第3話 人里

 人間の住むことのできるエリアで最も栄えた街。ゴールデンロープ。


 そこではある話題で持ちきりとなっていた。


「聞いたか!? あの古の森から人型の男が出てくるのを見たって話!」

「ありえねえだろ!? 魔族ですら入るのを避けるって聞いたぜ!?」


 戦いを好む冒険者ですら避け、人間を圧倒する力を持つ魔族ですら目を逸らす『古の森』

 そんな危険な森から帰還した者がいるらしい。




 四畳ほどの質素な部屋。机に座る男二人と、それを厳しい目で睨みつける男三人。


「この街は今、あなたの話題で持ちきりですよ」


 とある男、そうそれは、俺、こと、耐忍野大好である。

 数々のドM業の結果、女神に見捨てられ、その後、十数年間の幸せな日々を終え、人里に迷い込んだ子豚ちゃんである。


 と、そんな俺は今、街の公安にとっつかまって取り調べを受けていた。


「あなた、名前は?」

「耐忍野大好だ」


 名前を聞いて、取調官の目の前に、何かウィンドウのようなものが浮かんだ。


「お前の出生記録はない。嘘をついているな」


 ……嘘なんか一切ついてないのに、疑いの目で見られるなんて、これもまた悪くないな。


「訳あって、親もいない。俺はあの森で生まれてあの森で育った」


 すると、何やらコソコソと話だした。俺の処遇をどうするか確認しているらしい。

 しばらくしたのち、一人が丸い球のようなものを差し出し、


「この水晶に触れてみろ」


 と言ってきた。迷わず俺は手をかざす。


「なんだこれは!?」「信じられん……」「まさかほんとにあの森で育ったというのか!?」「流石に、この能力値は……信じざる追えないだろう。」


 また能力値か。そういや女神さんも教えてくれなかったな。


「能力値ってなんだ?」

「能力値ってのは、人間の才能とレベルに依存する力のことだ。レベルを上げれば上がるが……お前、何者だ? 唯一測定出来た『攻撃』の項目が常人の10倍だぞ」


 へぇ、俺は攻めじゃねえから一回も攻撃したことなかったけど、それでもそのくらいはあるんだな〜。


「お前の身柄はうちが預かる。魔王討伐の力になれ」

「は、はいぃぃ」


 久々の命令口調はたまらんなぁ!!


「おい、ちょっとまちな」


 背後からしゃがれた声が響き、振り返る。

 動物の毛皮のようなものを被り、腰には巨大な剣をつけた大男が立っていた。


「そいつは俺たち『冒険者ギルド』が受け持つことにした」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界がマジで幸せすぎる件 @サブまる @sabumaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