脈絡のないスイーツ祭りに驚いていると、倖がりんの頭をポンと一つ叩き、詫び、とフェンスに寄りかかるようにどっかりと座り込んだ。

「詫び、って、」

 りんが戸惑いながらも倖の傍に座ると、一週間無視した詫び、とそっぽを向いてぼそりと言う。

「……そ、それを言ったら私こそ何かお詫びの品を渡さなきゃいけなかったのに、」

「いーから、コーヒーとお茶とどっちがいい。」

「……お茶で。」

 ん、と差し出してくる倖に、ありがとうございます、と礼をしてりんはそれを受け取った。

 何というか、マメというか、律儀というか。

 一緒にいればいるほど、その端々から倖の誠実さを感じずにはいられない。友達づきあいとはこうあるべきなんだな、と1人納得し、脳内にメモを取る。

「たくさんありますね。……倖くんのお友達も来るんですか?」

「柴田か?あいつは最近彼女とデートで忙しいらしい。」

「彼女さんと。いいなぁ。柴田くんて爽やかな感じの方でしたよね?」

 倖はりんのその感想に袋から顔をあげ、げんなりとしてみせる。

「爽やかって。おまえ、あいつは筋金入りの変態だぞ。」

「へ、へんたい?」

「ん。近づくなよ。」

 りんに釘をさすと、俺はこれ、とティラミスを手元に引き寄せて開け始めた。

 変態ってどの程度の、とりんは暫くぐるぐると考えていたが、新商品と書かれたクリームたっぷりプリンを見つけると、食べたかったやつだ、といそいそとスプーンを手にとった。

 うまっ、と向かいで舌鼓をうつ倖にならってプリンをパクリと口に入れた。クリームがとろけ、ついでにプリンまで蕩ける。

 ぬぅ、惜しい。プリンはもうちょいしっかりしてても良かったのに、と思いながら二口目を口に運んだ。

「なんだ?まずかったのか?」

 りんの微妙な表情を読み取り、倖が怪訝そうに聞いてきた。

「まさか!おいしいですよ。ただ、もうちょっとプリン固めでもよかったかなぁて、」

 りんが言い終わらないうちに、どら、と倖が手を伸ばして一掬い持って行った。

「んー、これはこれで、俺は好きかな。」

 プリンを堪能したあと、ティラミスを差し出してくるので、一口頂く。

「……これ、めちゃくちゃおいしいですね。」

「だろ?もうやらねーぞ。」

 倖が意地悪く言うが、りんの顔を見て眉をしかめた。

「なんでそんなニヤニヤしてんだ?」

「だって、倖くん。色々買って半分こずつなんて、友達みたいじゃないですか。」

 こういうの、してみたかったんですよね、とりんはニンマリと嬉しそうに笑った。

「……よかったな。」

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