(四)-4

 彼はずっとじっと私のことを見ていた。

「本当は中学の卒業式の日に言うつもりだったんだ」

「もしも昔と変わっていないなら、付き合って欲しい」

「サークルの飲み会で見つけたとき、びっくりしたよ。俺は一目見て気づいたんだ。あ、三間坂がいる、って」

「正直言って、もう会えないと思ってた。でもこれって奇跡じゃね? まさかこうして会えるとは思わなかったし」

 私は、何も答えられなかった。付き合ってくれなんて言われたことは一度もなかったし。何よりもあの有田にそんなことを言われたのだ。あの意地の悪い有田に。好きと言われて悪い気はしない。でも有田に言われたと思うと、複雑な気分だった。

「ねえ、それって、今、返事しなきゃダメ?」

 私は聞いた。彼は頷いた。


(続く)

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