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「それって仲良く遊んでたんじゃなくて、たかられてたの間違いなんじゃないのかぁ?」
冗談で軽く言ったつもりだった、の、だが。
次の瞬間弾かれたようにりんが顔をあげた。
「いいんですよ、私が出したくて出してたんですから!他に、お金、使うこともないし、」
泣きそうな顔のりんを見て倖はやべっ、と息を飲む。これでも空気読むのは上手いほうだと思っていたのだが、地雷を踏んだかもしれない。
「あー、やっぱ今のなし、わかっ、」
「倖君だって、そういうこと、したことあるんじゃないですか……!?」
「……何だ、それ。」
倖がくるりと振り向き、りんを睨みつけた。その視線に怒気を感じてりんはびくりと体を震わす。
「なんだよ、それ。俺がこんな格好してるからか?バカじゃねーの。人の金巻き上げたことなんかないっつーの。」
おまえのクズ友と一緒にすんじゃねーよ、と倖は吐き捨てた。
りんは俯き震える声で、クズなんかじゃないです、とようやく、そう倖に反論した。
思っていた以上にりんの声は小さく、か細かった。
「……ちゃんと、友達、でした。」
喘ぐように、りんは言った。
そんなりんの様子に倖は大きく息をつくと、この話しは終わったとばかりに、わかったわかったと言いながら巨大ぬいぐるみが入った袋を持ち上げた。
こいつもこんなだし今日は帰るしかねーよな?
まったく。
「おい、今日はもうかえ、」
「あぁーっ!倖じゃーん!」
倖がりんに帰宅を促そうとしたその瞬間、背後から倖を呼ばわる甲高い声がゲーセン中に響いた。
「え、まじまじ、久しぶりじゃない会うのーっ!」
と、倖の右腕にぐわしっと黒髪ボブの割とかわいい女子がしがみついてくる。
倖はそれを見下ろしながら眉間にシワをよせて考え込んだ。
重い、そして誰。
「なぁ、おまえ、誰だっけ、」
「え、ひっどーい!まじひっどーい!みぃちゃんだよぉみぃちゃん!」
そう叫ぶとみぃちゃんは、覚えてないのぉー、と腰をくねらせる。
黙ってれば清楚系でもてそうなのに。惜しい。
「ねぇねぇあそぼ?」
みぃちゃんは目をキラキラさせて腕にぶら下がり、上目遣いで倖の顔を覗き込んできた。
「遊ばねーよ。俺今忙しい。」
「えーっ、忙しそうに見えなーい!見えな~い!てゆーかー、まさかー、これと遊んでるとか言わないよねー?」
明らかに見下したような目で見てくるみぃちゃんに、りんはにっこり笑むと、わたしもう帰りますんで、とくるりと踵を返した。
「ま、まて、おれも、か、かえ、」
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