第13話
しばらく歩いていると、美波ちゃんが言った。
「あれ絆さんじゃない?」
美波ちゃんの視線の先を見ると、絆がいたのだ。
「本当だ!」
「やっぱり予想通りだね、話かけてくる?」
「うん、ちょっと行ってきてもいい?」
「もちろんだよ。待ってるから気にしないで」
俺は絆のところに駆け寄るとやはり石原さんも一緒に来ていた。
「あ、悟」
「おぅ」
少し気まずい。でも俺には確かめないといけない事があるんだ。
「石原さん、ちょっと話したいんだけど」
「なに?」
石原さんは不機嫌そうに答えた。
「絆はちょっと待っててほしいんだけど」
「なんで?ここで話しなよ」
「いや、それは‥‥」
「悟くん、絆も一緒でいいなら聞くよ」
俺はどの道絆の耳にも入るだろうと諦めて話をする事にした。
「石原さん、単刀直入に聞くね」
「うん」
「浮気してるよね」
「「は?」」
絆と石原さんはキョトンとしている。
「浮気って何の事だろ」
「本当だよ、悟何言ってんの?」
「海行った次の日石原さんホテル街にいなかった?」
「え?」
それを言った瞬間石原さんが動揺した。
「俺の彼女が石原さんが誰かと歩いてるの見たらしいんだよね」
絆が不安そうに石原さんの方を見ている。
「み、見間違えじゃないの?」
明らかに焦っている石原さん。
「見間違えって事もあり得る事は分かるよ、だから確かめたかったんだ」
「じゃあそれは見間違えだと思うよ」
「本当に石原さんじゃないんだね?」
「だからそう言ってんじゃん」
「分かった。それだけ聞きたかっただけだから。じゃあ」
俺はそれ以上問い詰めないようにした。何故なら絆の前で言い争いをしたくなかったからだ。
「祭り楽しんで」
俺はそう言いながらその場を去った。
あの反応は黒だな。
俺は美波ちゃんの元へと戻る事にした。
「話出来た?」
美波ちゃんの顔を見ると妙にホッとする。
「うん、見間違えじゃないかって言われた」
「そっかぁ」
「でも明らかに動揺してたから、多分美波ちゃんが見たのは石原さんだったと思う」
「悟くん、どうしたいの?」
「え?」
「石原さんが浮気してたとして、悟くんはどうなってほしいの?」
「それは‥‥」
正直石原さんの浮気がバレて別れる事を望んでいる自分がいる。
それに、なにより絆の事を傷つけるなんて許せない。
「‥‥絆さんが石原さんと付き合ってるのが気に入らない?」
「そんな事はないよ」
「悟くん!」
「ん?」
「私だけを見て?」
美波ちゃんが頑張って笑顔を作っている。
あぁ、こんな顔させるなんて俺は彼氏失格だ。美波ちゃんは少し変わっているが俺の事が大好きって事はすごく伝わってくる。
絆の事ばかりに気を取られて美波ちゃんに悪いと分かってはいるが、モヤモヤが残る。
「美波ちゃんごめんね」
「‥‥ごめんって」
「俺は美波ちゃんの事だけ見てるよ、もし不安にさせたならこれから気をつけるよ」
「うん」
美波ちゃんがいつものように抱きついてきた。
美波ちゃんとくっつくと、条件反射のように反応する俺の俺。
「フフッ、悟くんの体って本当正直だね」
「あー、ごめん!」
「いいんだよ、私は嬉しいから!」
そう言ってさらに強く体を押し付けてくる美波ちゃん。
俺は無意識に絆に抱きついた時の事を思い出していた。
あの時、もしかして俺のが当たってるのが分かったから嫌だったのかな。
もしそうならやめておけばよかったと後悔していた。
あぁ!また絆の事ばっかり。
目の前にいるのは美波ちゃんなのに‥‥。
「あ!そうだ、チョコバナナ食べてなかった!」
美波ちゃんが思い出したかのように言った。
チョコバナナ?!
そんなもの今食べられたら俺‥‥。
「も、もう売ってないかもよ?」
「食べたかったのになぁ」
「美波ちゃんスリムなんだからあんまり食べると太っちゃうよ!」
「え〜、悟くんまでそんな事言わないでよ〜」
「あ、ごめんごめん!でも本当にもうすぐ店じまいの時間みたいだしさ!」
「そっか、残念」
そう言ってほっぺを膨らます美波ちゃんはとても可愛かった。
そういえば、絆もよくほっぺを膨らましてたな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます