第15話


 そんな時、絆が学校を休んだ。



 最初は風邪でも引いたのかと思っていたがその日を境に絆が学校に来ることはなかった。



 心配になった俺は絆に電話してみるが、電源が入っていない。


 家にも行ったが、留守みたいだ。


 そうか、今は石原さんちにいるって言ってたっけ。


 ならば石原さんに聞こう。



「絆ってまだ石原さんのうちにいるの?」


「いるよ」


「なんで学校来ないの?」


「さぁ」


「さぁって、知らないの?」


「行きたくないんじゃない?」


 石原さんは相変わらず冷めた目で俺の事を見てくる。


「は?意味わからないよ。話しないの?」


「だから、知らないってば!そんなに気になるなら自分で聞いたら?」


「なんだよそれ、じゃあ絆に会わせてよ」

 

 石原さんは鬱陶しそうにしながらも俺に、着いてこいと言ってきた。

 行っている途中も特に会話もなく一定の距離を保ちながら歩いた。



「ここが石原さんち?!」


 家に着くと、それは一際大きい豪邸だった。

 俺が呆気に取られていると、石原さんが中に案内してくれた。


 リビングの扉を開けると、絆がソファに座っていた。


「え、どうして悟がいるの?」


 絆はすごく驚いていた。


「絆と話たいんだってさ。二人で気が済むまで話したら」


 そう言って石原さんは部屋を出て行った。


「どうして学校に来ないの?調子でも悪い?」


「別に‥‥」


 絆はバツが悪そうだった。


「心配してたんだよ。何かあった?」


「別に」


「別にじゃ分からないし何もないのに学校休むかよ」


「悟には関係ないから」


 絆は頑なに言いたくない様子で目も合わせようとしない。


「石原さんに行くなって言われた?」


「は?」


「そうとしか考えられないし」


「違うし」


「じゃあなんでだよ」


「はぁ」


 ため息をつく絆。問い詰められたら困る事でもあるのか?


「俺は絆の事‥‥」


「学校休んでるのは石原さんは関係ないよ」


「そう。てかさ、絆はなんで石原さんちにいるの?事情があるとは聞いたけど」


 俺はずっと気になっていた事を聞いた。


「あぁ、うん。悟うちの家が工場やってるの知らないよね」


「初めて聞いた」


「まぁ言う程でもないから言わなかったんだけど、結構厳しい状況なんだ」


「厳しいって?」


「色々あって借金が返せなくなって、従業員の給料も払えなくなって、工場は今止まってる」


「そんな‥‥」


 俺は絆の家がそんなに大変だとも知らずに、呑気に生活していたなんて。


「それで、家も手放しちゃって、住むとこなくなったから両親は工場で寝泊まりしてるんだ」


「絆は石原さんにおいでって言われたって事か」


「そう」


「ごめん」


「なんで悟が謝るんだよ」


「絆がそんなに大変な事になってるとは知らず俺‥‥」


「悟には関係ないから大丈夫」


 関係ない、か。

 俺は少し寂しい気持ちになった。

 石原さんには言えるって事は信頼してる証拠なのかな。


「悟。‥‥今後一切関わらないで欲しい」


「は?なんでだよ?」


「言った通り色々と大変なんだ、分かってよ‥‥」


「それとこれとは話が別だろ?」


「‥‥お願いだから」


 絆があまりに真剣だった為俺は仕方なく帰る事にした。


「‥‥今日は帰るけど、俺は納得してないから」


 俺は混乱した頭の中を整理しながら帰った。




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