第2話 『絶頂解放』

 なんてことだ。


「バブゥ」


 目を覚ますと、背中にフカフカな感触、頭上には木々が生い茂っている。

 そして、声も出せなければ体も自由に動かない。


「すまん、世界の外から注入した魂って、順番待ちしないと正常に人間の子供として生まれんのや」


 頭の中でさっきの女神がそういう。つまりどゆこと?


「大体察してるかもしれんが、今お前は幼児で、親もいない、しかも森の中だ」


 なんと。それは転生失敗というやつでは?


「ち、違うわい! まぁ、安心してくれ。良くも悪くも前の世界の常識は通じないからな」


 なるほどな。俺は赤ちゃんに転生したらしい。だれの子でも無い赤ちゃんに。

 SM女神が言うには、HPというものが存在しており、この世界ではそれが尽きると死ぬとのこと。

 んで、転生前に言っていたスキルのことだが、


『絶頂解放』『魅惑の喘ぎ声』『チアーアップボイス』『鉄壁』『惹きつけ』『ダメージ変換』


 という、よくわからないものを授けられていた。


「その森、その世界では一般市民はだれも近寄らないレベルのやばいところだから、多分すぐ魔物が来るぜ。どうだ。私のスパルタ教育にビビったか!?」


 まぁ、まずまずだな。一応合格点はやろう。

 ところで、このスキルとやらは、どう使うんだ? 


「まぁ、やってみればわかるさ」


 つまり放置プレイ? なかなかわかってるじゃないか。


 女神がギャンギャン騒ぐ片隅で、犬の唸り声のようなものが聞こえた。


「人間は死んだ時の苦痛によってその後の能力値が変わるんだ。金的蹴りは人間の感覚の中で最も凄まじい苦痛だから、お前の能力値はとんでも無いことになってると思うぜ」


 能力値ってのはよくわからんが、つまりあれだな? 今みたいに強そうなやつにカジカジされても平気ってことか?


 みれば、馬鹿でかい狼のような動物が俺のことを噛んでいた。


「痛く無いのか!?」

「バブゥ」


 ゾクゾクするな。しばらくカジカジされた後、自分の体の中から熱い何かが湧き上がってくるような感覚を覚えた。


「それ! 今だ! その熱い衝動を吐き出すんだ!」

「あ、あぁぁあーーーーーーーーー!!!!!!!」


 当たりが一瞬光ったと思えば、大きな爆音で地面が揺れ、砂煙が舞い上がっていた。


 なんだこれ?


「今のが『絶頂解放』のスキルよ。溜まったものをエネルギーとして外に放出できるの。慣れればいろんな形でエネルギーを放出できるわ。今回は、円形爆発だったみたいね」


 そうなのか。すごい満足感だ。


「えぇ、半径1キロ全て吹き飛ばしちゃってるものね。人がいなくてほんとよかったわ」


 驚きといった声音の女神様。


 すると、周りから光が集まって、俺の周囲を包み始めた。

 なんだこれ!?


「レベルアップよ! 魔物を倒すと経験値をもらえるの! それを集めることによってあなたはどんどん強くなる!」


 なるほどな、どうりでエネルギーに溢れてくるわけだ。


「そんな感じで、この世界のことどんどん掴んでいってね! それじゃ!」


 なるほど、レベルアップしたとしても体は変わらないまま。そして焼け野原に赤子を放置。


 女神さんもわかってきたじゃないか。

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