3-2

 俺は物をよく失くしてしまう性質たちで、あの時は同窓会の出欠はがきを失くしてしまったのだ。よくつるんでいたやつらのグループメッセージの噂じゃ、俺の好きだった女子も出席するって話だったし、その頃には周の怪我も回復しているから参加すると表明していたので、俺もそれならと思った頃には当然のごとくはがきを紛失していたのだ。

 別にはがきを失くしてしまっても出席の意向は伝えられるだろうが、やはりあると思っていたものが見つからない、というのは不安になる。

 職場である警察署からの帰宅途中、ぼんやりと考え事をしながら歩く間に、気づいたら想い出図書館の前にいたのだ。何だか、こないだ周が話していた図書館の外観に似ている。気づけばまわりの景色も、周が言ってたのとそっくりな町並みじゃないか。俺は街灯に惹かれる蛾のようにその図書館へ近づいていった。

 からんからん。

 ドアベルが軽やかに来訪を告げる。

 あとは自然な流れというか、狩野よりたかと名乗ったすこぶる物腰の柔らかい司書さんに促され自身の記憶の本を探してもらい、無事はがきの居所も判明した、というわけだ。

 大体のことは周から聞いた通りで、聞いていたにもかかわらずやっぱり非現実的すぎて、扉を開けて元居た場所に戻ってきた時には狐につままれた気分だった。また来て良いかと聞いた時に渡してもらった行きかたの手順のメモ紙がこの手になければ、相当疲れがたまっていたんだろうと、夢ということにして片付けてしまうところだった。

 ともあれ、主観、客観に捉われず五感も再現して記憶を確認できる記憶の本というツールは、失せもの探しに大変有効だと初見で気づき、それ以来俺はちょくちょくここへ通っているというわけだ。

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