第5話 氷山にて……。②

 あ……ただいま、戦闘しております皇すめらぎ 雅人まさとことマサトです。


 美人の彼女と共に旅に出た私ですが、ここに来て人助けとモンスターと戦う事になろうとは……。


 ま、いずれにせよ襲われている所を見過ごす性格でもなく彼女もその様で助太刀致す!!となった訳です。


 彼女も、元騎士隊長さんではありましたが仕えていた国が良くなかった……お姫様を護った筈が危険な目に合わせたと強制解雇してしまったんです。なんと理不尽でしょうか……でもそれがきっかけで、彼女は国を出て私を頼ってくれた……龍に転生したおっさんがですよ、こんな奇跡的な出逢いが待ってるなんて誰が想像出来ますか?


 いや、分かりませんけど。




 で、噂と言うものは広まるのが速い!私達を捕獲するクエストが出されていたんです!


 あの……お尋ね者じゃないんですけど。懸賞金かさ上げされてるし……私が欲しいくらい。




 でもね、他の傭兵や騎士やハンターなどといった人達は次々と受注してましたけど、一部は違ったようでクエストに関係無く動いた人達が居ました。


 今、助けに入っている人達がそうなんですけどそれどころじゃなくて、後で聞いた話です。


 それで、彼らを避難させて私とミネルザで牙皇鯨がおうくじらガザルホエールとにらめっこしてます。


 お互いに隙を窺ってますが、じっと私の方を見つめてきました。


 でもね、以前にお話した通り白銀の体躯に翼の膜に赤い紋様が入った姿をしてます。私の……属性ってナニ!?


 今までは、爪や体当たり等で何とかなりましたけどブレスや属性攻撃は試してません。確認する余裕が無かった!?いや、確認しておくべきで私がそこまでしてなかったのが原因です……がくっ。




 う~ん、私の属性って何だろう?大地の属性!?それとも水の属性かな!?いや、火の属性!?待て待て風の属性か!?後は……雷属性や氷の属性、毒や麻痺や爆発……さっぱり分からん。


 これじゃブレスも放てない!参ったな……と言って彼女に聞いたところで分かる訳も無し……。




「マサト……。」




 睨み合ったまま、動く事をしていなかったのでミネルザが剣を構えつつも心配してくれてました。


 属性が分からないと使いようが……。ん!?ガザルホエールが口を……アギトを開いた!?やばいな、ブレスか?


 こちらに向かって大きなアギトを開きました!息を大きく吸い込んでます!どうしたら……。




「マサトっ!ブレスがっ!!」




 か、考えがまとまらないっ!ミネルザが危ないっ!咄嗟に翼に力を込めてミラルダを庇うように囲います!それと同時に1個20㎝ぐらいの矢尻の様な形をした氷が無数にブレスの勢いと共に襲い掛かって来ました、私の翼に直撃しますっ!!


 マシンガンのような弾が壁に直撃するような無数に音がして、静まりました。良かった彼女は無事の様です。




「マサト……。」




 彼女が心配そうに私を見つめてくれます。その優しい所も好き……こ、こほっ。


 で、驚いてるのはガザルホエールの方。私の翼でブレスを凌いだものですから、何が起こった!?と言う感じに硬直してます。


 私も翼を確認すると、今までの翼と違い硬度が増してます!しかも、あれだけの矢尻がぶつかったにも関わらず全くの無傷……凄い……今の所翼だけ強化してます……あ、戻った……。


 えっと……この属性って……ナニ!?さっき思ったのとは全く別ですが!?まさか、考え付いた属性全部使えるとは言いませんよね……いや……もしかすると……。




「ありがとう♪やはり私が好きになっただけはある……♪」




 きゃあ!ミネルザ……嬉しい事を……私も好き……♪頬ずりしよ。私は彼女に頬ずりしてました。




「ちょっ……マサトっ……ばかっもうっ♪」




 いやあ、その照れる仕草も良い……なんて可愛いんでしょ♪ダメ……私の方がのめり込んでる……♪


 はっ!?そのイチャぶりに何故か余計に怒ったガザルホエールさん……。


 でも、私も思い付く限りの事をやってみます。まずは、炎のイメージ……お!?アギトの中に炎が……凄いな熱くない……このまま相手に吹き付ければ良いのかな?よし、やってみよう!試してる暇はないし。私は、炎をアギトに溜めたまま鼻から息を吸い込んで、相手に向けて炎を吹き付けます!


