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「……会って、くれるわけ?」
「だそうです。」
「まじで?……いきなり会うのとかって嫌じゃないかな、て俺思ってたんだけど。」
めっちゃ嬉しい、と頬を染める倖を見上げながらりんが手をあげる。
「あ、あの、でもそれには一つ条件があるっていうか、」
「……なんだこの期に及んで。」
いかにも水を差されたという風に倖が盛大な顰めっ面で応じる。
「本当に申し訳ないんですが、私も同席してほしい、と言われて、」
「邪魔。」
「知ってます。」
倖はしばし悩んでいたがやがて諦めたのか、一つ舌打ちすると、しゃーねーな、と口を尖らせた。
「ついてくんのはいいけど、余計なことすんなよな。」
「大丈夫です。ひっそりとついて行きます。」
「それはそれで、なんか、怖いけど。」
「あと、場所なんですけど、駅でもいいですか?仕事終わりにパパッと済ませたいみたいで。」
「……パパッと、済ます……?」
若干悲しそうな瞳で倖が呻く。
しまった。失言だっただろうか。
「パ、パパッとというか、あの、サクッと?会いたいなぁ、みたいな?」
「……サクッと、」
「で、でも!あの!こ、好感触でしたよ?高校生かぁって!」
「そ、そうか?」
だったらいいけど、と倖は口を尖らせたまま照れる。
「それで急なんですが、仕事の終わる時間の兼ね合いで明日でもいいかな、てことなんですが。」
明日が無理だったらシフトの関係上一週間以上あとになるそうです、とりんは恐る恐る口にした。
いくら何でも明日、なんて心の準備的にどうだろうか、と不安そうに倖を見ると意外にも彼は、わかった、と素直に頷いた。
そうしてやおら身を屈めると、あのさ、と憂鬱そうに言った。
「……金髪って、あんま好みじゃない、かな?」
「きんぱつ、ですか。」
そうして近くなった倖の髪をじっと見る。
今日も艶やかでサラサラ、綺麗な髪だ。
羨ましい。
羨ましいし綺麗だけど、いとこの好みかどうかと言われると。
「んと、本人もあまり派手な恰好はしませんし、……好み、ではないかもしれません。」
「……っだっよなぁぁぁ、」
頭をがしがしとかき回して倖はしゃがみこんだ。
「あ、でも、私は好きですよ。倖くんの金髪。」
「……お前が好きでもなぁ、」
「……失礼ですよ。」
せっかくのフォローもあまり効果がないようで、倖は暫く頭をかかえていた。
「よし、染めるか。」
そして唐突に立ち上がりそう言うと、自分の席へと座りスマホを弄りだした。
美容院の予約でも取っているのだろうか。
ともかく伝えなければいけないことは、伝えたはずだ。
後は明日、倖についていくだけだ。
真剣に画面を見つめる倖の顔を眺めながら、りんはため息をついた。
うまくいって欲しいような、欲しくないような。
うまくいったら、きっと、放課後もデートの時間に当てられるだろうし。
うまくいかなかったらそれはそれで、連絡先ゲットという、お友達ごっこをしている理由がなくなるわけで。
そういうのとは関係なく、仲良くしてくれたら嬉しいけど。
無理だろうなぁ。
りんは大きく息を吸うと、倖から視線を外した。
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