-
だから、出来ることなら倖の役にたってあげたい。彼が信用に足る人だというのは、もうわかっている。
多分、大丈夫だ。
倖の照れた表情を思い出し、ほっこりと優しい気分になる。
きっと、すべて上手くいってお付き合いが始まったとしても、彼はいとこのことを大切にしてくれるだろう。
ただ気がかりなのは、叔母のことである。
りんはいとこにそっくりな叔母の顔を思い浮かべた。叔母は美人で優しくて、りんとは共通している体質もあり昔から親身になって相談にのってくれていた。
飛行機で1時間近くも離れている場所に住んでいたというのに、何かあるたびに文字通り飛んできてくれた。
その悩みが解決してから数年は疎遠になってしまっていたが、感謝していることには変わりない。
お世話になっているから、叔母にもいとこにも幸せになってもらいたい。
しかし、いとこが幸せになっても叔母がそれを喜んでくれるとは限らない。
もし、倖くんの告白がうまくいって叔母さんが悲しむようなことがあったら、いとこと一緒に説得しなくては。
りんはそう決意を固めると、手から滑り落ちかけているスマホを、ぎゅっと握りなおした。
会ってもらわないことには始まらない。
ここはあまり詳しいことは書かず、あなたのことを気になってる人がいる、とだけ伝えよう。
いとこはもう成人しているいい大人だ。
みなまで言わずとも、いろいろ察してくれるだろう。たぶん。
りんは再度スマホに指をすべらせる。
その人差し指が少しだけ震えているのに気づき、苦笑した。
気持ちを伝えるって怖いことなんだ。
こんなことでは、自分のときの告白なんてできないのでは。いや、そもそもそんな機会が果たして自分にあるだろうか……。
思わず自虐に走ってしまいそうになった気持ちを慌てて立て直し、自分なりの精一杯の文章を打ち込む。
うまくいきますように。
願いをこめて送信すると、スマホを横に投げ出す。
倖と仲良くできるのもあと僅かの間かもしれないと思うと、少しだけ胸が痛くなった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「お、おはようございます、倖くん。」
「おう。」
翌朝教室に入ってくるなり、倖はりんのところへと一目散にやってきた。
……犬ではないが、本当に、一目散に、という表現しか見あたらないような動きだった。
そうして期待に満ち満ちた瞳で見下ろしながら、どうなった?と倖らしくもない小さな声で聞いてくる。
「あの、今朝方返事が来たんですが、連絡先を教えるというよりも、会いましょう、って。」
「……は?」
倖は目を丸くして気の抜けた声を出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます