第51話 模擬戦②
「正々堂々と、日頃の練習の成果を存分に発揮してください。それでは互いに礼!」
「「「「お願いします」」」」
A組とC組の生徒達が向かい合い、審判役を務める教員の言葉でぺこりと礼を取る。
いつもは学院指定の制服としてスカートを着用している女子生徒達も、今日はパンツルックで動きやすい格好だ。
僕はスカートも好きだが、それと同じかそれ以上にパンツスタイルも大好き。
故にこの光景はまさに夢のよう。圧巻の一言である。
ただ一つ残念なのは、今日もリセアが勇者の仕事で学院を欠席している事だろうか。
リセアのスカート姿は夢に毎日現れるほど脳裏に焼き付けてある僕だけど、どうせならここでリセア(パンツスタイルver.)も拝んで見たかった……。
会場は、学院敷地内にある屋外訓練場。
青々とした雲一つない快晴の空と、さんさんと輝く太陽が僕達の肌を突き刺す。
それぞれのクラスの監督役である僕とアインは、二人仲良く試合会場から少し離れた芝生に思いっきり寝転び、アイスコーヒーを飲んでいた。
「ちっ、学長のジジイも堅いよなー! 良いじゃねーか酒くらい飲んだって!」
「うんうん、どうせ今日の僕達は休みみたいなもんだしねー。あ、シーナ、次は麦茶持ってきて!」
そんな自由な僕達の姿を見てシーナはその整った顔を歪める。
「くっ! 私は貴様らの召使いではないのだぞ平民共!」
言葉ではそう言うものの、バローナは僕が飲み干したグラスを乱暴に奪い取り近くにある給湯室へと向かって行く。
彼女もA組の生徒ではあるのだが、どちらかと言えば護衛術が専門なので今回の模擬戦のメンバーには選ばれていなかった。
A組とC組。それぞれ代表を十名ずつ出して合計十試合戦うのが今回のルールだ。
そのメンバーにはロロアンナの名前とミルザの名前もある。
ヨウは魔法が使えないので当然メンバー外。
そのため、今日はロロアンナの護衛とシーナの赤ん坊の世話をヨウが一手に引き受けていた。
恐らく、今日くらいはシーナの負担を少しでも減らして彼女に気分転換をさせようという、ヨウとロロアンナの気遣いだろう。
……まぁ、僕達と一緒にいてシーナの気が休まっているのかは定かでないが。
「第一試合、A組代表ミルザ対C組代表コロ! 試合開始!」
わぁぁぁああ!!
審判の言葉で、会場をぐるっと取り囲むA組とC組の生徒達が歓声を上げる。
だが舞台上に立っている選手は双方どちらもなかなか動きを見せない。それどころかミルザに至っては顔を真っ赤にして自身の胸元を腕でガードしていた。
「ぐおおお、こったこっぱずかしいかっこ早くやめてまいてー!」
「ふん、私はあなたのような痴女には負けません!」
「ばがでねな! わが進んでこったかっこしでらと思ってらんず!?」
ミルザはその肉付きの良い四肢を見せ付けるかのように地団駄を踏むと、それと連動するように豊満な胸も揺れる。
そう、ミルザはこの広い訓練場でただ一人、際どい水着を着てこの場に立っていたのだ。
弾力のある巨乳に、瑞々しい太もも、そして水着からはみ出てしまいそうな大きなお尻。
この場にいる数少ない男子生徒だけでなく、同姓である女子生徒、教員までもがその肢体から目が離せないでいる。
「ふむ、絶景だね。今度からミルザはあの格好で訓練させよう」
「何を馬鹿な事を……。平民、そんな汚らわしい目を姫様に向けたら貴様の眼球と股間をちょん切るからな」
僕がミルザの作り出す素晴らしい光景に目を奪われていると、ちょうど麦茶を持って帰って来たシーナが苦言を呈する。
「いやいや、ミルザはあれが最も戦闘に適した格好なんだから仕方ないじゃないか。僕だって弟子に恥ずかしい思いはさせたくないんだよ?」
「ふん、どうだかな」
ミルザはエネルギー魔法の使い手だ。
あまり聞いたことの無いマイナー魔法だがその能力は非常に優秀で、自身の魔力をあらゆるエネルギーに変換するというもの。
ミルザが魔法を使えば魔道具だって魔物の核無しで動くし、火にぶつければ油を与えたかのように炎が大きく燃え広がる。
理論上は魔力さえ尽きなければ、餓死する事も無いというのだから驚きだ。
今もミルザは対戦相手に向かって距離を取りながら、エネルギー魔法によって作り出した球体状のエネルギーの塊をポンポンと相手にぶつけまくっている。
「なぁハルト。あれってエネルギーそのものなんだろ? 当てられた方は逆に魔力が回復したりしねーのか?」
「あぁ、元々はそうだったみたいだね。攻撃も出来ないし、かと言って回復魔法や治癒魔法の足元にも及ばないサポート能力。だからミルザも自身の魔法を活用した研究の道に進もうとしていたらしい。でも、特有的特性が開花した事によってその問題は解消された」
防戦一方に見える対戦相手のコロだが、どうやらシュリに近い近接特化の魔法使いであるようだ。
ミルザのエネルギー弾を食らいながらも、一歩一歩距離を詰めていく。
あーなるほど、コロは黒魔法の使い手か。
