第4話 氷山にて……。①

 どうもです。転生前は皇すめらぎ 雅人まさと、転生後は龍になった私マサトです。そして、大事な私の彼女……。女性騎士で、マリンブルーのロングヘア―に女性用の銀色の防具と剣を愛用している、ミネルザと言いますが。しっかりしていて気の利いてくれる素敵な女性です。


騎士団を辞めさせられ、気落ちしていた時に私の事を思いだし、私のところに探して来たのだとか……。


私にとっては、この上なく嬉しいことで……でも、サイクロプスから身を呈して護ったというのに辞めさせられたのも可哀想……。


なんだか、複雑な気もしますがそのお陰でこうして奇跡的な出逢いをすることが出来た訳ですから深謝です。


しかし何度も言うようですが、”何故に”人間の時に知り合えなかったのか……。ぐすっ……。そこだけ名残惜しく。




私達は、傭兵や兵士達騎士団の動きを知る由もなく、氷山に向かって飛翔を続けていました。まずは落ち着ける場所があれば良いのですが。と言ってもそんな寒い場所なんて大丈夫でしょうかね?


で、やっと見えてきました氷山……。


このフィールドもいろんな大型の魔物が訪れる場所だそうです。しかも、当然の如く寒いし冷たい……。


この寒さ、彼女は大丈夫なのかな!?おおっ!気付け薬ですか、流石ですね。自身から氷山の裏側にと言い出したんですから、用意はしていたでしょうけど。いやぁ、私もゲームをしていた時はいろんなモンスターと対峙しましたし、その場所に対してもアイテムを欠かさなかった……。でも、今度は私モンスター側です、しかも龍です。下手をすれば傭兵や騎士団達に狙われる側なんです。アイテムが使える訳でもないし、怖いし、めんどくさいですハッキリ言って……。彼女を守る為ならば命懸けで頑張りますけど、やたらと戦い続けると言うのは、性に合わない。なので、やむ負えない場合を除いて人とも関りをもっていこうかと思います。勿論、魔物達ともです……。ダメですか……?


 龍に転生した今の私なら人間側の、魔物側のそれぞれの思いや、考え方がはっきりとは言いませんが、分かるような気がするのです。まして私たちの様に人や龍を越えて互いを好きになる……。お互いを慕って、お互いに守りたいと思う……。私にとっては今が幸せです。遅咲きのオッサンですけどね。大事にしたい……。あ、今は龍でした。


 ただね、人もモンスターもそれぞれ十人十色です。意気投合できる人と出来ない人、意気投合できる魔物と出来ない魔物。いろんな思いや性格や出来事が待っている……。それを受け入れつつ、彼女と歩んでいけたらなと思います。


 って!!くそ真面目にしんみりとした話をするなと……。失礼いたしました。おっさんになりますと、愚痴が多くていけませんね。現実に戻りましょうか。




 色々思いを感じつつ、ちょうど着きましたよ。マジですか!?間近で見ても巨大な氷の山がそびえたっている場所なんですね、ここ。広さは一つの島ほどあるでしょうね、周りは流氷に囲まれてます。


ミネルザさんの話だと、この流氷は移動することが無く融けないんだそうです。って、ここは南極か北極か!?氷の山が融けない訳です。しかも、これだけの氷点下ならね。天然の冷凍庫に入って我慢大会してるみたい……。


こんな場所に傭兵や兵士とか騎士団が来るんでしょうか?私には想像も出来ませんが、こっちに生息する魔物を討伐に来ることもあるんだとか。


まあ、ミネルザさんが気付け薬で寒さに対応しているところを見ると、まんざらでもないか……。警戒をしておかないとですね。


とりあえず、彼女を背中に乗せたまま地面に降り立ちます……。さすがに龍の私なので、ビビるんでしょうかね。小動物達がすごすごと逃げていきました。傭兵や兵士に対しては襲い掛かかる物もあるそうで、律儀なものです。で、周りを見渡しているとその山の麓に洞窟がありました……。更にミネルザがそこに向かって進んで行きます。




「この洞窟を抜けてから上に登る。村はその先だからもう少しだよ。」




私が心配しているのを気付いたんでしょう。ミネルザが、そこへ進む理由を教えてくれました。なんて優しんでしょ!おじさん感動!


そう促されて、一緒に洞窟の入り口まで来たわけですけど、なんと洞窟でかっ!!山自体もですけど、私が通れるってどんだけの穴ですか!?しかも貫通してるって……ほんとに氷だらけ……洞窟の壁や天上まで氷です。光苔が、至るところに生えていてその光が氷の中を反射して幻想的な明かりを醸し出してくれてました。自然って凄い……。


ん!?何だろ?何処からか小さいけれど声が聞こえるような……。




「洞窟の反対側で人の声がする、だけど人だけじゃないような……。」




やっぱり、反対側だから通り抜けるわけにもいかないし、見過ごす訳にもいきませんね。




(よし、行ってみようよ!)




