22
最後の記憶の眠る地、竹藪へ向かう。ここは子供の行方不明が多発してるらしく、一人では入らないようにと入口の看板に書かれていた。まあ入るんだけどな!
少し進むと、なぜか大きな道路に突き当たった。この町にこんな場所があったのかと驚いていると、両側は土砂崩れかなんかで行き来が不可能になっていた。そんな中で、なぜか灯りがついている信号機。下には歩行者用のボタン。これ、赤のまま行ったら絶対轢かれて死ぬ奴やん。大人しくボタンを押して青になるのを待つ。待ってる間は何事もなく、青になるととおりゃんせの音楽が鳴った。いや、確かに現実でも採用されてたりするけどさ、ここでこれってつまり逃がさねえよってことか? ホラーとしてはこの上なくぴったりだけどさ。
時間切れになるのも怖いので急いで渡ることにする。と、反対側からボールが転がってきて、それを追いかけるように子供のお化けがいかにもそれらしい走り方で真ん中を通りすぎていった。場所柄ここにいる意味を考えると少し切なくなる。
信号を渡りきると赤い服とリボンを着けた女の子の後ろ姿が、再び現れた竹藪に入っていくところだった。それだけなら可愛らしいものだが、この時間この場所にいるだけでアウトである。もっとも、岬の幽霊のような例もあるからまだ敵と決めつけるわけにはいかないが。
後を追って進むと、お地蔵さんと欠けた石碑を見つけた。石碑には何か書かれていたようだが、欠けてしまっているせいで判読は不可能とのこと。
そしてこの辺りから周りに人形が目立ち始め、同時に迷いの竹林とでも言うべきものに変化していった。
時には光を見ないように歩き、ヒントを辿りながら薮の中の目印を探して歩く。途中ででかい顔のおかっぱ頭に追いかけ回された時は結構びびったが、なんとか捕まることはなかった。
そして仕掛けの方で失敗しても、こちらは特定の位置に戻されるだけのようでリトライは比較的しやすかった。まあ、こちらからすれば生きてルーラかデスルーラの違いしかないのだけど。
そして数々の仕掛けを突破し、ようやく記憶の中にあったお屋敷の前まで来ることができた。ただ、周りを見ても続いていそうな道はなく、扉の方も鍵がかかっている。どうしたものかとしょうめんのほうに来てみたら、
『おやしきのなかにはいる?』
マジかよ。ここに来てよりにもよって屋敷の探索かよ。前作の屋敷も結構怖かったからつい回れ右をしたくなる。後回しにした直感はある意味正しかったようだ。……なんの救いにもならなかったが。
玄関はごく普通の間取りだったが、竹が床を突き抜けて屋敷内を侵食していた。家の中はたくさんの、それこそ洋の東西を問わず様々な人形でいっぱいであり、制作途中のものと思われるものまで見受けられることから人形師の家系だったのかもしれない。だがここにくるまでに、最近は子供がめっきり来なくなった、あの子が寂しがっている、という謎の文章が落ちていた。そして、廊下の端々には何かの引っ掻き傷のようなものや赤い何か、赤黒く変色した何かがそこそこ見受けられる。
まさか、子供を人形の材料に……?
人形のパーツを集めたりしながら進んでいくが、ところどころ家の中がより暗くなったり脅かしがあったり、何者かが駆け回ってドアを開け閉めする気配がしたりとやりたい放題である。殺されるような怪異にこそまだであってないけど、ただ探索するだけでsan値がごりごり削れていく。くそう、港町とか岬はそこまででもなかったのに。
行く先であの赤い服の子を見るので、良くも悪くもあの子が鍵なのだろう。もしかしたら、あの子が文書のなかで言及されていた子かもしれない。まあまともな存在ではないだろうが。
そんな奇妙なおいかけっこも、とうとう終わりを告げる。奥の食堂を始めとした一角で、彼女はついにこちらを振り返った。
彼女は人ではなかった。人ではあり得ない首の動きをし、人を模した、それでいて明らかに人ではない顔のパーツで、なのに人のように笑っていた。
彼女の前に落ちたものを拾おうとしたその一瞬、彼女の姿がぶれておぞましいものへと変わる。ただそれはほんの僅かな間であり、ためらった主人公をよそに目の前のものを拾うとそのまま駆け出した。
最初はかくれんぼ、その次は鬼ごっこ。まるでそんな風に彼女は動いた。
だが、それも唐突に終わりが告げられる。
彼女の体がバラバラになってしまったのだ。もう動くことができなくなってしまった彼女から、奪われたものを取り戻す。それはおもちゃの懐中電灯だった。
主人公がそれを手にした瞬間、バラバラだった彼女の姿があのおぞましい姿へと変貌した。
体のそれぞれのパーツが出鱈目なくっつきかたをし、それぞれの根本では怨念めいた不定形の何かが蠢いている。そのくせそれらは一体となっており、口からは魂をもすくませるような不気味な咆哮を迸らせた。
ちくしょおおおおおあおあおおおおこういう方向できたかあああああ! 確かにこれで終わりか? とかちょっと思ったけどさあああああああ! 安心させといて突き落とすってそれ一番ひどい奴じゃねえかあえああああおあ、おのれ日本一ぃぃぃぃぃぃぃ!
言ってても仕方ないのでとりあえず逃げる……ってはやいはやいはやいなんだこいつ油断するとマジ追い付かれそうなんだけど!?
あ、ドアで少し減速した……ってあんまし余裕ねえええええええ! 道は幸いなんか火の玉っぽいのがハズレを塞いでるから迷うことはないけど焦りがマジ半端ねぇわこれ!
コーナーには少しだけ弱いみたいだけど、それさえも向こうのスピードの前には誤差でしかねえよ、あたり判定が思ったより小さいのが救いだわ!
しかし! なんとか猛追を振り切り玄関まで来れたぞ! ふははははやった、初見の強敵を一発で乗り切ってやったぞ、夜廻三竹藪編完!
あれ? 玄関のコマンドが急に消え……
ザシュゥゥゥウ!(一敗)
息も心も絶え絶えになんとか屋敷の外へ出ると、どうやらあの形態では外には出れないらしく彼女の叫びが屋敷の中から響いてきた。
その様に物悲しいものを覚えなくもないが、ルールが相容れない以上はこうなるしかない。主人公でさえ、キミとは遊べないという始末だった。
気を取り直し、最後の回想を見る。
いきなりピンポン連打から始まり、始めからクライマックスである。自宅の部屋を出て玄関へ向かう。そこではムギが毛を逆立てて扉の外に威嚇していた。
ここでも扉を開けるかの選択肢があるが、あけないしか選ぶことができないのでひとまずそれを選ぶ。
だというのに扉はなぜか開かれ、人面鳥が家の中に侵入してきた。
主人公が驚きにすくみあがるも、ムギがそいつの前に躍り出て一鳴きすると、人面鳥は目を見開いて体を細かく震わせながら消えていった。
『鍵はムギ』
『廃ビルの屋上で待ってる』
謎の声がそのような内容を告げる。これにて全ての記憶は揃った。
………………のだろうか?
そう、ここに至るまで今までの記憶に関する疑問、連続しているはずの記憶の連結がおかしい、記憶の時系列がおかしいという点などが一切解決していないのだ。
正直、まだ何かあるような気がしてならないが、今はとりあえず廃ビルに向かうしかないだろう。
あまりにも不確かな真実への鍵、その真偽すら定かではなく、主人公は間もなく夜が明ける町を駆ける。
その先に待つものは希望か、絶望か。
それが分かるとすれば、おそらく屋上の存在のみなのだろう。
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