「そういうもんなんです。誰かが散々動かしてくれてるやつがいいんですよ。で、店員さんが定位置に置きなおしてしまう前に手を出すのがコツですかね。まぁ、取り方にもいろいろコツというか攻略法があるんですが。」

 ほぉ。倖は素直に感心してUFOキャッチャーに目をやった。りんが使ったお金は今のところ1200円。ゲットした景品4品。単純に割って1個当たり300円。

 今まで散々1000円も2000円も1つの景品につぎ込んでたのがばからしく思えてくる。

「なんか、お前がやってんの見てるだけだったら簡単そうに見えるんだけどな。」

「簡単ですよ?」

 りんは薄笑いを浮かべて倖へと視線を返すと、次の台を物色しはじめた。

 面白くねぇ、全然面白くねぇ。

 このままあいつに花を持たしたまま店を出るのも面白くねぇ。

 倖はふと思いつきちょいちょいとりんを手招きすると、すぐそばにあるカーレースの筐体を指し示した。

「UFOキャッチャーだけじゃなくてこういうのもやろうぜ。」

「え。」

 途端に不安そうになるりんに倖はにんまりと笑いかえした。

「いいからいいから。俺がおごっちゃる。」

「……わかりました。」

 りんはしぶしぶ倖の隣の筐体に座るとハンドルを握りしめた。

「あ、あのですね?私こういうのは基本、苦手でですね……。」

「はいはーい、やるぞーっと。」

 倖がちゃりんちゃりんと100円玉を入れると心の準備をする間もなく、筐体からはレディ、ゴーという機械的な声が聞こえてきた。

「わっはっはっは!」

「やぁ、ちょっと待ってくだ、ま、まって、何で人が飛び出して、!」

 込み合ってきたゲームセンターの片隅で奇声をあげながらカーレースをする2人に周囲の人は奇異の目をむけるが、とうの2人はそれに気づくことなくゲームに夢中になるのだった。


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