第3話 いつの間に有名人に……?

 どうも。こんにちは、元の世界では皇すめらぎ 雅人まさとと言う名前でおっさんをしておりましたが、この度、龍に転生いたしました。寝ているうちに気づいた時には、龍の姿に変わっており、しかも一人の女性騎士を助けたところ、彼女に惚れられた…………。あら不思議。




彼女はマリンブルーのロングヘアで騎士の女性用装備をしているのですが、余程ギャップがありすぎたんでしょう。助けるわ傷を治してあげるわで、気を惹いてしまった……。べ、別にそれでナンパしようとしてた訳ではないんですけど。


何故か彼女に一目惚れされた事だけは間違いなく……。




で、今山頂にクレーターがあって、透明度が半端ない湖から彼女と共に出発し、氷山の裏側に向かって飛翔中であります。彼女を背中に乗せながらも、なかなかこの感じも良いものですよね。私、意外と方向音痴の様で上空に上がると右も左も分かりません。彼女が居てくれて助かります。しかし氷山に着くまで、まだまだ距離があります。と、なにかお腹が減ってきました……。ふと下の陸地の方を見ると草原が続く広大な場所で、サイ!?ゾウ!?いや、体躯でいくと鼻がゾウで、額に一角の角がある……。首から後ろはどっちとも取れない似た体躯です。子供も大きさ違えど同じ体躯……ラハムーと言う種族だと後でミネルザさんから聞きましたが、草食系で普段は温厚、群れで移動し敵が現れたら親が自慢の角と鼻で対抗するのだとか。その群れがある肉食系の群れによって脅かされてます。小柄で横から前へと突き出た角を2本持ち、黒豹の様な体躯のモンスターで、足の鉤爪は前3後ろ2がそれぞれの足に……ガッチリと獲物を鷲掴みして離れない様に出来ている細マッチョのような筋肉質の脚で、背中からお尻まで立て髪が反り立ってます。ギラハムと言う種族だと教えてくれました。ミネルザさん物知り♪♪




さてそのギラハムからラハムーを横取りすることになるのかな?でも弱肉強食の自然界……。私も有りかな?美味しそうと思うのは龍だから!?それともこの世界の生物として!?定かではありませんが、ま、いずれにしてもお腹が減ったことは紛れもない訳で…………。




 涎を垂らして下を見ているのが分かったのでしょうか、彼女にも気付かれたようで。




「生肉をゲットしていかないか?もっとも、追いかけている方だが。」




 なるほど……私は即返事すると、ゆっくりと下降を始めます。彼女もしっかりと私につかまり、ラハムーとギラハムの動向を見ています。確かに地上に降りたまでは良いですが、ギラハム達に襲われても大変です。騎士なので、後れを取る事は無いでしょうが念を入れてかかるのが大事。一瞬の隙や油断が怪我の元……。私もゲームをしていて失敗した時は、それでどれほど切なくなった事か……。さすがギラハム達、集団での狩に長けている。親を狙うより弱い子供を狙う……生物の世界の背くことの出来ない厳しい掟……。ならば私もそれに従い狩をするとしましょうか。ギラハムが1頭ジャンプして子供のラハムーに襲い掛かろうとした時です……私が上から前足を地面に振り下ろしたのは…………。




「ギギャァァ!!」




 そのままギラハムを地面にめり込ませていました。ギラハム達が、私を見てパニックになってます。彼女も私の背中から飛び降り、細身の剣を振るってギラハム達を倒していきます。私も子供のラハムーを羽で庇いながらギラハムを追い払っていました。




 ギラハムの集団が私たちに狩られるわ、追い払われるわで散らばっていきました。ようやく子供のラハムーを開放してあげます。すると、親のラハムーも走って子供に近寄り、お互いに頬ずりしていました……。




「クワァァァァ!!」




 親のラハムーがお礼を言うように一声上げて、親子はその場を去って行きました。後々、この親子にも助けられることになるんですが、今は私たちも知る由もなく見送っていました……。




 彼女が早速、ギラハムの生肉を採取していきます。4,5頭倒したので、それなりに生肉がゲット出来ました。




 残りはしっかりと捕食しにくる鳥が居るので任せます。私は彼女を乗せて飛び立ちました。場所を少しく変えて、ゆっくりと食事が出来る場所を選ぼうと思ったのです。デートの邪魔はされたくないですよね。ってデート!?て……照れますね♪♪


 小高い丘の岩場に降り立ちました。見晴らしが良かったので、そこが良いだろうと決めた次第です。そこにしゃがみ、翼を畳んで休める事にしました。彼女ミネルザも降りて、早速生肉を焼き始めました。


 私も香ばしい匂いに、涎が………。美味しそうに焼いて行きます、こんなに慣れてるって何故!?




「クスッ、欲しいの?」




 コク、コク、コク、小刻みに頷くと彼女も笑いながら、私に差し出してくれました。




「ほら、あ~~んして♪」




 きゃ~~~!なんと言うシチュエーションでしょう!こ、こ、こんな嬉しい事があって良いのか?良いんですよね?ありがとうございます!私は、ゆっくりと口を開きます。すると、彼女は口の中に乗せるように焼いた肉を入れてくれました。咀嚼すると、やはり美味しい。人の時の食感や味?の記憶が残っているからでしょうか。でも、ギラハムの肉は初めてですけどね。いわゆる焼き肉と言う記憶が定着しているので、生肉に馴れていないと言う事で。恐らく食べられるんでしょうけどチャレンジは追々頑張ってみます……。




 二人で仲良く肉を頬張り、食事が終わった後少し休憩していました。お互いに顔を寄せ合いながら、暫く景色を眺めていました。それにしても澄み渡る眺めです。こんな美人な彼女とラブラブで景色を眺めるなんて元の世界では奇跡に近い。なので、余韻を味わうかのようにその時間を味わっていました。


 その時です。後ろの森の中から来訪者が来たのは……。




(先客か?)




