りんがりんなりに奮闘して葉っぱも花も書き終え、授業も終盤にさしかかったころ、ようやく手紙がまわってきた。今度は少し大きめの紙だ。

 さぁ、とっとと済ませてしまおう。

 いったい何が聞きたいのか。

『おまえのいとこに興味がある。連絡先など教えてもらえたら助かる。』

 ……。

 きょうみ……?

 興味がある、て、どゆこと?

 まさか、ケンカ、とか?

 どこかで揉めて、私のいとこであることを突き止めて、探し出そうとしている、とか?

 いや、でもなぁ。

 とにもかくにも。

 いとこにものすごーく興味があることはわかったが、連絡先や住所を教えろとなると、話は早い。

『すみません。連絡先とかいう話でしたら、私の一存で教えてしまうわけにはいきません。個人的なことでもありますし……。申し訳ないです。』

 大きめの紙を小さく小さくたたんで、さっと迫田さんにパスした。

 次の瞬間、授業終了のチャイムが鳴り響く。

 セーフだ。

 危なかった。

 迫田さんが席をたってしまったら、自分で直接、倖に手紙を渡しに行かなくてはならない。

 きりーつれー

 日直のやる気のなさそーな号令とともに頭を下げる。

 その視界のすみで倖の机に手紙が置かれたのがチラリと見えた。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ねぇねぇ、林田さん!」

 緊張のお手紙タイムが終わると、またもや後ろから肩を叩かれ迫田さんに話しかけられた。

 りんは倖が見えないように振り返り、そっと席の方を伺う。

 倖は席にいなかった。

 よかった、とほっとしつつ、ようやく迫田さんに向き直る。

 迫田さんはショートボブのきりっとしたきれいな人だ。あまり物怖じしない性格なのか、転校してきてすぐに話しかけてくれたのも迫田さんだ。その外見からクールそうに見えるのだが手紙のやりとりの時の対応を見ると意外とミーハーなのかもしれない。今も妙にキラキラとした目で見つめられていた。

「あのさ、あのさ、もしかして、倖君とつき合ったりとかしてるの??」

 まさかの一言にりんの口がポカンと開いた。そうか、あのやり取りは親密そうに見えたということか。

「……まさか!つきあってないよ!」

「えー、そうなの?なんか何回も手紙回してるし、つきあってるのかなー?て。」

 キラキラした笑顔で返してくる迫田さんに苦笑する。確かにそう思われてもしかたないかもしれない。

「手紙は、私もびっくりしちゃって、」

「ホント!倖君、あんまりクラスのみんなと仲良く話してるとこ見ないからさ。隣の組の柴田君くらいかな?仲良さそうなの。」

「そうなの?」

「そうそう。このクラスになって半年以上たつけど話しできる人なんて、いないんじゃない?私もこんな性格だから何回も話しかけたことあるんだけど、もーガン無視!林田さん転校してきたばっかですごいと思うよ。あ、りんちゃんて呼んでもいい?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る