ある夏 ビー玉
夏休み。私は、田舎のおばあちゃんを訪ねた。
母は近所に挨拶に行って、父は今日の夜に着く。おばあちゃんは台所で料理しているし、おじいちゃんは軽トラで山に行った。姉は、同い年の従兄弟と遊びにった。なんだか「暇だ。」口から出た言葉も存在しないかったかのように空に消えた。
静かさに耐えられず、テレビを点けた。平日のテレビは、何も面白いものがやってない。知らないアナウンサーが伝えてる、私のためにならないこの地域のニュース。合間のテレビショッピング。健康器具なんて誰が買うんだよ。ちょっと前のドラマの再放送。思わず小さいため息が出て、おばあちゃん家のただでかい木のテーブルに突っ伏した。冷たい。気持ちがいい。そこも自分の体温であったかくなってしまい、上体を起こす。そうすると、扇風機の風がちょうど顔に当たった。顔から強い風が外れると、柔らかい風が私を通り抜けた。風の吹いた方に顔を向けると、縁側がある。目の中に飛び込んできた日光に当てられた薄い緑の畳がこちらを手招きしている気がした。
縁側に寝そべり、ただ天井を見上げた。薄い緑の畳の上は、じんわりあったかくて暑いのに心地がよかった。目を瞑ろうかと思ったが、日差しが強すぎて目を閉じても明るくて、ちょっと目の奥が痛い。そうして、光から目を背けた先の見上げた天井の先では、なぜか天井が光っている。キラキラと波紋が天井に映っていた。綺麗。庭の池が天井に反射して、そこには違う世界が存在しているようだった。
暑くて、眠ることができない。どう過ごすか考えたかったが、それもできなかった。誰も使っていないならと、扇風機をそばに置いて寝転がった。首が回って風が当たると、遠くのテレビの音が気持ちよさでどこかに消え去る。
午前中に飲んだラムネの瓶がテーブルの上に置いてある。片付けるのもめんどくさい。ほっとけば、おばあちゃんに片されるかもしれない。そう思って遠くの瓶を見ていると、ラムネ瓶の中でビー玉がキラキラ光っているのに気がついた。
ラムネ瓶の中になんであるかは知らないけれど、一気飲みしたい気持ちを邪魔してくるあいつ。なんだか自分の思い通りにしてみたくて、自分のものにしたくなった。
取り出してみた。けれど、それをどうすることもできずにいた。太陽にすかしてみたり、口に入れたり思いつくことをやってみたけどすぐに飽きてしまった。
ビー玉がすごく重く感じた。ポケットに入れるか迷ったけど、もういらなかった。そこらへんに転がして、私はまた天井を見上げた。そして、横目に見て、風で動く透明なビー玉は意志を持って動いているような気がした。またビー玉はキラキラと光り、私はそれを一瞥した。
目を覚ますと、もう空は暗くなり始めていた。体にはタオルケットがかかっている。少し肌寒い。縁側に取り残されて冷たくなったビー玉をポケットに入れた。けれど、手に余ると思い直して、庭に軽く投げた。ビー玉がどうなったかを考えるだけで、心が興奮しているのを感じていた。明日は、何しようかな。なんだか私も自由になった気分だ。一人で少しニヤけ、家族のもとへ向かった。
カイコ〜春夏秋冬〜 ayane @takanenomimizu
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