私は氷の地面に文字を書いて、彼女と共に洞窟内へ進んだのです……。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「ブオァァァァッ!!」




「ぐわあぁっ!!」




「くそっ!また一人殺られた!これで二人目だっ!!」




「なんて奴だ!我らの盾ごと粉砕するなどあり得ん!」




「団長!奴が地面を噛み砕きながらこっちに向かって来ますっ!!」




団長と呼ばれた男性は茶髪のショートヘアーに2枚目の渋い顔、他の団員や兵士よりも強固な騎士の鎧を装備していました。今は騎士団長と呼ばれる彼も部が悪いと判断し兵士達に号令をかけます!




「ちいっ!一旦退避だ!!出来るだけコイツから離れろぉっ!!」




「がっ!あ、足が……だ、団長ぉぉっ!」




「ランドっ!くそっ!間に合うかっ!」




団長さんが武器を構えてランドと呼ぶ兵士に向かって飛び出していました!そのモンスターも巨大な口で分厚い氷の地面を噛み砕きながら向かって来ます!




「大丈夫かっ!」




「団長!敵がっ!」




「くそっ!来るなら来い!!俺が相手だっ!」




逃げることに間に合わないと悟って、大剣を構えて向かえ打とうとします!モンスターも目一杯にアギトを開き飛び掛かって来たんです!




「バ!?バガァァァァッ!!」




「なっ………!?」




噛みつこうとしていたモンスターが横方向に宙を描いて吹っ飛んでいました!団長さんも一瞬何が起こったのか理解出来ず……。




丁度その長い洞窟を抜け出した私達は、その光景に驚愕!十数名の騎士達がモンスターと対峙しているじゃないですか!




「あ、あれはガザック!」




ミネルザの知り合いですか!?どうやらその様ですね。




「相手は”牙皇鯨”《がおうくじら》ガザルホエール……まずいな……。」




え、ガザルホエール!?って?


鯨の姿でありながら、凶暴性があり、サメのような牙が口の中に無数にあると。頭部!?額!?に3本ずつ上下に3段で刃の様な角が生えていると。体長は約27m、重量はおおよそ4.5t。って重たっ!デカイだけありますね、突進型の体当たりは小さな氷山ならば打ち砕いてしまうというとんでもない魚竜系のモンスター。


と、彼女が説明してくれました。良かった、私には初めてのモンスターばかりです。概要だけでも分かれば、やりようがあります。


そこで、彼女と私は顔を見合わせて無言で頷き、走り出してました!


ミネルザは団長さんのところに、私はホバリングで飛び上がり後ろ足を前に出して急降下!横から体当たりをしてました!


それで、不意打ちを食らったガザルホエールが吹っ飛んでたんです。


氷の地面の上でもがいてます。




「ま、まさかっ!お前たち……!」




「山の上への避難を!ここは私達が追い払う!」




「し、しかし……!」




「負傷者も居るようだし、兵士達を連れて早く!」




 「……分かった!了解だ!皆、山の上に避難するぞ!」




 「さ、私につかまって!」




女性用の傭兵装備で、背中に2本の剣をクロスさせて装備している女性がその兵士に手を差しのべます。騎士団と共に行動している様で、装備も独特な……騎士では無さそうです。




 「すいません、エレザさん。」




 「それよりも、彼らの気持ちを無駄に出来ないわ、急いでここを離れましょう。」




 「うむ。その通りだ!しかも、我らが目的の者達の様だしな。」




 「はっ、も、もしかして彼らが?」




 「そのもしかしてだ。」




 あ、あのぅ、早く移動してくれます?ガザルホエールさん起きあがってますけど。この現状分かってますよね?お願いしますね?食い止めますから。


って、あ~~……まずいわ。怒っちゃったよ、完全に。もうっ!短気なんだから、嫌われちゃうぞ♪…………完全に失礼しました……。後はなるようになれです!私達は騎士団達が避難するのを確認しつつ、目の前のガザルホエールと睨み合いとなるのでした……。


ガザルホエールは一旦地面の氷を噛み砕き、下の海の中へと潜ります。


始めは警戒してましたが、出てくる気配がないので追い払えたのかと油断したその時です!私が居る地面の真下から垂直に氷を噛み砕いて上昇し攻撃して来たんです!よくこんな分厚い氷を簡単に噛み砕いて来るよな!?


間一髪で、私も飛び上がり噛みつかれるのを免れました!ガザルホエールはまたそのまま真下の海の中へ水しぶきを上げながら潜って行きます……。


あっぶなぁ……、コイツ意外と賢いとか言います!?それとも野生の動きですか!?いずれにしても危険な奴ですね。


 ……ったく、なんて奴だ。いきなり問答無用ですか。ならばこちらもそれ相応の対応をするとしましょうか。話の出来そうな感じではないですし、人すら喰らう狂暴性も秘めている……ここで食い止めて置かないと偉い目に合いそうで……。


私はホバリングしながらミネルザを確認しつつ、奴の動きを把握するため、意識を集中して気配を探っていました……奴の動きを、暴走を食い止める為に……………。




つづく……。

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