 よし!出た!これだ!炎が柱となって、横一直線にガザルホエールに向かって行きます!しかしながらガザルホエールも即反応してアギトを上空に向け、先程より数倍大きめの氷の矢尻を吐き出して行きます。


 一体何を……。そして自身の目の前に積み重なって氷の壁が……。マジですか!そんな分厚い即席の壁を造り出すなんて……。私のブレスが直撃しますが、表面をいくらか溶かしただけで残ってます!なんて分厚い壁ですか!一応龍のブレスですよ!防がれるって有り!?


 炎が封じられるなら……効きそうな攻撃属性となると……やってみるか、雷属性!でも落雷!?雷雲を造る!?出来るかな?まあ、やるだけやってみますか。私は雷をイメージしてみます。


 おっ!角が光り出した、それに呼応して上空に雷雲が立ち込めて来ます。その中を小さな稲妻の姿が見え隠れしてます。


 よ~し、大きいのを一つ落としてみよう。私はガザルホエールの胴体に目掛けてイメージを強くします。


 お、おおおっ!!落ち……た……。




「ギャグヮァァァッッ!!」




「マ、マサト……!?凄い……。」




 あの……落とした私が一番驚いてます……。細い雷柱が落ちるものと思ってたものですから、まさか直径6m程になるなんて……。あ、あははは……ホエールが焦げて煙が出てます。完全に行動不能になってますね、一先ず一安心。


 でも私の属性ってチート!?一体何の属性ですか?


 いえね、確かに元の世界でゲームに出てきた龍で、4つの属性を持った種も居ましたけど。


 でもファイヤーブレスだわ、落雷させるわ、翼を硬化させるわで、あ……回復もあったか。


 いくら古来より龍は強いとは言っても、強すぎるでしょ!ミネルザを守る為には有難いですけど。


 えっ!?ミネルザ!?ずっと私を見つめてウットリ顔……て、照れるっ!


 そ、そんな悩ましいお顔で……嬉しいです………テヘッ♪




「なんて奴らだ……。」




「捕獲するのは難易度が相当高いな。」




「そうね、何人止められる人間が居るかしらね?」




「だが、私の想定していた通りのようだ。少なくとも俺達人間には敵意は無いようだ。」




「確かに……どういう事ですかね?」




「さあな、そこは当人達に聞いてみるしかあるまい。」




「来たわ。」




 ガザルホエールが動かない事を確認すると、私とミネルザは騎士達の居る方へと歩いて行きました。


 緊張感がひしひし来ます。私がパクつくとでも思ったんですかね。




「皆無事だった?ガザック。」




「ああ、済まない助かった。まあ、1人殺られてしまったがな……。まだ彼奴と相対してなら良い方だろう。」




 そうですか……1人間に合いませんでしたか……。


 負傷者も居る様ですけど、ましな方ってこの鯨さんどんだけ凶暴!?




