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で、でかい。
倖から借りた体育着は、思いのほか大きかった。
倖の体型はすらりとしていて華奢に見える。
なので、りんが着ても少し大きいくらいかな、と思っていたのだが、予想以上に大きい。
「でかいな。」
ハーフパンツがずり落ちないよう手で掴まえながらりんがそろりと更衣室を出ると、腕組みをして待ちかまえていた倖にそう言われた。
「ですよね。」
りんはがっくりと肩を落とした。
手を離せば脱げてしまうようなハーフパンツを履いて授業を受けるより、まだ制服の方がましな気がする。
「……いや、ちょっと待っとけ。」
再び更衣室に戻る倖を見送り、もう制服でもいいかな、と投げやりな気持ちになりながら倖が消えたドアを見つめてりんはため息をついた。
数分後、戻ってきた倖が手に持っていたのは数本の輪ゴムだった。
「これで縛っちまえばいんじゃね?ちょっとはましに、ならないか、と。」
何本か一緒にして結べば強いんじゃないか、と言いながらりんの背後に回り込み、体操着の首回りを後ろで結びだした。
「おら、ズボンも結べ。」
差し出された輪ゴムは3本。
これで結ぶのか、と戸惑いながら言われたとおりにズボンのウエストを結んだ。
「よし!なかなかいんじゃね、と。……うーん、ま、制服よりましか?」
「ホントですか?こ、これ、制服の方がましじゃないですか?」
「んなことはない。おまえ、汗びっしょりの制服で次の授業受けるつもりか。」
「た、たしかに。でも、大分みっともない気がするんですが……。」
「みっともないかみっともなくないかと言われれば、みっともないかもしれん。でも、大丈夫。もう見慣れた。」
「いや、倖くんが見慣れてもしょうがないって言うか、て、どこ行くんですか。」
「運動場だよ。もう予鈴なるぞ。」
「ゆ、倖君、私やっぱり制服に、」
「んな時間、もうないな。」
倖の言うとおり次の瞬間には校内に予鈴が鳴り響く。走るぞ、と倖に手をひっつかまれてりんは引きずられるように走った。
運動場へは玄関を通り抜ければすぐなのだが、更衣室が何故か3階にある。3階から階段を下りなければ行くことができないので、倖と2人、転びそうになりながらその階段を一気に走り降りた。途中で体育の香取先生を追い越すと、玄関をぬけ運動場へと駆け込み、すでに整列しているクラスメイトの一番後ろにすべりこんだ。
りんは大きく肩で息をしながら、先生がくるまでに何とか息を整えようと胸を押さえた。
横を見あげれば、倖は何事もなかったように静かに並んでいる。じっと見ていても息を乱している様子さえない。
私がこんなに息が切れてるのにずるい、これが体力の差というものか、と納得はするけれど、やっぱり何だかずるい。
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