第6話


 終業式の日、午前中で学校も終わり、俺と美波ちゃんは一緒に帰っていた。


「悟くん、お疲れ様です!」


「あー、やっと一学期終わったね!」


「悟くん夏休みの予定は?」


「俺は基本部活かなー」


「じゃあ部活が休みの時は私と遊んでくれますか?」


「そうだね、休みが分かったら早めに言うよ」


「はい!私いつでも待機してるんで!」


「それにしても暑いなぁ」


「はい、汗とまりませんね」


 美波ちゃんの首にはじんわり汗が滲んでいる。

 俺はつい美波ちゃんの首筋に見入っていた。


「悟くん?何かついてますか?」


「あ、いや、ついてないよ!」


「本当暑いですよね〜」


 美波ちゃんはそう言いながら、スカートにインしていたシャツをバサッと出した。


 その時、ちらっと見えた美波ちゃんの横腹にドキッとしてしまう俺。


「そうだ!海とか行きたいですね!」


「海?」


「はい、私可愛い水着買ったんですよ!」


「そ、そうなんだ」


「あれ?興味ない感じですか?」


「そんな事ないよ!俺女の子と海って行った事なくて」


「意外ですね、悟くんモテるし、たくさん遊んでるのかと思ってました」


「ハハッ。なんか心外だな」


「だって私が悟くんと付き合えただけでも奇跡ですよ!友達に自慢しまくってますもん!」


「いつもテンション高いもんね美波ちゃん」


「青春してる!って感じしません?」


「青春?」



 俺は小さい頃から人見知りで、話すのが苦手だった。それでも小学生の時は自然とみんなが仲間に入れてくれた。


 でも中学校に上がる頃には、俺は一人でいる事が多くなった。


 そんな俺が変わったのは高校で絆と出会ってからだ。


 高校でも一人なんだろうなと思っていた時、同じクラスになった絆が俺に話かけてくれた。


 もちろん上手く喋れなかったけど、絆は一方的に喋り続けた。


 気付けばいつも俺の隣にいて、返事がなくても当たり前って感じで。


 ある日普通に会話出来てる自分がいた。


 絆は少し嬉しそうに、でもいつも通り喋り続けた。


 それから俺はみんなとも普通に話せるようになっていた。


 青春なんて無縁だと思っていた俺に今は彼女がいる。


 それも初めての彼女だ。


「ありがとう」


「え、何がですか?」


「なんかありがとう!」


「悟くんって色んな表情見せてくれますね。こちらこそありがとうございます」


「あ、あははっ」


 俺の遅い青春の始まりだ。





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