なんとか接近戦に持ち込んで、その手足に纏った黒魔法をミルザにぶつけようという腹積もりなのだろう。
攻撃が
流石はアインがクラスの一番手に指名するだけの事はある。
「ミルザの特有は光合成。太陽の光を浴びれば浴びるほどそれが魔力に変換されていく破格の能力だ。だからこそ、この特有的特性を全開で魔法を行使していれば、エネルギーとしての共通的特性が薄まりただの魔力弾として相手にダメージを与えられるようになる」
光合成の特有を持つミルザにとって、この炎天下の屋外訓練場はまさに独壇場。
太陽の光を身体中に浴びる事で、魔力を無限に製造し続ける今の彼女は無尽蔵な魔力タンクだ。
唯一デメリットとして、肌を直接陽の光に晒さないと能力が最大限発揮されないという欠点はあるが、それも見ている僕達が眼福だから一概に短所とも言い切れない。
いやむしろ合法的かつ合理的に弟子のビキニ姿を拝めるとかこれ以上ない最高の能力である。
神様、他の誰でもないダイナマイトボディの我が弟子にこのような素晴らしき能力を与えて下さり感謝します。
「……昨日はついに平民の頭が狂ったのかと思わされたが、まさか本当に一日でクラスの半数以上の生徒の特有を発現させるとはな。やはり貴様は侮れん」
一応褒めてくれているんだろうか……。貴族の喋り方は迂遠過ぎて分かりにくい。
まぁ、天才の考えは往々にして凡人には理解されがたいものだ。
同じ天才であるアイン達が理解してくれていれば僕はそれで構わないよ。
「ちっ、やっぱつえーなミルザの奴。ロコなら勝てるかもと踏んだが、流石に毎日俺やシュリの攻撃を
アインの言葉通り、距離を詰めて近接戦に持ち込む事に成功したロコであったが、攻撃がただの一度も
ミルザの特有能力上、勝負服が水着にならざるを得ないのは僕達も充分に理解していた。(ていうか嫌がるミルザに激しく推薦していた)
だからその紙耐久を補うために、ここ最近はずっと攻撃を躱す訓練を施してきたのだ。
おかげで、ロコがどれだけ素早い一撃を繰り出そうが、フェイントを掛けようがまるで攻撃が当たる気配が無い。
暫くそんな攻めては躱されるという状況が続くと、このままではジリ貧だと察したロコが最後の賭けに出た。
魔法を捨てて、杖で殴り始めたのだ。
「アイン、あの子にも杖術……いや剣術を教えたの?」
「あったりめーだろ? 魔法使いってのはシュリみたいな特殊な例を除けば近づかれたら終わりだ。なら、近付かれた時の対処法を教えとくのが俺の仕事だ」
「……ただ単に強い剣士を育てて戦いたかっただけだよね?」
「……まぁそれもある。でもおかげでアイツらは強くなったぜ?」
「だとしても魔法を捨てさせる必要はあったの? ロコって子、もう魔法を使う素振り一切見せないけど……」
「ハルトも知ってると思うが、人ってのは一つの事だけに集中していた方が何倍も強くなるもんだ。だからいざという時は無駄に両方使おうとするんじゃなくて、剣一本に絞れ!って教えてやった」
「何故そこで剣を選ばせる……」
なんか言っている事がおかしい気はするが、その効果は着実に現れている。
日頃訓練の相手となっているアインの短剣より二倍以上ものリーチがあるロコの杖を、ミルザは次第に捌き切れなくなってきたのだ。
アインが直接指導しているだけあり、ロコの杖は早くそして重い。
これ程の至近距離では魔力弾を放とうとすると隙が大きすぎてカウンターを食らうだろう。
かと言って、他にロコに有効なダメージを与えられる手段が見当たらない。
そこでミルザは、ついにまだ完成に至っていない技をここで投入した。
「うおおお! わはこごで負ける訳にはいがねえ! くらえ、ミルザビーム!」
「ッ!?」
ミルザの右手と左手から絶え間なく放射され続ける魔力。それはまさにビームであった。
まだ魔力制御の甘いミルザでは十秒ほどしか放てない奥義だが、その威力は絶大。
ビームは訓練場の床を貫き、外壁をボロボロに砕いていく。
「なんですかこれは!? ちょっ!? 威力あり過ぎでしょ!? 私を殺す気!?」
いくら近接タイプのロコとは言え、これ程の強力なビームを……それも二本同時に避け続ける事は不可能だ。
ロコはすぐに観念したように地面にしゃがみ込むと、両手を上に上げて降参した。
「無理! 無理無理! こんなの無理! 私の負けです! ……はぁ、貴方の勝ちですよ。おめでとうございます、痴女さん」
そんな降参宣言を受けて、ビキニ姿のミルザは叫ぶ。
「だがらわは痴女じゃねぇーッ!」
やれやれ、なんて説得力の無い言葉なんだ……。
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昨日は眠すぎて投稿する余裕がありませんでした。
なので今日は昨日の分も含めて二話投稿します。
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