第16話


「悟くん最近元気ないね?」


 俺は美波ちゃんといつものように帰っていた。


「そうかな?元気だよ!ほら」


 絶対空元気だと思われてるだろう。


 美波ちゃんは絆が最近学校に来てない事を知っている、そのせいか機嫌がいい。


「もしかして、絆さんのせい?」


「せいって‥‥」


「なんか、怒ってる?」


「怒ってないよ!ごめんね」


「やっぱりおかしいよ悟くん」


「ごめん、今日は真っ直ぐ帰るよ」


「わかった‥‥」


 美波ちゃんには悪いが、とてもイチャイチャする気分ではない。



 結局、絆は学校を退学した。



 石原さんは相変わらず学校にきている。


 俺が、絆はどうしてるかと聞いてもうちでぼーっとしてるとしか言わない。


 二人して何を隠してるんだ。


 俺は美波ちゃんの事を思う瞬間もないくらい絆の事で頭がいっぱいだった。


 一体どうしたらいいんだ。



 そうだ、占い‥‥!



 俺は藁にもすがる思いで占いに行くことにした。



 絆と行ったのは夏休み前だ。

 

 確かこっちだよな、記憶を頼りにその場所に向かう。



 ん?ここで間違いないよな。


 占いの館はまるで普通の民家のようだった。


 恐る恐る玄関を開けてみる。


「すいませーん」


 すると、奥から年配の女性が出てきた。


「何か御用ですか?」


「あ、あのぉ、占いを、してもらいたいんですけど‥‥」


「占いはもうやめたんですけどね」


「え、あ、そうですか‥‥」


「ん?君はいつか来たかな?」


「はい、その時は友達の付き添いで来ました」


「そうでしたか。では今日は特別に見て見ましょうかね」


「本当ですか?ありがとうございます!」


 俺は部屋に案内され、前回と同じ場所に座る。


 その女性はしばらくして、またあの格好で入ってきた。

 着替える理由は分からないが、必要なのだろう。



「では、何を占いましょうか」


「俺の大切な人の様子がおかしいんです。でもなんでか教えてくれなくて」


「何を隠してるのか知りたいですか?」


「はい」


「まず、その大切な人は恋人ではないですね」


「‥‥はい」


「君は今側にいる人を大切にした方がいいですよ」


「え?あの、俺の知りたい事は」


「知らなくていいです。知ったところで何も出来ません。気を揉むだけです」


「そんなぁ‥‥」


「君が思いを寄せているその大切な人とは結ばれませんし、お互い幸せにはなれません」



 俺は占いのくせに人の幸せ勝手に決めつけやがってとイラついた。



「でも俺が思っている人が今辛い思いをしているかもしれないんです。どうにか力になりたくて‥‥」


「放っておきなさい。その人が選んだ道ですよ。君が何かしようとすればする程状況は悪化します」


「じゃあ俺は何も出来ないって事ですか」


「そうですね。期待していた事を言えなくてごめんなさい。でも君はよく周りを見た方がいいですよ」


「はい‥‥ありがとうございました」



 俺はなんで占いなんか信じようと思ったんだろ。

 馬鹿みたい。



 絆に会わないと‥‥。

 


 

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