覇王になってから異世界に来てしまった! ~エディットしたゲームキャラ達と異世界を蹂躙する我覇王~
一片
一章 異世界に来てしまった我覇王
第1話 ゲームを始めたんだが?
目が覚めたら知らない場所にいた……ってのは異世界転生ものでよくあるパターンだ。形式美と言えるかもしれない。
最近はテンプレテンプレとよく言うが、そろそろ王道と言ってやってもいいのではないだろうか?俺はそう思う。
閑話休題。
因みに俺は別に眠っていたり、意識を失ったりはしていない。寧ろ目はギンギンに覚めていたし、これから息抜きと言うか日課と言うか……ライフワーク……いや、生き甲斐であるゲームを始めたところだった。にもかかわらず……。
「ここは何処かしら?」
ほんとそう思う……ここは何処?
俺はつい先ほど、ゲームを起動して……いつも通りロードを選んだ。うむ、間違いない。今も目を閉じればタイトル画面が目に浮かぶ。確実にロードして新しい周回を始めるを選んだ。
うむ……決定ボタンを押した感触が指に残っている気がする。しかし、手の中にコントローラーは残っていない。
俺が先程までいたのはワンルーム八畳の部屋の中。真正面には二十八インチのテレビがあり、尻の下には座椅子があった。
そして今俺の目の前には……先程までいた俺の部屋を十倍にしても足りないくらいの広さの……なんか豪華な部屋が広がっている。更に赤い絨毯が一直線に引かれて……その先には重厚な扉が存在感を放っていた。
別に光に包まれたりもしていないし、意識が遠のいたりもしていない。決定ボタンを押した瞬間、ここに居たのだ。
何故わかるかと言えば……俺の手はコントローラーを握っていた手の形で固まっているからだ。しかし、俺の目の前にテレビはなく、あるのはとても豪華な超広い部屋だ。
そんな部屋の中、俺は一段高い場所に座っている。しかも座椅子ではない。家にいる時の八割はその上で過ごす俺の座椅子は、奮発してちょっといいものを用意している。しかし、今座っている椅子は……何と言うかかなり堅い。
尻心地が悪かったので少し身じろぎをすると、俺の服がかちゃりと音を立てた。
いや、服はそんな金属音が鳴る様な物は着ていませんよ?
そう思い自分の身体を見下ろしたところ……俺の目に映ったのはよれよれの部屋着ではなく、黒光りしてごつごつしている……あれだ、鎧って奴だ。
思わず両手で顔を押さえる……あ、手のひら部分は革なのか……いや、それはどうでもいい。
いや、落ち着け、とりあえずアレだ、素数とか数えてみる?
1……あれ?1って素数じゃないんだっけ?どっちだっけ?ちょっとググりたいんだが……ってスマホ、テーブルの上に置いたままだな……まぁ、いいか、とりあえず落ち着いた。
意を決して立ち上がる。
鎧の重さに立ち上がれないのでは?と思ったが、思いのほかすんなりと立ち上がることが出来た。すると俺の動きに合わせて何かがふわりと動いたのを感じた。
……マント……しかも真っ赤なマントだ……え?鎧だけでもキャパぎりぎりなのに、その上マントまで着けちゃってるの?心が色々削れていくのだが?
そんなことを考えながら振り返った俺の目に映ったのは……。
「……やっぱり玉座……玉座だよね?これ、玉座だわ」
これでもかと偉そうに鎮座している椅子があった。
本当に偉そうな椅子だ。良くドラマとかで社長とかが座っている黒い革張りの椅子が、パイプ椅子レベルに見えそうなくらい偉そうな椅子だ。
多分この椅子を売るだけで一生食っていけると思う。
「……?」
そんな風に椅子を眺めていたのだが……何か既視感が……気のせいだろうか?
