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がさがさとかさばる袋を抱えて慌てて後を追おうとする倖に、しつこくぶら下がっていたみぃちゃんが、いいじゃーん私とあそぼー!と更にくねくねしだした。
「だぁっ!おまえまじでどけ!邪魔!去れ!」
ギンと睨みつけキレてみせると、ひどーいあたしサルじゃないもーん、とべそべそ泣きながら去っていった。
袋3つを抱えなおし、ゲームセンターの出入り口付近を見るとおさげがちょうど走って出て行く。
数歩走りかけて、倖は足を止めた。
無理だ、この荷物じゃ追いつかねぇ。
一瞬捨てていこうかと頭をよぎるが、りんが楽しそうに取っていたのを思い出し何とか踏みとどまる。
仲良くなるどころかケンカしてしまうとは。いや途中まではいい感じに仲良しだったはずなのにな。
おれも、意外と楽しかったし。
ゴンッ。
倖はガラスに額を押しつけ脱力した。
何だかすげー疲れた。特に最後のみぃちゃんのせいで。
ガコン。
足元で何かが落ちてくる音がして、倖は薄目をあけて取り出し口に目をむけた。
すると、半端に飛び出したパンダと目があう。
もしかしてさっきの、ゴンッ、でか。
確かUFOキャッチャーって、揺らしたらダメですよ、じゃなかったか。
正面のガラスには揺らすなの貼り紙はしてあるものの、幸いなことに店員が周辺にいる気配はない。
ラッキー。
倖はいそいそとパンダを取り出すと、かるく一撫でする。なめらかでずっと触っていたいほど気持ちのよい毛並みだった。
そういやこのパンダ、俺でも取れるんじゃないかって、あいつが勧めてたやつじゃね?
思いがけず取れてしまった。
最初に取った景品の袋を両手に下げ、それに入らないパンダは小脇に抱えて外に出る。
もしかしたらその辺で待ってないかと思ったのだが、あたりにりんは見当たらなかった。
倖は周辺を行き交う人々の顔をぼんやりと見ながら、友人たちの話しになったときのりんの反応を思い出していた。
複数の友人達と遊んでいて、りんだけが金を出すって、それっていじめだったんじゃないのか?
まぁ、そんなに驚きもしないが。あいついじめられっ子感あるし。
とりあえず明日何となく謝ってはみるか、と駅の方へと歩きだしかけ、倖はハタと気づいた。
これ、おれが全部持って帰るのか?
やたらとリラックスしたくまに、青い猫、エロお姉ちゃんに巨大ポッキッキーに巨大パンダ。
部屋でめちゃくちゃかさばるじゃねえか。
と、その前に家にたどり着くまでの道中を思い、倖は重いため息とともに帰路についた。
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