第114話 サイレンの嵐
2022.8.12
一昨日、旦那から離婚を切り出された。
パパ活がバレたからだ。
私は貧乏に育ったので、お金に執着してしまう。
ちゃんと稼いでいるのに、それでも不安が拭えない。
だから、他にも金脈を探してしまう。
私は金銭のやり取りがある限りは不倫とは思わないが、旦那としては不倫という概念らしい。
気持ちも何もないのに不倫とかなくね?
そんなこんなで、もう人生いいやって思って気付いたら風邪薬と抗ヒスタミン薬を複数のドラッグストアで買い込み、マンションの屋上で9%のストロングゼロで流し込んで夜景をボケッと見ていた。
これで幸せなんだろう、本当はこれが一番良い形なのだろう、そんな風に思ったが、正直なところでは独りで生きていく自信はなかった。
きっと離婚したら、実家とは縁を切って、知らない土地で暮らすんだろう。
独りぼっちが始まるんだ。
でも仕方ないよね。
こんな病気、こんな性格、こんなのが生まれてしまったことが間違いだったんだ。
そんなことを考えながら、だんだんと意識が遠のく。
気付いたら屋上に横たわって、気を失いかけていた。
よく覚えていないけど、旦那が発見して、救急車を呼んだらしい。
でも、私は「救急車≒入院≒精神科≒仕事クビ」が頭をよぎり、救急車だけは呼ばないでくれ、これ以上苦しめないでくれ、と呻いていたように思う。
救急車とセットで、何故かパトカーも来た。
騒然とするマンション。
薬と酒のせいでフラフラだったが大丈夫ですを連呼して、救急搬送は拒みまくった。
実際、ロキソニンも10錠以上飲んで胃をやられ、胃が痛かったし、他の薬でもいろいろやられていたが、こらえた。
旦那母も来て、何だかえらいことになった。
何故か旦那母は離婚を勧めなかった。むしろ復縁を勧めた。
理由はわからない。
帰り際、私のことをハグして、「私はあなたが大好きよ」と言って帰っていった。
私は、自分の母にすら大好きなんて言われたことはない。
だって生まれちゃいけない子だったから。
偽物の「大好き」は腐るほど聞いてきたし、自分も「大好き」を返してきた。
そして、たくさんの人間を踏み台にして、利用して生きてきた。
汚い人間だ。
旦那は離婚届も書き、新しい住まいも探し、もう離婚する気満々という感じだったが、意識のない私を介抱しているうちに少し気持ちが傾いたようだった。
別にアピールとかではなくて、もう全てがどうでも良くなってしまったんだろうと思う。
病気のこと、子どもを持つこと、いろんなことがぜーんぶ、つらくなって嫌になって、ぶん投げたくなって、死んだら解放されるんじゃね?
ってなって、でもワインはおいしくないからって、それなりにゴクゴク飲めるであろうストロングゼロを買ったんだった。
結果的に、離婚は回避になってなんとなく元通りの生活になっている。
旦那にも旦那母にも驚愕である。
その日を境に、少しは真っ当な人間になろうか、と思った日だった。
まぁあれだな。
めちゃくちゃですね。
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