第二話 天才?バルト

 一方そのころ塔の中では


「なんなんだあれ!?神ってみんなあんなムキムキのおっさんみたいなやつなのか?!」


 天空の塔を作った建築士、バルトライグ…みんなからはバルトと呼ばれている。


 バルトは塔を登り天界に通ずる扉を開いた。


 目の間にいたのは上半身裸でひげ面のおっさんが昼寝している。


 いくらだらしがないとはいえ神は神。


 地上にいるドラゴンの三倍もの大きさをしている。


 バルトは天界にいる神を目の当たりにして一時的に逃げてきたのだ。


「マジ怖えよ!なんだよ!ムキムキの超でかいおっさんが、上裸で昼寝してるってどういう状況だよ!」


 バルトは塔を駆け降りる。


「塔作って天界に乗り込もうとしたまではいいけど、あんなのいるなんてきいてねえって」


 そもそもバルトはなぜ天界まで届く天空の塔を作ったのだろう?


「神ってもっとこう…なんかおっぱいボインで優しい雰囲気の感じじゃないの?!なんであんなべろべろに酔っぱらって、路上で寝てるようなおっさんがいるんだよ?!」


 バルトは女神の姿を想像する。


「あぁもう、天界に行けば綺麗な女神さまたちにあの塔を褒めてもらって、さらに人間にはできない、あんなことやこんなことをいっぱいしてもらえると思ってたのに!」


 バルトはスケベだった。


 美しい女神に会いたいという一心で、天空の塔を作ったというとんでもなくしょうもない理由だった。


 バルトは王侯貴族専門の建築一家の生まれだ。


 齢十六の時に設計し、自身の魔法で作った王宮が他国の侵入を許さない難攻不落の城であった。


 そのことがきっかけで世界中にバルトの名が知れ渡った。


 その後も国から何度も依頼され、国にある重要な建造物はすべてバルトが作った。


 国からは報酬が与えられその金で、バルトは毎日世界中の女性とあんなことやこんなことをしていた。


 だがある日突然バルトは


「飽きた」


 と言ってすべてを捨て、国を飛び出したのだ。


「人間の女性では俺の欲望をすべて満たすことは出来ない。空にいる神様なら俺の願いをすべてかなえてくれるだろう」


 そう思い各地を旅し、天まで届くことのできる塔を造るための場所を探していた。


 そのときバルトは古代建造物の址を見つけた。


 かつて人々が天界を目指して建てようとした天空の塔が作られていた場所


「なんだこの塔?作りかけじゃないか。この土台の大きさ、上に行くほど小さくなっていくこの構図…」


 バルトは上を見上げて考える。


「この塔はあの雲に届くほどの大きさになるな。それにこの土の感じはおよそ五百年程前のものだな、作り方も石を一つずつ重ねて生み上げるという方法だったようだ。そんな方法でここまでの大きさを作り上げたというのか」


 バルトは顎に手を当て上を見上げながらそう言った。


「だがこの方法だと二千年以上はかかることになる。作っていた者たちは途方もない作業をすることに、嫌気がさしてしまったのだろう」


 二千年前の光景を想像したら疲れてしまった。


「魔法が日常的に使用されるようになってきたのは、ここ数百年程のことだしな。今の俺なら天まで届くようにするのに数年で済むだろう」


 バルトはかつてこの塔を作っていた人たちのことを哀れに思った。


 だがバルトはすぐに気持ちを切り替えた。


「ん?天に届く塔?そうだ!この塔を利用させてもらおう。こんなに広大な土地もあって土も悪くない。俺の野望をかなえるには、ぴったりの場所じゃないか!」


 バルトは自分の欲望を果たす場所を見つけ喜んだ。


 そして天空の塔を自身の魔法を使って、わずか三年で完成させ今に至る。


「ああ、もう!天界と地上までの距離が長すぎる!自動で上り下りできるシステムでも作っておけばよかった」


 バルトは自身で作った天空の塔を駆け下りながら、修正点をいくつか見つけていた。


 塔の内部をシンプルにし過ぎたこと、もっと移動が楽になるようにすることなど、挙げてしまえば霧がない。


 神に会いた過ぎて、バルトは時間短縮しすぎていた。

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