第5話


 翌日学校に行くと、校門で美波ちゃんが俺の事を待っていた。


「あ、悟くんおはよう」


「美波ちゃんおはよう!もしかして俺の事待ってた?」


「はい、少しでも一緒にいたくて」


 なんて健気なんだ。


「じゃあ行こっか」


「はい!」


 俺と美波ちゃんは学年が違うため、下駄箱も離れている。


「ちょっと待ってて下さい!」


「う、うん」


 美波ちゃんは走ってどこかへ行くと、またすぐ戻ってきた。


「あ、上履き履いてきたの?」


「はい!悟くんの教室まで一緒に行きます!」


 昨日付き合ったばかりなのに美波ちゃんは一時も離れたくないような感じだった。

 

 俺と美波ちゃんが一緒に歩いていると、後ろの方で絆の声がした。


「あ、絆、おは‥‥」


 俺がそう言おうと振り向くと、絆は石原さんと腕を組み、顔もすごく近くで楽しそうに喋っていた。



「悟くんどうしたんですか?」



「いや、別に」


 胸がザワザワするのを感じた。


「あれって悟くんといつも一緒にいた人ですよね?喧嘩でもしたんですか?」


「いや、なんか恋人出来て浮かれてんじゃね?」


「そうなんですか。悟くんも浮かれていいんですよ?」


「そ、そうだよね?こんな可愛い彼女がいるんだもんね!」


「可愛い‥‥」


 美波ちゃんの耳が赤くなっていた。


「あっ、ごめん。つい」


「嬉しいです。もっと言って下さいね!」


 頑張って笑顔を作っている美波ちゃんを見てると、絆の事ばかり考えるのも悪く思えてきた。


「あ、チャイム鳴っちゃうよ?」


「もう行きますね!帰りはもちろん一緒に帰りますよね?」


「でも俺部活あるから遅いよ?」


「分かってますよ、待ってますから!」


「わかった、じゃあ放課後ね!」


「はい!授業ファイトです!」



 美波ちゃんの髪は癖っ毛なのか、セットしているのか分からないが、ふわっとしていてとても似合っている。


 そんな髪を靡かせながら廊下を歩く後ろ姿に見惚れていると。



「おーい」


「あ、絆」


 振り向くと絆の姿が。石原さんは教室に行ったみたいだ。


「誰?あの子」


「彼女」


「は?悟の?」


「他に誰がいるんだよ」


「へー」


「なんだよ」


「可愛い子じゃん」


「なに?もしかして嫉妬?」


「気持ちわるっ!嫉妬なんかするわけないじゃん!」


 そう言いながらも動揺しているように見えたのは気のせいだろうか。



 それからというもの絆と話す機会はどんどん減っていった。


 お互い恋人が出来て構う暇がなくなったんだろうと勝手に思っていた。


 俺も時間があれば美波ちゃんがいつもきてくれるし、絆も石原さんとよくいるのを見かける。


 少し寂しい気持ちはあるが、絆はなんとも思っていないのだろうな。



 もうすぐ夏休みかぁ。





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