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商店街の探索を続ける。が、そろそろ外れの方にきたせいか民家らしきものも見えるようになってきた。それにしても、拾える骨が黒まではまあそういうこともあるかもしれんなで済んでいたけど、曲がったとかねじれたとかどうやったらそうなるんだよ。これがおもちゃじゃなくて本物なら、まじでなにがあったというレベルである。

そして骨を与えるにつれ不穏な空気が増していく黒犬。主人公でさえ少々ためらうような発言をしていた。そして、いよいよ記憶にあった場所へたどり着く。まあ、こちらはすっかり忘れていたけど。何かおびただしい数の落書きが書かれ、何だかどれも要領をえない。奥にはあの黒犬をはじめとして何匹かの犬と、おそらく……人間の頭蓋骨。黒犬はそれを貪っているようだった。

頭蓋骨の中には、一枚の紙。


犬を信じるな。


大丈夫、そんなのほぼ最初からだから。ただ、何があったかは知らないが、自分からすればこれを書いたヤツの方があまり信じられなかった。

これは完全な想像だが、これを書いたヤツは犬を殺していたんじゃないかと思う。明確な理由はないのだが。

とはいえ、おそらくその言葉自体は事実なのだろう。そう思えたし、その答えは直ぐに訪れた。

周囲が赤く染まる。ついに赤の世界に取り込まれてしまったらしい。普通の犬だと思っていたものは朽ちた骸となり、それが主人公ににじりよってきた。

おのれ日本一、こういう形で犬を持ってくるか。

もっとも、ここでいくら憤慨したところで対抗できる手段なぞないので一目散に逃げる。が、道中に目と歯をより集めたようなおぞましい化物が立ちふさがっていた。いや本当におぞましい。クトゥルフなら絶対SANチェック入るヤツである。ちなみにこいつは今作の道ふさぎらしい。返せ! 初代のキモカワイイ道ふさぎさんを返せ!

しかし主人公、これの正体が犠牲になった犬たちだと看破する。まじかよ、全然分かんなかったぞ。

目を閉じて祈ると、しばらくして憐れな犬たちはきれいに消えていた。今度はこうやって進んでいくということなのだろう。ただ、二回、三回と繰り返すにつれ、何者かの気配が後ろから迫ってくる。しかもだんだん近づいてくる。中断しても、やり直しになるだけ。四回の祈りの時にはご丁寧にいくつもの目が浮かび上がり、そのまま何者かに殺されてしまった。

なんとかならないかと微妙に動いてみたら、それでなんとかいけた。

目を開いた先にいたのは、あの黒犬だった。ここまできたら、こいつが敵なのは疑いようもないだろう。何者かを主人公が問うと、ついに黒犬はその本性を表した。背中にしゃれこうべを背負い、そのおぞましさは町中に出る化け犬などとは比較にならない。もしやこれは狗神とかそういうヤツか? 流石に詳しくは分からないし根拠もないが。もっとも、思い返せば骨を与えて本性を剥き出しにしたのは主人公の方だったかもしれない。

いずれにせよ、逃走劇再びである。何回か死んだが、結果的には脱出に成功した。途中道ふさぎに祈るときは明らかに追うペースが落ちていたため、もしかしたら追いつかれそうになったら目を閉じて時間稼ぎができたのかもしれない。まがりなりにも犬相手に成功するとは思えないが。

商店街の入り口に戻り最後の祈り。特に変わったこともなく、目を開くとそこには傷だらけになって息絶えた黒犬がいた。ああ、と嘆息する。結局のところ、ここの商店街にいた犬たちは、みんな被害者だったということだ。もしかしたら、表の世界で犬たちが吠えていたのは、荒御霊となってしまった仲間たちに対する手向けだったのかもしれない。

黒犬は埋葬され、後には破れた折り畳み傘が残された。どうやらこれが記憶の鍵のようであり、思い返された場所はあの廃ビルだった。そこでは少女が何かを掲示板に張っていたが、なぜかそれはノイズがかって思い出せない。が、その何かはまるで絵の中から抜け出すようにこちら側に出てきた。直前に以前小石を拾った時にも見たあの瞳が現れている。

主人公はすぐそばの茂みに隠れてやり過ごし、なんとか事なきをえた。

おそらく、あれは人面鳥なのだろう。気にかかるのは記憶の中、つまり過去の時点で主人公は目をつけられていたということである。

その理由はまったく分からないが、全ての記憶を思い出せばそれも分かるのだろうか。


夜は深まり、謎もまた深まるのだった。

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