16
地図を見ても、知らない場所としてマッピングすらされていなかった。まあ当然か。ただ、岬のような場所ではあるらしい。上の方に進んでいくとこんな場所にも関わらず電柱が建っていた。道中でまた水の怪異が出てきたものの、電灯に照らされるとやはり元の水に戻るようだ。途中の橋に差し掛かると、夜闇の向こうに山のような影が見えた。なーんか臭いなーとは思うものの、単なる背景の可能性もあるため今は横に置いておく。
とある分かれ道に古い探し人の記事が落ちており、女の幽霊はその傍らに立っていた。見れば町中にも貼られていたもののようで、小さな男の子が行方不明になっているらしい。おそらく相当前の事だから、当然主人公が知っているはずもない。
その旨を告げると、女の幽霊はどことなく悲しげに立ち尽くしたあと、また奥の方へと消えていった。正直ここで変貌して襲いかかってくるんじゃないかと身構えていたため、ちょっと拍子抜けである。
それにしてもこの岬、いろいろ古そうなものが落ちているし、なぜか電気もつながっている。しかも鍵がかけられている上にその番号をメールで送るとあるので、比較的最近に人の手が入っているのだろう。それを踏まえると、ここはほぼほぼ現実に存在するのだろう。
女性を追ってさらに上っていくと、途中小さな箱と首を吊った人影が見えた。場所は違うとは言え、前作をやった人間ならいろいろと思うことがある光景である。まあなんとなくだが、ここの場合はもう戻れないし殺される前に自ら終わらせようとしただけのようにも感じるが。箱だけ回収し、途中の溝に設置。この部分前作のオマージュなのだろうか。
途中で完璧なブロックをしてきた水の怪異に一回殺されるも、なんとか頂上付近に到達する。
そこには男の子の霊らしきものがうずくまっていた。それに近づいていく女性の幽霊。ちなみにこの方、あの後も途中の電灯がつかなくなった場所を一時的に元通りにしてくれたりとなかなかの聖人ムーヴをしてくれて、疑ってたのがちょっと申し訳なくなった。
そして二人がようやく再開できたその時、大きな揺れと人ならざる咆哮が辺りに響き渡った。
それはとても巨大であった。ずっと岬の向こうに見えていた謎の影は、やはりかつて船を沈め主人公をみつめていたあの怪異であった。
山のごとき巨体にいくつもの赤い瞳を備え、獣じみた瞳孔を不気味にぎょろつかせながらこちらを見下ろしている。
慌てて岬を下る主人公。途中で何回か殺されるものの、攻略法は船の時と変わらない。下の方までたどりついたその時、あの女性の幽霊が光の中へと消える。そこには、船の中で失ったはずのあのカメラが落ちていた。
ならばやるべきことはただ一つ。光で攻撃してくるようだが、光で攻撃されるのはどうかな?
パシャっという軽い音の後には、なんの変哲もない穏やかな海が広がっていた。……いやいくらなんでも弱すぎじゃね? 三、四回はシャッター押すかと思っていたらまさかの一発っすよ。……このカメラ、やっぱり射影機なんじゃね? よっしゃ、これから毎日お化けを消そうぜ!
それにしても、海系の怪異には詳しくないのだが、なぜかアレには見覚えというか既視感があった。どうしてだろうとぼーっとしていたら不意にその正体に気づく。
魔神柱じゃん、あれ。
いずれにしろ、この海の怪異君はきっとこう言われるだろう。
「ククク……奴は夜廻三ボス勢の中でも最弱。カメラのフラッシュ一発でやられるとは、ボス格の面汚しよ」
静寂が戻った岬に、子連れとなった女性の霊が現れ、お礼を言うかのように消えていった。
思えばただ子供に会いたかっただけで、それ以外はずっとこちらの味方をしてくれていた。きっと、生前は清らかな心の持ち主だったのだろうと、そう思いたい。
二人が去った後に残されていたのは、誰かへ宛てた手紙だった。その筆跡から主人公が書いたものだと思われるらしい。……なぜ、誰に向けたものかが分からないのだろうか。
思い出した記憶は、なんと体験版でもやった肝試しの時のものだった。そうなると、体験版主人公は本編主人公と同じということになる。ただ、それならなぜあんなひどいいじめを受けるようになっているのだろうか。少なくともこの時点では、まだごく普通の子供らしさが垣間見える。考えられるとすればこの肝試しで何かがあり、主人公だけが悪者に仕立て上げられたといったところか。その詳細はまったく分からないが。
展開も主なところはほとんど同じで、ムギを追って北校舎の屋上に向かい、少女が落ちるのを目撃してしまう。この時声がかけられないのも変わらない。そして記憶はここで終わっている。
記憶を集めたものの、有力な情報はまだ得られていない。解けなければ自分もお化けになるのだろうかと一人ごちる主人公。部屋を出て次の記憶を探しにいこうとすると、廊下にいたムギになぜか威嚇される。まさか……と主人公が鏡を見てみると、妙なノイズが走ってまともに自分の顔が見れない。しばらくしてそれは収まったが、時が残されていないことを自覚するのには十分すぎる出来事だった。
草木も眠る丑三つ時。それでも主人公は呪いを解く鍵を求めて夜の町へと駆け出すのだった。
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