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倖は金髪だしピアスもしてるし、いかにも不良然とはしているけれど、思い切り制服を着崩しているわけでもなく真面目(?)に毎日登校してきていた。
だからといって接点らしい接点もあるわけもなく、先週までは会話はおろか目すらあったこともないのに。
何か気に障ることでもしてしまったのだろうか。
わたし、なにかしたっけ?
空調の効いた教室で、暑くもないのに汗が流れたそのとき、右肩のあたりを何かでツンツンとつつかれる感触がしてりんは後ろを振り返った。
すると後ろの席の迫田さんが小さい紙片をりんの方へとそっと差し出し、小声で囁いた。
「倖君から。」
「えっ!?」
思わず大きい声を出してしまい迫田さんにしーっと窘められる。慌てて前をむくと先生がこちらを睨んでいた。
最近よくにらまれるなぁ。
すみません、という思いを込めてりんはぺこりと頭を下げた。先生は咳払いをひとつすると、それ以上咎めることもなくまた黒板にむかう。
りんはドキドキと弾む胸を押さえてため息をつくと、手の中の紙片に視線を落とした。
倖君から。
なぜ。
最近睨まれていたのは何か言いたいことがあったからだろうか。
うーん、告白?とか?
倖君の顔を思い浮かべる。彼はかっこいい。イケメンといわれる部類であることは間違いない。ただ、少々髪の毛が奇抜な色であるだけで。
彼の横に並んでいる自分を想像する。
ない。
完全に、ない。
自分の見た目はもさいのだ。そんな私に告白なんて、ないない。いや、そんなことを検証するまでもなく、授業中に手紙まわして告白なんてするわけがない。
では、何だろう。
こんなに開けるのをためらう手紙は初めてだった。だからといっていつまでもこうしているわけにもいかないので、勇気を出してゆっくりと少しずつ開く。紙は教科書の端っこを破いたもののようで、25と書かれた数字の上の方に予想以上に丁寧な文字で『いとこはいるか?』と書かれてあった。
……?
いとこ?
いる。
いとこは、いる、けど。
なぜ、そんなことが聞きたいのか。
謎は深まったけれど、とりあえず数字の下のスペースに『います。』と書いた。
……これ、まわさなきゃいけないんだよね?
こ、こんな変な目立ちかたはしたくなかったのに!
周囲の好奇心いっぱいの視線の中、先生が黒板を向いているタイミングを見計らって後ろの迫田さんの机にそっと紙片を置いた。
「倖君にまわしてくれる?」
小声でそうお願いすると、驚いたような迫田さんと目があった。
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