第三話 神の警告
バルトは突如強い光に体を包まれる。
「強制転移!」
「うわ!?なんだこれ、体がいきなり光出して……うわぁ」
バルトは塔の外に強制的に放り出された。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
バルトが走っていた場所はまだ地上からは程遠く、空高くから地面に激突しそうになっていた。
「くっそ。せっかく作ったのにこんなところで死んでたまるか!俺の下の空気と地面の材質を変えれば助かるか……いや分からない。けど一か八かだ!」
〈マテリアルチェンジ〉
バルトの手から光がはなたれ、空気と地面はまるで羽毛のように柔らかくバルトを包み込んだ。
「ふぅ何とかなったな」
地面に落ちたバルトはふわふわになった地面に手を当てながら言った。
「それにしてもさっきのは何だったんだ?急に体が光って外に飛ばされるなんて……あんな魔法は無いはず……まさか天空の塔に何か異変が!」
バルトは慌てて天空の塔の中に入って行った。
そこにはモンスターと呼ばれる生物がうじゃうじゃといた。
「は?えっ?なにこれ?なんでモンスターがこんなにいるんだよぉぉぉぉぉ」
バルトは驚きのあまり天まで届くほどの大声で叫んでしまった。
その声のせいでモンスターたちがバルトに襲い掛かってきた。
「ちょっ、まてこっちくるな」
〈トレイトチェンジ〉
バルトは土の形を変え大きな壁を作った。
そのすきにバルトは天空の塔から出て入口を塞いだ。
「なんなんだよ。あのスライムたち、見たことのない色してたな……」
バルトが嘆いていると急に空が暗くなり空に何かが移った。
「なんだ?空が急に暗く」
「私は迷宮の神、名をラビス・リン。この塔は恐れ多くも天界に踏み込もうとする人間が作りしものである。天界に踏み込もうとする人間は何人たりとも許されない!わがラビスの名においてこの塔を迷宮と化した。天界に踏み入ろうとせし愚かな人間よ。わが迷宮、攻略できるものならしてみろ。神の怒りを貴様らに思い知らせてやる」
ラビスは神としての威厳を見せつけた。
「なんだ?あれは神なのか?胸は無いが美少女ではないか!胸は無いが顔は凛として美しく足はスラっとしていてまるで水面に映る月のようにきれいだ。胸は無いが声も透き通っていて耳がとけるようだ。胸は無いが俺好みの完璧な女性だ!」
バルトがラビスの姿を見て夢中になっていると、ラビスは肩を震わせながら言った。
「胸が無い胸が無い言うなー!私だって気にしてるんだよ!さっきから聞いてりゃ褒めてるのかけなしてるのかわかんないし、胸があるってそんなに重要なのか?!つーかあんたはどんだけ胸が大好きなんだよ!」
さっきまでの威厳のある言い回しと違い、バルトに向かって子どものように言い返した。
「おぉこっちの声もそちらに聞こえていたのか。ならば迷宮の神ラビスよ。一つ問いたいことがある」
「なによ。私の胸に関することは何も言わないからね」
ラビスはプイっとよそを向いた。
「そんなことではない。天界にはあなたのように美しい女性がたくさんいるのか?」
バルトは目を輝かせながらラビスに聞く。
「そんなことって…まぁいいでしょう。仕方ないから答えてあげます」
ラビスはバルトの方に視線を向ける。
「確かに天界には私のような美しい女神はたくさんいるわ。それに人間の比にならないほどの美しさを持つ美の女神や愛の女神がいるもの」
美しいと言われ少し上機嫌になったラビスは、べらべらと天界のことをしゃべりだした。
「そうか。ならば胸の大きくて美しい女性もいるということか。なおのこと天界に行きたくなった」
バルトはラビスに何も言わず、上の空になっていた。
ブチッ
ラビスの堪忍袋の緒が切れた。胸が無いとさんざん言われ、質問に答えたら適当に流され胸に夢中になるバルトに
「やっぱり胸が大きい方がいいのかー!もういい、分かった。絶対に天界に入ってこられないように攻略不可能な迷宮にしてやる!後悔してももう遅いからね!」
ラビスはまた子どものようにバルトを怒鳴る。
「そんなに天界に入られるのが嫌なら先ほどの強制テレポートで天界に来た人間を全員地上に戻せばいいのではないか?そうすればダンジョン化する必要もないだろう?」
バルト純粋な疑問をぶつけた。
「さっきの強制転移は迷宮化するときにその建物内に何かがあるときしか使えないのよ!」
ラビスはさらに怒りながら言った。
「そうか…ならば天界に入ってしまえばこちらに移動させることは出来ないということだな」
バルトは神妙な顔をしながら言った。
「そ…そうだけど」
ラビスはバルトが何を考えているのか分からなかった。
「ふははは、ならば俺にもまだ道はある。このどんな手を使ってでもこのダンジョンを攻略し天界に入ってやる」
バルトは高笑いしてそう言った。
「ふん。私が作った迷宮は攻略不能だって言ったでしょ。命が惜しければ登ろうなんて思わないことね」
ラビスがそう言うと空が明るくなりラビスの姿は無くなっていた。
バルトは笑いながら言った
「やはり女神は存在した。俺はどんな手を使っても天界へ行ってみせる」
バルトは雲の上を見て決意を固めた。
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