第5話 隣の女性と赤い糸
あれから私はバイトを探す。
そして、コンビニのバイトを始め、相変わらず告白が絶えない。
お客様といい、バイト仲間といい、その環境は変わらなかった。
そんなある日のバイト休み。
私は街に出掛けた。
「連君」
ドキッ
聞いた事のある名前に胸が大きく跳ねる。
私はキョロキョロと辺りを見渡し、人混みから抜け隠れた。
「…垣村君とは…あの日以来だ。彼女…出来たのかな?まあ…カッコイイし無理もないか……やっぱり…赤い糸って…存在しないのかな…?」
見えていた赤い糸。
あれは幻?
そう考えてしまう。
だけど…赤い糸は1本じゃない。
運命の人も一人じゃない。
色々な説があるけど…
私は帰る事にした。
その日の夜。
「悠霞ーー、ごはんよーー」
母親がリビングから叫ぶ。
「いらなーーい。ごめーーん!」
「…珍しいわね…。体調でも悪いのかしら?」
私は昼間の事が気掛かりで、ぼんやりとし、そのまま眠っていた。
そして、そんなある日のバイトの日。
「今日、彼と要約、Hして結ばれたんだ〜♪」
「彼って…例の?」
「そう!垣村連君♪」
ドキッ
聞き覚えのある名前に胸が大きく跳ねた。
「だけど二人共カッコ良くて、選べなくて、実は W交際継続中♪」
「…二股?」
「うん♪」
「そ、そうなんだ…」
彼女達は、しばらくして店を出て行く。
私は後を追った。
「あのっ!」
「何?」
バシーっ
彼女の頬を平手打ちした。
「ったぁ〜い。何するのよ!!あ〜ん、綺麗な顔が台無し~ぃ。せっかく、お化粧直しもバッチリだったのにぃ〜っ!」
「自分が綺麗だからって男の人を騙したりするのって、どうかと思いますけど!垣村連君と別れて!!」
「あなた、連君の何?」
「悲しい想いさせないで!」
「あなたには関係ないでしょう!?行こう!」
「関係ある!彼と私は赤い糸で結ばれているんだからっ!!」
「えっ…?やだ…聞いた〜?赤い糸だって〜」
クスクス笑う彼女。
そして、そのまま話を続ける。
「そんなもの存在しないの!ばっかじゃないの?本当の好きな人と赤い糸で結ばれてるのよ!だから、私は二人共、本気で好きだし、相手も私の事、本気だから問題ないの!私は二人の男に愛されてるのよ!」
「赤い糸は一本だよ!同時に赤い糸なんて存在しない!彼と別れてっ!垣村連君と別れてっ!!」
「じゃあ…今ここで土下座しなよ!そうすれば考えてあげる!」
「ちょっと…マユ!それは…」
私は素直に従った。
「えっ…?」と、友達の人。
「アハハ…やだぁ~、ねぇ、あなた頭おっかしいんじゃない?本気(マジ)で土下座するなんて有り得ないんだけど〜?だけど、私は別れないから!ごめんね〜」
「お願いっ!別れてっ!別れて下さいっ!」
「マユっ!」
私は彼女の足を掴み、引き止める。
「お願いっ!別れてっ!」
「離してよっ!ウザいんだけど!」
そこへ―――
「ちょっと!木村さん何をしてるだ!ほらっ!」
店長が私を彼女から引き離すようにする。
「嫌です!彼女が別れるって言うまでは、ここからも彼女からも離れ…」
「しつこいわねっ!分かったわよ!別れてやるわよ!だけど、彼が別れないって言ったら無理な話だから!それ理解してよねっ!行こうっ!」
「う、うん…」
二人は去って行く。
「ほら!来なさいっ!」
そして、奥の部屋に連れて行かれる。
「全く!君は店の前で、お客様に迷惑かけて…今後、また、その様な事をしたら辞めてもらうよ!」
「……いいえ…辞めます。また…同じ事するかと思いますので…今日限りで辞めます」
「木村さん?」
「ご迷惑おかけしました。今からでも帰ります」
「えっ!?」
「お世話になりました」
私は帰る事にした。
そして、近くの公園に行き、ぼんやりとしていた。
すると、そこへ――――
「お姉ちゃん、どうしたの?」
二人の男女の子供が仲良く手を繋いでいる。
「えっ?」
「大丈夫?何処か痛いの?」と、男の子。
「ううん。何処も痛くないよ。大丈夫!」
「良かった!」と、女の子。
「それよりも、二人共仲が良いね」
「うん!凄く仲が良いよ」と、女の子。
「そっか」
