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「……フ、フラレルってことはですよ、倖くんがいとこに好意を持っていて告白的なことをしたいと、そんなとこですか?まさか?」
汚れた机を拭こうとウェットティッシュを取り出すと、倖も自分の鞄から同じくウェットティッシュを取り出す。りんを制して倖はキュッキュッと机を拭いた。
「まさかって何だ、まさかって。失礼だな。俺が告白したらいけないってのか。」
声を潜めながら、ついでに眉も顰めながら抗議してくる。
「したらいけないとか、そういうことじゃないです!……倖くんのイメージ的には、するよりされる側?的な?それに、まぁ、好みは人それぞれ、ですし……。」
中断していた食事を再開するべく倖はアンパンマンのパンを取り出しかぶりついた。
「珍しいですね。菓子パンなんて。それ、中身何ですか?」
「ん、チョコ。売れ残ってたから。じゃねーよ。聞き捨てならんぞ。好みは人それぞれ?……怖いこと言うなよ。……よし、一個聞いていーか。」
りんもようやくフォークを手に唐揚げを頬るとジェスチャーで、どうぞ、と示す。
「あのさ、お前のいとこって、かわいいよな?」
「かわいい、ですか?……かわいい?うーん、かわいいって、いうよりは、わたしにとっては、かっこいい、の方がしっくりきますかね。」
倖はごくんとアンパンマンパンを飲み込むと不思議そうな顔をした。
「かっこいい?かわいいの間違いじゃないのか?……いやいや、それこそ見る人間によるのかもな。そういうのって。好みの話じゃないが、人それぞれってやつ?」
ソーセージを口に運びながらりんも頷いた。
「……そうですね。そうかもしれません。私は親戚という目で、倖くんは好意を持っている目で見ているわけですからね。お互いにフィルターがかかった状態で見ているのかもしれません。」
「だな。……あー、そういや、その、連絡先ってーのは、いつ教えてもらえるんだ?……今すぐにでもいーぞ、俺は。」
半分になったアンパンマンを両手でもじもじと弄びながら、倖が照れたように言う。
「あ、それなんですけど、ちょっと待ってもらってもいいですか?一応いとこにも教えていいかどうか確認してからにしようかと思って。」
明らかに落胆した表情で倖がこちらを見る。
「まだるっこしいなぁ。ぴゃっと教えてくれりゃーぴゃっと自分で連絡取り合うのに。」
「よく考えたら、教えた後で叱られるのも嫌ですしね。」
「……しゃーねーな。待ってやるよ。」
「ありがとうございます。……ん?何か私がお礼言うのっておかしくないですか?」
機嫌よくパンをがっつきはじめた倖を横目に、りんはご飯をパクリと口に入れる。
「おかしくはない。まぁ、でも、言ってやってもいいぞ。さんきゅっ!」
余程嬉しいのか妙なテンションの倖に眉を顰めながら、どういたしまして、とりんは返した。
「……そうだ。今日はお出かけやめときましょうか。」
「だな!あ、家まで送ってやろか?」
「いえいえ、ちょっと、考え事しながら帰ろうと思うのでひとりで大丈夫です。」
「そうか、でもまぁなるだけ早く帰れよな。何だったら早退してもいーくらいだ。」
「しませんよ、早退なんて。」
りんは口の中のものを飲み込むとパックのオレンジジュースに口をつける。
いとこに何と切り出そうと考えながら、りんは軽くため息をついた。
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