餅太郎

 昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんとおばあさんは、餅米を作って質素に暮らしていました。


 ある日、おじいさんは稲刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。


 おばあさんが川で洗濯していると、川上のほうから、どんもちこ、どんもちこ、と大きなお餅が流れてきました。おばあさんは、もちろん、このお餅を家に持ち帰りました。


 おじいさんにお餅を見せると、


「お餅はのどに詰まるといけないからねえ。わしらみたいな年寄りは、食べんほうがいいじゃろ」


と言いましたので、おばあさんはお餅を神棚にお供えすることにしました。そのままでは寂しいので、大きなお餅のうえに、小さなお餅とミカンとを置くことにしました。


「なんだか正月みたいだねえ」

 おばあさんが言いました。


 おじいさんは、どこかめでたい気持ちになって、即興で歌を歌い始めました。


 〽もーちたろさん もちたろさん

  お腰につけた そのおもち

  ひとつわたしに くださいな


 おじいさんとおばあさんは、子供を授かることなく、二人でいつまでも幸せに暮らしましたとさ。


 めでもちめでもち。

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