19

村に入りしばらく進むと、今度は巫女姿の霊と出会った。おそらくこの霊が、袴姿が会いたかった「彼女」なのだろう。彼女の方もなんだかメソメソとしており、なんだか似た者同士という感じである。それだけ想いが強かったとも言えるが。

村の中には墓場で見た陰陽師風の霊がそこかしこにいた。ある場所を複数人でぐるぐる回っているだけの奴もいれば、なんと術っぽいものを飛ばして攻撃してくる奴もいる。幸い避けるのは簡単なので大した驚異にはならなかったが。

にしても、おそらくここの霊たちはこの村の 住人たちだったのだろう。それがこんな珍妙な格好で、しかもほぼ村ぐるみで怪しげな儀式をしていた……ということになる。その方向性、鎮守なのか呪術なのかで見方も大分変わるが、なんにせよろくでもないなと改めて思った。

村の中を進んでいくと、いかにも怪しげな藁人形が置いてあった。それが地響きが鳴ると同時におぞましい気配を放ち始め、周囲には藁人形の影みたいなものがいくつも出現した。動きはともかく数が多く、なんとか切り抜けるも村の一角に追い込まれてしまう。が、そこは巫女の導きか、マッチが一本落ちているではないか。

そうか、と思い立ち影の藁人形へ投げつける――が、効果はないようだった。あるぇー?と思いつつ炎に引き寄せられないか確かめるも、特にそういうわけでもないようだ。

それから何回か試し、ことごとく失敗した時点で改めて考えてみた。

ここにマッチがあるということは、ここで使うってことだろう。しかしあの影には効果はない。かつての使い道は光に反応する怪異を引き付けるためのものだったが、有効そうな敵はいない。さてどうしたものかと考え、ようやく思い至った。

これをあの藁人形本体に投げつければどうか? 失敗すれば命はないだろうが、このまま手をこまねいていても仕方がない。意を決して突貫し、藁人形へマッチを投げつけた。意外と判定は広かったらしく、見事に藁人形は燃え盛る。普通ならマッチ一本じゃ燃えるのに時間がかかるはずだが、この際なんでもいい。

藁人形が燃え尽きると影の方も次々と消えていった。前作までは心強い身代わりアイテムだったのに、今作はろくでもないな。


そのあとは特筆すべきこともなく、順調に進む。

が、主人公が転んだ拍子に指輪が落ちてしまう。それを拾い上げたその時、巫女姿の霊が背後に現れた。


「どうしてそれを持っているの?」


なるほど。やはり推測は正しかったようだ。そしてここへ来て、不穏な気配が一気に強まる。


赤い文字が画面を埋め尽くす。大事なものを、見知らぬ者が持っている。ただそれだけで、死した彼女が狂うには十分すぎたのだろう。

カエシテカエシテカエシテカエシテカエシテ。

そんな叫びと共に彼女は巨大な頭だけのおどろおどろしい姿へと変貌してこちらに襲いかかってきた。

あああああ畜生ここでこうくるのかよおおおまあ驚きはあんまりないんだけどねえ!

にしても頭が変貌して襲ってくるなんて、やっぱり相性抜群じゃねえかリア充共め爆発しろ!

まあこのままだと、諸々を飛び散らせて死ぬのはこちらのためとにかく逃げの一手。心なしか今までの奴らよりはそこまてエグくはないため、事故った一回だけで切り抜けることができた。

おいかけっこの末に開けた場所に出る。地面にはまたマッチが落ちており、奥には禍々しい気配を放つ藁人形。まてよ、ということは彼女もあれに当てられてる可能性があるな。真偽を確かめるべく、マッチを藁人形へシュゥゥゥゥ!

かくして恐ろしい形相から元の姿に戻った巫女の霊。そんな彼女の近くに指輪を置く主人公。それを受けとると彼女はスゥっと消えていき、主人公の横には記憶の鍵であろう汚れたバンソウコウが落ちていた。

……っていうか、アレ? もう終わり? 正直あと一戦位はあるかもしれないと思っていただけに拍子抜けである。まだ探索できていない場所も多いし。なんとなく気にはかかるが長居したい訳でもなし、記憶を見るために家へ帰ることにする。それにしても、結構変な順番でやってる自覚はあるのだが記憶の鍵となるアイテムは順番通りに並んでいる。これもしかして、探索する場所に関わらず手に入る物は順番が決まっているのだろうか。……多分ゲーム的な都合なんだろうけど。


場面は学校の焼却炉前、少女の飛び降りを目撃した後らしい。落ちたと思われる場所がここだったのだろうが、見た感じでは特に何事もないようだ。

そこへ他の二人がやってきたが、なんだか相当険悪な様子である。勝手に動いてしまった主人公をそれぞれ責めているが、ここら辺の身勝手さは実に小学生らしい。もっとも、だからといってそれが呪われていることになるのはいくらなんでも理屈が通らないだろう。ただ、ここでなぜか鈴の音が聞こえてくる。それに怖じ気づいて慌てて逃げ去る二人。しかし主人公は未だに泣いたままで、結果的に目を閉じたままだった。

急に現れるお化けの気配。それは焼却炉からだった。

その気配は言った。教えたはずだと。手の中の鈴を握れば勇気が沸いてくると。

しかし主人公はそれに応えることなく泣き続け、気配も消えてしまった。

記憶はここまでで、ここから主人公へのいじめが始まったらしい。実に子供らしい残酷さである。

それはさておき、あの気配はなんだったのか。普通に考えるなら死んでしまった少女であるのだが、森で出会った少女の気配は青である。まあ分裂した可能性も無くはないし赤と青が切り替わこともあるかもしれない。

ただ、なんとなくだがあれは少女本人ではなさそうである。


また謎が増えるも残す場所は2つ、竹藪か暗い穴か。どちらに行くか決めないまま玄関へ向かうと、また姿見によくわからないものが映る。しかもそれは今度は少女の姿を取ってきた。明らかに本人ではないだろう。


時刻は3時。あまり時間は残されていない。演出とはいえ時間制限があるという焦燥感は前作までにはなかったものだ。

あまりに不確かな主人公の道程は、果たして望む先へと通じているのか。

それを知る者は、未だいない。

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