第287話 本当の「わたし」

2023.3.8

人工授精することになった。

ぶはぁ!みたいな驚愕だが、旦那と話し合ってそうなった。


3回ほどチャレンジしてダメならもう辞めようと。

ココロのどこかにある、子どもという存在。

いつも揺れ動いている。


やるだけやってダメなら、それでいいじゃない、という知り合いの言葉で決断した。


別に、強く強く子どもを願っているわけでもない。

話のタネにでもと、もし子どもができたなら大事に育てようと、そんな感じ。


子どもができても、できなくても、どっちでもいい。

そんなところか。

年齢的にも、そろそろ私の中のリミットが迫っている。

今しかないと思っている。


前は、何かあれば薬に走り、酒に走っていた。

年明けから、何故だろうか。ピタリと止んだ。


何かあれば、酒や薬に走っていた頃を考えれば、状態がようやく落ち着いてきた「今」が、妊活スタートラインなのだと思う。


私は、昔から何でも人より遅かった。

歩いたのも2歳だった。


看護師になってからも、覚えは遅かった。

たくさん怒られた。たくさん謝った。


それでも、何とか生きてきた。

まぁ、それなりの代償はあったけど。


人と違うことで、いろんな代償の代わりに、人と「同じ」になろうともがいてきた。


母にとっての「良い子」でいようともがいてきた。

でも、本当は良い子なんかじゃなくて、いろんなモノと引き換えにしてキャラを保っていただけだった。


化けの皮も、とうの昔に剥がれ落ちた。


人と「同じ」に合わせることも、「普通」に合わせることも、私にとっては苦行だ。


だって、普通じゃないのだから。


たくさんの代償と引き換えに「同じ」やら「普通」やらに合わせることに疲れてしまった。


とはいえ、カミングアウトをする勇気はない。

穿った見方で見られることを、腫れ物に触るように扱われることが、怖いのかもしれない。


世の中は平等じゃない。

「普通じゃない」ものは淘汰される。排除されていく。


自分は自分よ、と開き直れたら、どんなにいいことだろうか。


まぁ、こんな病気だから、「本当の自分」って何なのかイマイチわからないけど。


躁状態の「わたし」も、うつ状態の「わたし」も、まるごと引っくるめて「本当の自分」なんだろうけど。


でもやっぱり、テンションの乱高下があると「自分」が見えなくなる。


恋は盲目。


病も盲目。


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