第36話会議室のホワイトボード
「では、これから二つの任務について説明する」
ボスは、後ろにあったホワイトボードにロージランド王国の地図を貼り付けた。
「1つ目の任務にはローマリ君を派遣する。まずこの地図でいうこの村に出向してくれ」
そう言ってボスは、地図の南側にあるトワイトス村と書かれた場所をペンで囲んだ。
「ほとんど王国の最南端の位置なんですね」
ローマリは、小さく呟いた。
「ああ。そこに魔法機関の連中が根城にしてる小規模の拠点があると報告されているんだ。君は、そのアジトの制圧を任務とする」
「何人くらいいるんですか?」
「詳しくは分からないが、拠点の大きさからして10人程度かな。魔法使いのクラスまでは判明していない」
クラス…。たしか
軍人の少尉や中将のような階級を魔法使いも作っているらしい。
その内訳は…。なんか横文字が多くて忘れちゃった。
「約10人の部隊、実力は不明…。こんなの任務なんかじゃないですよね?」
ローマリは困ったように問う。
「こちら側も小部隊を用意したとして、成功確率は極めて低い。ただの犬死になりかねないだろう。君の言うように任務と呼ぶにはあまりに稚拙だと私も思うよ」
「ですよねぇ。分かりました…、やります」
いつも頼りなさげな彼は、額を抑えつつも覚悟を決めたようで承諾をした。
あまりにもいつもの様子とかけ離れており、彼も軍人なのだと再認識させられる。
「士気を下げる発言かもしれませんが良いですか?」
カーマは、小さく手を挙げ発言をした。
「ローマリさんは、何か勝算があるのでしょうか?」
当然の疑問だ。一体彼の覚悟は何を根拠にして生まれるのだろうか。
「カーマちゃんの言いたいことは分かるよ。普通に考えればこんなの、死んであたり前だと思うよね。でも、僕は違うから。ちょっと普通の人より強いからさ」
「え?」
あまりにも彼らしくは無く、謙遜を何処かへ忘れてしまったかのような発言にカーマは言葉を失ってしまう。
「カーマ君、安心したまえ。私の見立てでは成功率70%だ」
「室長ぉ、そこはスパッと100%とか言って下さいよ」
「うん、そうであって欲しいとは思ってるよ」
二人は、談笑でもするかのように話していた。それほどまでに互いに信頼しあってる事が窺える。
「とにかく、ローマリ君は油断せずに頑張ってくれよ」
「了解」
ローマリは、敬礼をして意思表示を行った。
「次に、カーマ君とリア君の任務について説明する」
ボスは、こちらに体を向け語りかけた。
「「はい」」
それに呼応するように返事をする。
「地図でいえばここだね。カラス森の奥にある
ボスは、地図で言えば最北端に位置する場所を囲み、淡々と說明をした。
一つ分からない事があった。
「魔凶化?」
「魔凶化というのはね、原因は判明していないが魔法使いの極々小数にて、発現する現象なんだ」
「魔力が暴走し、理性を失うんです。過去にこの魔凶化した魔法使いが現れると、その度に大きな被害を受けてきました」
魔力が暴走か。上手く想像はできないが、相当に厄介なのは理解できた。
「そんなヤバイやつをオレらは相手にするのか」
「こんなの通常ではありえません。たった二人で崩れとは言え魔凶化した敵を相手取るなんて」
「しかもだ。その崩れは今のところ被害を出しておらず洞穴に身を潜めているのを、こちらがちょっかいを出すのだ。馬鹿すぎる話だよ」
「ほぇー」
なんかよくわからないが、とにかくヤバイのにヤバイ事が足されたらしい。
「さて、私からも質問をしようかな」
ボスは、改まったように言葉を投げた。
「リア君は、戦闘するのに万全な状態かい?」
どうやら俺に向けた質問らしい。
「万全だ、足手まといなんかにはならない」
ノイ先生にあんなに付き合ってもらったんだ。簡単には負けられない。
「なるほどね。よし、説明は終わりだよ。早速だが明日には任務のため移動してもらう。解散」
「はい」
三人分の返事がハモる。
こうして、オレ達の戦いは始まった。
クーナレドのためにもこの特捜室を残さなければならない。
この先どれほどの強敵がいるのか定かではないが進むしかない。
このホムンクルスの能力と記憶の中の「私」が残した技術を使って必ず切り開いてやる。
オレは、覚悟を決め、部屋を後にするのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます