6
「昨日は悪かったな。」
ゲーセンで遊んだ翌日。
登校して着席したりんの目の前に颯爽とやってきて仁王立ちになった倖は、偉そうにふんぞり返って謝ってきた。
あ、やまってるよね?これ。
あまりのふんぞり返りようにそれほど謝られている感じがしない。
りんは膝の上で指をもじもじと動かしながら倖をちらりと見上げた。
そう。
りんも、倖に謝らなければならないと思っていたのだ。
しかし、こんなにすぐに直球で先に謝られてしまうとは思わなかった。
昨日、勢いとは言え倖のことを貶すような傷つけてしまうようなことを言ってしまった。
人から金銭を巻き上げたことがあるだろう、なんて。
なんであんなこと言ってしまったのだろうか。
昨日から1人後悔しては、どうやって謝ろうかと悶々としていたのだ。
しかしこれは逆にチャンスかもしれない。
この倖の行動力にあやかってこのままついでに謝ってしまえっ、とふんぞり返ったままの倖を見上げ口を開きかけた、そのとき。
倖の後ろの方でガタンと大きな音がした。見ると吉原君が精一杯椅子を前に寄せ縮こまっている。吉原君はりんと同じ眼鏡の男の子、大人しさではきっとクラスNo.1だろう。
吉原くんは倖に遠慮?して精一杯椅子を前にひき、なんなら机も前に寄せ始めている。ちなみにその前の席にも生徒が座っている。吉原くんほどではないにしろ、こちらも割と大人しめの鎌田くん。後ろの席の吉原くんががたがたと机を寄せてくるので何事かとしかめ面で振り返る。
吉原くんはそのしかめ面に気圧されてピタリと動きを止めて板挟みになった。
心底かわいそうに思う。
倖はといえばそんなことは一切意に介さず、微動だにしない。
「倖くん、あの、邪魔なので、とりあえず横に来てもらえませんか?」
「邪魔か?」
倖はその一言をりんではなく後方へ顔だけぐるりんと向け、背後の吉原くんへと言い放った。
かわいそうに吉原くんは、ふるふるっ、と怯えた子犬のような仕草でそれを否定した。
心底かわいそうに思う。
「邪魔じゃないってさ。」
「え、いやぁ、そんな強制的な、」
「それより、さっきの聞いてたか?悪かったって俺が言ってんだけど?」
さらにふんぞり返って倖が再度謝罪のごり押しをしてきた。
「……いえそんな、私も、急に帰ってしまって、すみません。」
違う、謝りたいのはこれじゃなかった、りんは焦って言葉を探すがそれよりも先に倖が口を開いた。
「だよな。もっと謝れ。……それはそうと。」
倖はぐっと屈みこみりんの耳元に口をよせる。
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