第16話ノイと喧嘩
なんやかんやあり、匂いもなんとか解消しミナス中将も落ち着きを取り戻したようです本題に入るのであった。
「…本当ごめんなさい。今度こそ真面目に話そうか」
俺たち3人ともミナス中将の言葉にフォローを掛けるのも虚しくなるのでスルーすることにした。
「二年前くらいに自己紹介した気もするけど改めてするね」
ミナス中将は姿勢を正したので俺も心なしか背筋を伸ばす。
「私は特殊捜査室室長ミナス・チャッカーだよ。ようこそ特捜室へ、歓迎するよ!」
ミナス中将は、人懐こいような柔和な表情をこちらに送る。少し茶化すように椅子を引き両手を広げて言う様は以前聞いた噂とは本当に正反対である。
戦闘に関しては他とはかけ離れた能力を持っていることには違いないがその人柄も伝わって欲しいものだ。
それとも俺たちに見せている一面とは異なった冷徹な部分があるのだろうか。ぱっと見た姿としては27,8歳ぐらいで中将という立場を得ているのだからそうであっておかしくないか。
(結局まだ俺は何も知らないのだから考えても無駄か)
そう自分の中で折り合いはつけた。
そして、俺たちも続けるように簡素な自己紹介をした。名前をカーマともに喋った後、俺はミナス中将に尋ねるのであった。
「一つ聞きたい事があるんです」
「ん?何でも聞いてよ、答えうるかぎり応じるから」
「ホムンクルスについてです。研究室を解散させるとか俺たちにできる事はないんですか」
この場所に来てからもその答えを考えていた。ノイ先生から聞いたホムンクルスの件は自分としては到底看過できるものではない。
「…ノイ君にでも聞いたのかな」
ミナス中将は、話をしたであろう相手を理解して流し見た。それにノイ先生は気付き静かに首肯するのであった。
「で、カーマ君とクーナレド君はここまで御足労頂いたという具合かね」
「…」
(外れである)
あれ、この流れで金を返して貰うついでに聞いたというのはダサすぎないか。
「いえ、当初はノイ先生にお金を返して貰うためです」
「…言うのか」
(言うんだ)
カーマは、状況をそのまま伝えた。思わずギャンブルでお金を擦りまくった当人はぼそっと本音を溢す。もちろん俺も心のなかで同調する。
「おいノイ君。また君はギャンブルをしたのか…」
「う、うむ…」
ノイ先生は歯切れ悪そうに頷く。どうやら今度は立場逆転、ミナス中将が優位になった。
(これまた本題が逸れるよなー…)
今後の展開が簡単に想像出来てしまい気付かれぬようにため息を漏らすしかないのであった。
「ノイ君さぁ〜!嫌なことあるとすぐにギャンブルに走る癖を辞めなよ。というか負けすぎだよ、今月何回こんな事があったんだい」
「…4回くらい?」
ノイ先生は頬を掻きつつ手を震わせながら指を4つ立てた。
(もしかしてこの人4回も丸裸にされてるのかよ…)
車に乗ってた時は情状酌量があるのかと思ったがその頻度で負けるのはもはやただの病気だ。
「で、でもな!?手持ちの品と所持してる金を失っているだけだからぁ、全財産ではないから大丈夫!」
「ノイ君さ…この前私が渡したネックレス売って賭け事をしてたりしただろう。お金は良いとして大切なものまで売るのは良くないに決まってるでしょ」
「うわー、最低だ」
話を聞いていたカーマが思わず独り言を漏らしていた。
「それは引くに引けなくなってつい…。その反省はしてるんだぞ一応」
「…」
ノイ先生の言い訳じみた言葉にミナス中将はまぶたをピクピクと引きつけていた。さらにはプルプルと震えだした。
「だぁー!誠意を感じなーい!大体どんだけ負ければ気が済むんだよ、勝ってよ、せめて一回くらい勝つくらいしなよ!」
(あ、完全に爆発した)
「それが出来たら苦労しないわい!何故かノイが大賭けしたタイミングで相手にやられたりするんだ。きっと店とグルなんだよあいつ!」
なんて典型的な負けるタイプの人間なんだろうか…。
▲
その後も場が収まることなくミナス中将とノイ先生は喧嘩をし続けた。最初は俺やカーマが止めようと入っても一切鎮火することなく二時間ほど経過した。
ようやくその頃には出る言葉も無くなり二人して意気消沈していた。
このまま会話をするのは得策では無いとして俺達に部屋を用意してから全員休むことになった。
そして、俺はベッドの上で頭の後ろで手を組む。
特捜室の二人は想像もしない程にダメ人間同士であったなと感想が頭に浮かぶとともに一番ツッコミたいことがある。
「結局何も話が進まねぇーーー!!」
これが心からの言葉である。誰に当てるわけでも無いが漏らさずにはいられないのであった。
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