 全身が白と銀の体毛で覆われ、狼に似た体躯と顔つきで左右に伸びた角があり、大型で翼があります……。


 初めてお目にかかるモンスターさんばっかりですが……ガルフォークと言う種族と教えてくれました。


 あら、するとここはガルフォークさんの休息場所ですか。それは、失礼しました。おいとましなくては。




(すまない。あんたの休憩場所とは思わなかった。直ぐに失礼するよ。)




(ふん、構わん。だが何故ここに人間と一緒にいる?)




 そうですね、どのモンスターでもそう思いますよね。ごもっとも。




(彼女は私と一緒に行動している、大事な人だ。むやみに攻撃したりはしない。)




(そうか……。)




 彼も遠くを見つめたまま、黄昏ていました。欠伸もしていますが、随分と落ち着いてますね。怒った時は怖そうですが……。


 あら、ミネルザさん気が利く~~♪さっきの肉ですか、それは喜ぶでしょう。早速渡しましょうか?了解です。話してみます。




(すまない、私の連れが、生肉をもらって欲しいと用意してくれたのだが、もらって貰えるか?)




(ん!?ほう。うまそうだな。良いのか?)




(うむ、休憩させてくれたお礼だそうだ。もらってやってはくれまいか?)




(そうか、ならば貰おう。よろしく言ってくれ。ではな。)




 そう私に返事をして、生肉を受け取って咥えてまた移動していきました。私も地面に文字を書いて彼女に伝えると、嬉しそうに微笑んでいました。やはり彼女は笑顔が良い。




(そろそろ、行きましょうか?)




 私は、地面にそう文字を書くと、彼女も頷いてくれました。周りを片付け、彼女を背中に乗せてホバリングします。途中休憩だったので、方向は覚えていました。なのでその方角へと飛翔を始めます。


 これは人間達に直ぐに見つかるな……。と言う程に晴れ渡る空の中を、優雅に飛んでいく私と彼女……。人間側で大騒ぎになっているとも知らずに、氷山に向かって飛翔するのでした……。




******************************




 変わって、こちらはギルド内部。何やら、超特殊クエスト?が出たらしく、そのクエストに対して、傭兵や兵士達が躍起になって大勢押し掛けていたようです。当然、私達は知りません。クエストの内容は至ってシンプル。私だけじゃなく、彼女も一緒に捕獲。と言うものでした。危険な目に逢わせたくない、と思ってもその時は私達の知らぬ所なわけで……。


 俺が私がと、次々に名乗りをあげてクエスト受注をしていきます。ソロや2人、3人、4人と組んでクエストをクリアしようと、士気が上がっていました。また、報奨金が高い!どんだけ有名人になっちゃったの?私達……。半分以上は目にお金のマークが浮かんでます。目的はそっちか……。当然と言えば当然ですか。色々と買い揃える物は沢山あるだろうし、食事代の事もある。物入りなのはみんな同じで……。でも、おかしくありません?報奨金3倍増し!?


 どんだけ特殊ですか?兵士や、傭兵の人達の興味深々さが思い浮かびます。龍と話が出来るかもしれない……。という、憶測が飛び交って余計に研究したいらしいようで。


確かに転生した私……。会話しようと思えば出来ますけど。それ以前の記憶や、何処から来たのかなんて分かりませんからね。




「おい、隊長と龍の捕獲だとよ。」




「あぁ。報酬がすげえな。」




「いつの間に龍と仲良くなったんだ?」




「何でも、姫様を助けた時らしいぜ。その後、姫様が騒いだせいで除隊されただろ。」




「あぁ、あれか。その後すぐか?」




「らしいぜ。別のクエストに行ってた他の傭兵の奴らが龍と一緒のところを見かけたってよ。」




「ふ~ん。人間嫌いにでもなっちまったかな。」




「さあな。」




 あらあら、彼女に使えていた騎士達があれこれ噂をしているようで。


彼女に何かあったらただじゃ済まないからね……。と相手には伝わらないので、気持ちだけは……。




「なに!ミネルザが!しかも龍と会話が出来るかもしれないだと!」




 こちらはお城。部下の報告を受けて、話しに食いついている人物が居ました。凄腕の騎士で茶髪のショートヘアーに2枚目の渋い顔、今は騎士団長と呼ばれる彼も動き出そうとしていました。




「よし、数人一緒に来い!クエストとは別行動で動くぞ!」




 我もと思うハンターが数人、頷いて準備を始めました。




「私も一緒で良い?」




 女性用の傭兵装備で、背中に2本の剣をクロスさせて装備している女性が一緒に同行すると言ってきました。




「うむ、当然だ。よろしく頼む。」




 お互いに微笑み合って、出発準備を始めます。私達には勿論知る由もない事なのですが、なんか凄い事になってるようです。大変な人達に興味を持たれてしまった……。でも、私は彼女を守り一緒に過ごしたいだけ……。


 と言っても、まずはなるようにしかなりません。とりあえず落ち着く場所探し。そのために氷山へと向かう私達でありました………………。

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