一段高くなっている所から降りて、玉座の方を見ながら何歩か後ろに下がってみる……やはり見覚えが……なんとなくと言うか……いや、超見覚えがある。
いや、リアルで見るのは初めてだけど……。
「……えぇ?……これ絶対、レギオンズの拠点画面じゃん……」
レギオンズ……正式名称はソードアンドレギオンズ……サブタイトルはなんかあったけど覚えていない。つい先ほど俺がやろうとしていたゲームに出て来る拠点パートの背景画面、それにそっくりな風景が俺の目の前に広がる。
「……ゲームの中に入っちゃったってヤツ?嘘でしょ?しかもよりにもよってこんな殺伐としたゲームに……?」
俺は震える右手を押さえるようにしながらその場に座り込む。
ソードアンドレギオンズ……RPGとSLGの両パートを持つ、戦略シミュレーションゲームだ。主人公は最初に国を選び、その国を大陸の覇者へと導く役を担う。
ノッブの野望の様に内政や軍事、外交等、国の経営をやるというよりも基本は戦う事がメインのゲームで、軍を送り込んで戦わせたり、ダンジョンに潜ってRPGパートをやったりして武力で大陸統一を目指すのだが、一応同盟を組んだりすることも出来る。
プレイヤーが選べる国は五種類あり、更にはどのように進めたかによってルート分岐、マルチエンディングなので遊びつくすにはかなりの時間がかかるボリュームだ。
各勢力には美少女も多数おり、個別エンディングなんてものも存在するので、全キャラのエンディングを見ようとしたら百周じゃ足りないだろう。まぁ、個別エンディングは主要キャラ以外はかなりあっさりしたものだから全員見る必要は……余程暇じゃない限りないだろう。
どうでもいいキャラはちょいと動画検索すればいくらでも見られるしね。
因みに俺はこのゲームに嵌りに嵌った。個別エンディングではなく、シナリオ的なエンディングは全て見た……それだけでも二十は下らない数あるのだが、当然俺は全部二回以上見た。ここ二、三年このゲームしかやっていない。
周回引継ぎや周回特典のあるゲームだったので、難易度を一番上にしても楽勝になるくらいやり込んだが……そろそろ引き継ぎ無しで始めてもいいかなと思っていたんだよな……。
「本当にレギオンズなのか……?」
俺は再び玉座を見る。見れば見る程、拠点パートの画面の背景で見ていた玉座って感じだ。
「……まだ決めつけない、まだ決めつけないが……レギオンズだとしたら……ここはどの国だ?」
レギオンズで選択できる国は五つ。それぞれ国旗の色が異なり、青、赤、緑、黄、白で表示される。青がランデュール王国、赤がデンテル帝国、緑がローゼンボルク連邦、黄色がホブリッツ商業連合、そして白はプレイヤーが自由に決められる。
選択できる国の中で白だけは特別なものになっていて、主役級のキャラクターがいない。プレイヤー自身が国主となり、自分でエディットする仲間を使用することになる。
更に白の国はプレイヤーが白を選択した場合のみ登場するので、他の国を選択した場合は存在すらしない国だ。
そして今問題なのは……ここがどの国なのかということだが……白以外の国を選んだ場合……オープニングは城門をプレイヤーが通る所から始まる。プレイヤーは一兵卒として最初の戦闘を経験。チュートリアル的なそこで手柄を立てて、小隊の隊長になってから本編スタートと言った感じだ。
しかし、今俺がいるのはどう見ても城門ではない。控えめに言っても玉座の間、はっきり言っても玉座の間だろう。
や……やばい。
玉座の間からオープニングが始まるのは白の国だ。
何がやばいって……白の国は最初エディットキャラしかいない。エディットキャラとはプレイヤーが自由にキャラの見た目や能力をカスタマイズすることが出来るのだが……初期状態では能力に割り振ることのできるポイントが少なく、滅茶苦茶弱い上に作成できる人数も五人しかいない。
そして当然の如く領地の周りは全て敵。というか大国に囲まれている状態からのスタートだ。
ノッブの野望で言うなら……能力値90やら80後半の武将達が支配する国に囲まれた立地にプレイヤーと配下に織田信勝が五人居る状態である。
分かるだろうか?織田信勝である。全ての能力値が大体50付近と言った感じである。信勝さんも後世でそんな評価されるとは思っていなかっただろうなぁと思う。
閑話休題。
とりあえず、そんな感じで最初に選べば確実にゲームオーバー一直線なのが白の国なのだ。
「いや、大丈夫だ……落ち着け俺。ゲーム世界に転移するなんて、ある訳ないじゃん?だってほら……レギオンズはVRMMOじゃないし?乙女ゲーでもないし?なんだったらMMOどころかMOですらないし?ただのコンシュマーの国取りゲームだし?いや、確かにRPG要素もあるよ?魔王とか邪神とかいるよ……?え?」
そうだよ……国同士の戦争だけじゃない、魔王とか邪神とかいるじゃん……ルートによっては邪神は出てこないけど、魔王は普通にいるし……あれ?世界がやばい?
こっそり逃げようとか思ってたけど……魔王の支配地域って確か人間はえらい目に合うって設定ではなかったかしら?
俺は動悸の激しくなった心臓を押さえつけるようにしながら立ち上がる。しかし、足元がふわふわしている感じがして、真っ直ぐ立てている自信がない。多分敷かれている絨毯が相当高級品なのだろう。
え?嘘でしょ?待って待って待って……最弱の国の国主?逃げていいよね?っていうか逃げるしかないよね?だって国主の時負けたら、戦争で死ななくても首ちょんぱよね?逃げる一択だよね?
でも逃げたら魔王来るよね?魔王来たらやばいよね……?
待て待て、大丈夫だ、落ち着こう、素数とか数えるか?あれ?1は……?いやいや、大丈夫だ。レギオンズには国を捨てて野に下るってことも出来るシステムがある。その後別の国に士官して成り上がることも出来るし……そのままダンジョンに行きまくる冒険者エンドってのもあった。
その場合、軍ではなく個人として魔王を倒しに行く勇者ルートもある、邪神もでないし……そのルートを目指すか?問題は……俺、戦えるのか?痛いのは嫌だし、殺したりとかも出来るのか?いや、もうほんと分らん……俺はどうしたら……。
「俺はどうしたらいいんだよーーー!!」
頭を抱えながら全力で絶叫する。叫んでも状況は変わらない……そんなことで好転するならもっと叫ぶ……それは分かっているが、それでも叫ばずにはいられなかった。
「誰ですか!神聖な謁見の間で大声を出しているのは!」
しかし、好転したかどうかはともかく、叫んだことによって状況は変わった。
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