「ねえ、お姉ちゃん。赤い糸って知ってる?」
男の子が尋ねた。
「えっ?赤い糸?」
「うん。ママが二人は赤い糸で結ばれてるのかな?って言ったの」と、女の子。
ドキン
《私以外にも、そう言ってくれる人いるんだ…》
「そっか…」
「ねえ、赤い糸って何?ママね、その理由(わけ)を話してくれないんだ」
「そうなんだね。赤い糸は…お姉ちゃんも上手く説明出来ないけど…赤い糸は神様しか分からないんだよ」
「そうなの?」
「うん。みんなが、これから出逢っていく人達の中で別れたり、また、出逢ったりの繰り返しの中で本当の赤い糸を見つけるの」
「お姉ちゃん、僕達…赤い糸で繋がってる?」
「どうかな…?…お姉ちゃんに小指を見せてくれる?」
二人は小さな手を差し出す。
「…うん…大丈夫。繋がってるよ。もし、離れ離れになっても、きっと二人は永遠の赤い糸でつ繋がっているから、また出会えるよ」
「本当!?」と、女の子。
「うん」
「お姉ちゃん…赤い糸、見えるの?」と、男の子。
「…誰も…信じてくれないけど…見えるよ」
「じゃあ…お姉ちゃんは、もう出逢えた?」
と、男の子。
「その人、見つけた?」と、女の子。
「カッコイイ?」と、男の子。
「どんな人?」と、女の子。
「…うん…凄く、カッコイイよ。…でも…その人は誰とでも赤い糸で繋がっているから…近くにいても…まだ、本当の糸が見つからないみたい」
「でも…赤い糸って…一本しかないんでしょう?」
と、男の子。
「…うん…本物の赤い糸は…一本しか繋がっていないけど…繋がっていない人と繋がっていたりするから…たくさんの人と出会って別れていかないと辿り着けない事もあるんだ…神様がくれた私達の運命だから」
「…そっか…」
「二人共ーー、おいでーー。帰るわよーー」
「はーーい!」
「お姉ちゃんバイバイ」
「うん、バイバイ」
別れてり私達。
そこへ―――――
「赤い糸って」
ビクッ
突然の声に驚く私。
「神様しか分からないんだ」
振り返る視線の先には
ドキッ
「垣村君!?」
「学校来なくなったと思ったら退学なんて聞いて呆れるぜ!」
「いいでしょ!?じゃあっ!」
グイッと引き止める垣村君。
ドキッ
「赤い糸…神様しか分からないって…でも…お前は分かってたんだろ?出なきゃ近付かねぇよな?それともお前は女子高生に変装した神様なのか?」
「…そうだよ!神様だから垣村君と赤い糸で繋がっているのが分かった。……でも…正直…あてにならないよ…赤い糸なんて……本当に…存在してるのかな…?」
「………………」
「結局、赤い糸なんて…色のついた糸に過ぎないから、ハサミで切る事の出来る簡単な糸だから」
「…赤い糸なら切っても切れねーだろ?もし、本当に簡単に切れる糸なら、切れない糸にしろよな!お前が神様なら。もしくはお願いして頼めよ!木村悠霞!」
「…そんなの…」
「………………」
グイッと腕を掴み引き寄せ、キスをされた。
ドキン
「………………」
かあぁぁぁぁっ!
まさかの突然の不意のキスに赤くなってしまった。
「…その反応…何?」
「…いや…まさか…キスされるなんて思わないし…だ、第一、まだ、彼女と別れてないんでしょう?駄目だよ!」
「別れたよ。あんな事されたら別れるだろ?つーか、薄々、気付いてたし。こっちから別れてやった」
「えっ…?」
「土下座するわ、叫ぶわ…」
「…見てたんだ…」
「偶々な」
「…そっか…」
「それに…赤い糸も案外、本当に存在しているんだろうなって…色々な説はあるんだろうけど…」
「………………」
「お前が来なくなって、いつの間にか、お前の事を考えてたら気持ちが恋に変わってた。最初は変な奴なんて思ってたけど好きになってた。赤い糸っていうのも存在するのかもな」
「えっ?」
「つー事で…ゆっくりで良いから付き合って欲しい俺と」
ドキン
「…垣村…君…うん!」
私は垣村君に抱きついた。
〜 E N D 〜
Red String ハル @haru4649
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