ち悪い空気。


 アイリーンにキサはレオン達を頼む!と言う。馬から降りて、レオンを護衛の神官に任せた。


「僭越ながら申し上げますが、そこの娘を殺すという選択肢はないのですか?」


 キサにレオンの護衛をしている闘神官が尋ねる。そんなこと!させない!と私はメアの持つ球体に手を伸ばし、取り上げた。


「ミラ!やめろ!」


 驚いてキサが言う。球体から黒い影が伸びて私に絡みつく。抑え込もうと力を注ぐ。同時に生まれてくる魔物を蹴散らす。

 この球体は単なる力の増幅器だ。メアの力を介して魔物は来ている。増幅器を壊せば多少減るだろう。手に力を集中させる。ヒビがピシッと入る。


「これも……また……なかなかの品だわ」


 秘宝級の品々が今、この時期にこれだけ持ち出されるとは、偶然なのかな?

 私の力もさすがに枯渇しそうである。手が体が震えている。その瞬間、キサが私の手の上に手を重ねる。


「無茶苦茶だな!……王になることを決心せざる得ないな」


 そう言って微笑む。なんで余裕なの?と言おうとしたが、先にキサが言う。


「ルノールの民の力、そして王国の鳥の力が揃っている。これは王国の緊急事態でもある。ミラ、使わせてもらうよ」


 どういう意味?キサが呪文を詠唱し始めるとあたりの魔物が怯えたように動きを止める。私の体から力が奪われていき、キサの力に混ざる感覚。


『地に降り立つ神々により創られし、神の鳥の羽撃きを聞け!』

 

 夜の空にサアッと金色の雲が生まれ、朝のように周辺が明るくなる。神々しい鳥が光の間から現れる。誰も言葉を発せられないほどの美しさと畏怖するような力に満ちている。言葉を発する者もいない。


 キサの肩が私にぶつかって、ふと気づく。タイロン達の術で破れた服。肩のところが覗く肌に刻まれたように鳥の姿の紋様があった。淡い光で輝いている。

 そこに私の気を取られた時、球体が透明になりパリッと呆気なく割れた。バサリと鳥の羽の音がして、ハッと顔をあげると、金色の鳥がいた。羽根を広げて羽撃くとあたりの魔物が消える。金色の羽根がヒラヒラと空から落ちてきた。触れるとケガが癒えていく。地面から芽吹いてくる草木。メアの腕の傷はあるのものの、血が止まっていた。これが神の鳥。 

 ひれ伏すアイリーン、レオン、闘神官、ダントン。キサの中へ吸い込まれるように神の鳥が消える。キサの空色の目が金色になり、髪の色も光るような色になる。

 

「これが王国を護る鳥なの?」


 キサなのか神鳥なのか?私のことをみつめる。手を触れられたままで身動きがとれない。力が人とは桁違いなのがわかる。


『少し話したくて、この者の体を借りた。600年ぶりほどかな?ルノールの長』


 勘違いです。1ヶ月ぶりだなというくらいの気軽さ。人はそんなに長生きできないだろうと苦笑した。

 慈しむように私を見る。


『会えるときを楽しみにしていたよ』


 そう言って頬に優しく触れ、嬉しそうに笑うと、唐突に抱きしめられた。


「え!?ちょっと!?人違いです!」


 慌てふためく私にとても優しい声音で言う。愛おしい人を見つけたかのように髪を撫でる。


『見間違わない。その力の色は君にしか出せない。我にしか見つけ出せぬ。そろそろ時間が切れるか。……また会おう』


 キサの顔で言うのをまずやめてほしい!フッと目の色と髪の色が元に戻るとキサのがイラッとしていた。パッと慌てて、私は体を離す。


「何だ!?勝手に人の体を使って、何をミラにした!!絶対もう呼び出さないからなーっ!」


「ナンパしてったわね」


 私とキサの感想にアイリーンがツッコミを入れる。


「貴方たち、二人おかしいですわ!今の問題はそこじゃないですわ!」


 私はアハハと笑ったが、さすがにもう限界で地面にへたりこむ。力を使いすぎた。慌ててキサが腕を掴む。


「大丈夫。少し休めば大丈夫よ」


「すまない。もっと早く召喚しておけばよかったんだが…そんなに簡単に呼べないんだ」


 神の鳥を呼ぶということは王座に着くことだろうと今ならわかる。陛下と学院長がキサに国王の椅子に座らせたがっていたのはこの神鳥の存在もあったのだろう。人外の圧倒的力を見せつけられた。驚いた……。


「キサ様にお願いがあります」


 ダントンが膝をつき、意識のないメアを抱えて言う。改まった口調だ。


「なんだろう?」


「メアを許してください。オレとこの国から出て、二度と足を踏み入れないと誓います」


 王族に楯突いたデュルク家はもうおしまいだろう。さらに王家の者の命を狙った行為は処刑を免れないだろう。

 キサもわかっているからこそ黙る。


「その優秀なダントンとメアの力を他国に渡すわけには行かない。メアの持っていた魔法球を調べる必要もある。この国の物ではないな」


 確かに個人、タイロンでは手に入れられない代物だ。ましてやこの国の宝物庫からでもないようだ。他国からの干渉と考えてもいいだろう。


「何もなかったことにはできない。メアはとりあえず母のいる地で療養するといい。デュルク家は貴族の地位を剥奪。タイロンは地方へ……」


 アイリーンが不満の声をあげる。


「優しすぎますわ!」


 それをレオンが横から申し訳無さそうに言う。


「本当ならば兄もこの僕も相応の罰を受けることになります。温情を感謝いたします」


 10歳とは思えない言葉に私は感心してしまう。


「タイロン、レオン……そして、その母も生かしておくことを約束するが、今日、ここで見たことは他言無用にしてほしい。ミラの禁術、メアのこと……俺の神鳥の召喚は無理かもしれないが」


 確かに派手な召喚だったから遠くからでも見えたよね……。


 そして、時、遅くして……今の光は!?鳥は!?と駆けつけてきたクラリス達だった。

 それを確認し、ホッとしたのか、私の意識は暗闇に落ちていった。遠くてキサが呼んでいる。


 ヒタヒタと暗い回廊を歩く。どこなの?ここ??見たことのない場所だ。

 内緒話をするのだろうか?誰もいないことを確認し、私は誰かと話す。勝手に口が動いている。


「どう?地上の世界情勢は?」


 黒いフードを目深にかぶり相貌はわからない相手が応答する。


『長様、戦は続き、地上に住むルノールの民の立場が危うくなっておりまする』


「傭兵は辞めるように、力を貸さないようにと伝えたのに?」


『天上と地上に民が分かれて暮らして随分たちますからな。長様の御威光は地上には届かないかと…』


 困ったように私は嘆息した……気がした。だけど強い口調で相手に言い放つ。


「このまま続ければルノールの民はいずれ人の敵となり魔物よりも恐れられます。私が地上に降りて皆を説得してきます!」  


 なりません!!と強く言われる。天上のこの地を誰が守るのか?と問われると言葉に詰まってしまっている。


 地上では赤く黒い炎が燃え、黒煙が見える。魔法の光が巻き起こったかと思うと苦悶の声が聞こえる。震える体をギュッと私は強くかき抱いた。


 流す涙が頬を伝う。泣いている私。

 早く早く帰ってきて。そんな怖いことはやめて!このままでは皆、死に絶える。『故郷に還れし我が子達』よ!


 そこで場面はブラックアウト。プツリと切れた。


 

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