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親戚であるという贔屓目を差し引いても慶はかっこいい、と思う。眼鏡屋らしく眼鏡をかけているが、それが伊達であることをりんは知っていた。
今日は太めの黒縁眼鏡でグレーのスーツ。クールな大人の男性といった体で、りんでさえ思わずドキリとするほどかっこいい。
すると慶の対面にいる倖までもが、ギギギギィとりんに顔を向ける。無表情の慶とは対称的に倖のそれは射殺さんばかりの視線でりんを睨みつけてきた。タイプは違うが顔のいい2人の男性に同時に凄まれ、りんはすくみあがった。
そのりんの心情を知ってか知らずか、倖がさらに睨みをきかせながら口を開いた。
「おい。どういうことだ。」
「どういうことって言われても……」
「そうだな、俺も聞きたいな。どういうことかな。りん。」
「だ、だから、どういうことって、言われて、も……。」
なぜか今度は腕組みをする男2人に、りんが追い詰められるかっこうになる。意味がわからずうろたえていると慶が、わかった、と手をあげた。
「話を整理しよう。俺はりんから、俺に気がある子と会って欲しいと頼まれた。で、連れてきたのがこれってことは、こいつが俺のこと好きってことか。」
「好きじゃねぇ!」
間髪入れず倖が叫んだ。
「ちょっと待て。お前のいとこって、こいつか!?」
倖が真っ赤な顔で怒りながら隣に立つ慶を無遠慮に指差した。
目の前に突きつけられたその指を、慶がぞんざいに払った。
何か、根本的なところで私は間違ったのではないか。
焦りながらも、りんは倖に確認した。
「だ、だって、だって、倖くん、私のいとこに興味があるって言いましたよね?私、いとこって慶くん一人しかいないし、てっきり……。」
『まじか。』
倖も慶も驚きに目を見開き、2人の声が見事にかぶった。
「あー、いまいちわからないな。なんでこんなことになってるんだ?」
慶ががしがしと頭をかき、しかめ面でそう言った。その言葉に慶の苛立ちを感じ取り、りんは思わず、またピクリと身をすくめた。
「……ど、同性の方が好き、という人もいるから、倖くんもそうなのかな、て。あんまり、詮索とかしない方がいいのかなって思ったから、……ごめんなさい。」
胸の前で組んだ手をもじもじと動かしながら 、りんは蒼白になって答えた。同性、と倖が絶望したようにぽつりと零すのが聞こえる。
「うーん、別に怒ってるわけじゃないんだよ、りん。……確かにりんの性格からしたら、男が好きなのか、なんてデリケートなこと確認しづらいだろうしね。……それに、怒っているというなら、君に対してかな。」
と、慶はあろうことか倖を指差して言い放った。
「なんで、おれ?」
と、倖が憮然とした態度で言う。
「身辺調査が甘いよ。自分の好きな相手くらい、しっかり調査しなよ。」
その言葉に倖は深く息を吐く。そうして目を瞑ると眉間をもみながら低い声で答えた。
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