第23話


 俺の暴走は止まらなかった。


 もうどうにでもなれという気持ちと、今更諦められない思いで、今度は石原さんの親に会う事にした。


 と言っても約束など出来るわけないので突撃するつもりだ。


 今まで石原さんのうちには何回か行ったが、両親に会った事がなかった俺は会社に直接行く事にした。



 会社の場所はネットで調べたらすぐに出てきた。



 まずは受付に向かう。


「あの、社長さんっていますか?」


「失礼ですが、お約束はなさっていますか」


「約束はしてないです。でも絆の件で来たと伝えてもらえたら分かると思います」


「少々お待ち下さい」

 

 正直こんな事で会えるほど簡単じゃないと思っていた。


 受付の人がどこかに電話をしていた。


「お待たせしました。ご案内します」


 えっ。俺は拍子抜けしたと同時に、やはり石原さんの言っていた事が本当なんだと実感した。


「こちらでお待ちください」


 俺は会議室のような所に案内され、椅子に座って待っていた。



 ガチャンと言う音と共に現れたのはおそらく石原さんの父親だろう。


「絆の件でと聞いたのだが、君はどうゆう関係なのかな」


 挨拶や自己紹介もまだしてないのに一言目でいきなりこれだった。

 

「単刀直入に言います。俺は絆が好きです」


「は?」


 何を言ってるんだこいつぐらいに思ったのだろう、目を丸くしていた。


「だから、石原さんとは別れてほしいと思っています」


「別れて欲しい?君になんの権利があって?」


「ご存知ではないでしょうが、石原さんには絆と付き合う前から交際している人がいます」


「一体何を言ってるんだ?」


「これは本人から聞いたので間違いないです」


「それの何が問題なんだ」


「その付き合ってる人が半グレなんですよ。だから紹介出来ないから絆を表向きの恋人として紹介したと言ってました」


「君は絆が好きだと言っていたね。別れて欲しいからって嘘はいけないよ。そもそもはるかがそんなやつらと連むわけない」


「本人も言ってたし実際に俺も見たんですよ」


「絆はとてもいい子ではるかとはお似合いだ。将来は婿に来てもらってうちの会社の跡取りになる予定だ」



 石原さんの父親は俺の話になんか耳を傾けようともしない。

 

 絆が何も言えないのをいい事に都合のいいように使いやがって。



「‥‥絆の気持ちも知らないくせに」


「ん?なんだって?」


「勝手な事ばっかり言いやがって!」



 気付いたら俺は石原さんの父親を殴っていた。


「っ!なにするんだ!」


「絆の事をいい子だと思うなら、少しは絆の気持ちも考えて下さい‥‥お願いします」


「‥‥帰ってくれ」


「わかりました。失礼します」



 殴った右の拳がまだじんじんしている。


 普通なら警察沙汰になってもおかしくはない。

 俺は絆の為ならなんでもやると決めていたが、どうも一人で空回りしているような気も薄々感じていた。




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