「ちょっと待って!団長の知り合いなの!?」




 傭兵装備で剣を2本クロスして背中に装備する女性が、驚いてガザックさんに問いかけてました。




「そうだ、彼女は別の隊ではあったが俺と同じ元騎士団長だ。」




「えっ、彼女が!?」




 あらあら、どんな人物だったのか聞いてないんですね?とは言っても私の事は分からないでしょう。私自身でも知らない事だらけです。




「でも、団長クラスの者がどうして……。」




「ああ、知らないのも無理はないか……騎士団の極一部の者しか知られていないしな。」




 ほう、そんなものですかあの理由で団長をクビになったなんで、賛否両論でしょうし国民の反感を買うわけにはいかないしね。




「まあ、話せば長くなるが……俺もあの決断はやりすぎだと思っている。」




「ガザック……。」




 成る程、反対派もいたんですね。通りで捕まえようとしない訳です。




「私も同感です!」




「ラ、ランド……、ねぇ、教えて!?どういう事なの?」




「いや、それは……。」




「私は、姫を危険に晒したからだ。」




「えっ!?」




 ミネルザがガザックさん達に気を使って、自身から言い始めました。




「私は、警戒しているつもりでいた……サイクロプスの急襲を許してしまった……私が囮になって馬車から魔物を離すことは出来たが、姫にはさぞや怖かったろう。それが原因で騎士団を除隊された……。」




「そんな事が……。」




 エレザと呼ばれる女性の傭兵は複雑な顔をしていました。確かに罰則はあったとしても除隊までは……?と言いたげな顔です。私も、そう思いましたから。




「しかし、今は自由の身。彼に会いに行く事が出来た……命の恩人にね……♪」




 い、いやぁ、命の恩人なんて……私にはミネルザと言う彼女が出来た事に大感謝なのに……♪♪




(むしろ私にとっては嬉しいよ、こんな美人の彼女が出来るなんて奇跡だからね♪♪)




 文字を書くとミネルザが顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまいました。




「……ば、バカ……あ……ありがと……♪♪」




 きゃあ!良いっ!!その照れた横顔も良い!生きてて良かった……。


 私達がお惚気ている間に、騎士団の人達や傭兵のエレザさんが驚愕していたのは、私の文字を見たから……。




「し、信じられん!」




「人語を理解している!?」




「とんでもないわ!まして、文字まで書けるのよ!」




 驚くのも良く分かります。人語を理解して文字まで書ける……そんな龍が居るなどとこの世界では初なんでしょうね、人語が分かる龍なんて居ないと思っていたようです。


 あ、そうだ…ランドさんでしたっけ?足を怪我してますね、どれどれ……私は彼の傍に近寄ります。 


 みんな驚いて緊張感が伝わってきます……ミネルザだけは分かってくれているので驚くことはありませんが……。彼の怪我をしている足に左前脚をゆっくりかざします……ミネルザの時の様に彼の足の傷が癒えていきます。




「そ、そんな……!?」




「凄い…………!?」




「い、痛みが……傷が……!?」




 完全に治ったのを確認すると、私も足を引っ込めました。ランドさんが立ち上がって足を動かして確認してます。良いようですね、復活と言ったところでしょうか。




「済まない、感謝する!」




 ガザックさんが頭を下げてきました。ランドさんや他の騎士団の人達も続いて頭を下げます。一先ず助かって良かったですね♪


 私も頭を下げてました……お互いに顔を見合わせて、ニヤリとしたのはここだけのお話……。




「みんな、この上の村に行こう。そこで一息つかないか?」




 ミネルザが、ガザックさん達を誘ってました。ガザックさん達も頷き返してきます。




「そうだな、そうさせてもらうよ。」




「で、あれはどうします!?」




 ん!?指さす方を見ると、黒焦げになったガザルホエールさんが……。


 あ、そうか!私が掴んで上がれば良いかな?早速私がホバリングでホエールに近づき両後ろ足でホエールを鷲掴みに……ゆっくりとそのまま上昇していきます。それを見届けて、全員氷の山道を登って行きました…………。




 ですが……、私達がその場を去った後氷の地面の中から姿を現す者が……。




「流石に氷の棺桶になるとこだったな……。」




 なんと!ガザルホエールに殺されてしまったはずの騎士の一人が、生きてたんです!!




「やられたふりをして良かったな、これで色々と報告できる……ククク済まんな、これも俺独自の仕事なんでな……。」




 わっ!?スパイですか?さっすが早っ!もう居なくなっちゃいましたよ!!でも、今の私達は全く知らない訳で……どうしましょう!?ってどうにもなりませんけど。


 今は何も知らない私達は村へと向かっているのでありました………………。


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